としています。その典型がスマートコントラクトです。ブロック
チェーンのシステムにルールや、満たさなければならない条件を
組み込んでしまえば、後のルールの執行は自動的に行われます。
このことについて、坪井大輔氏は次のようにいっています。
─────────────────────────────
人がいなくても動くことをブロックチェーンはよしとしていま
す。一般的な会社や組織であればボスがいて、一定のルールの下
にボスが意思決定をして組織や人を動かします。しかしスマート
コントラクトになると、一定のルールや条件が事前にプログラム
に埋め込まれてさえいれば、条件を満たせば実行、満たさなけれ
ば実行されない、という動き方になり、ボスは不要になります。
「ルールの下の平等」がいわば強制的に実現するわけです。(一
部略)そのルールは、スマートコントラクトのプログラムが変更
されない限りは絶対で、その意味ではトラブルは起きようがあり
ません。人間がプログラムに使われる世界観です。これが、DA
Oを考える上で不可欠な概念です。
──坪井大輔著/翔泳社/SE刊
『WHY BLOCK CHAIN/なぜ、ブロックチェーンなのか』
─────────────────────────────
ところで、現在ビジネスの世界では、RPAなるものが流行し
ています。RPAもDAOに向かう社会の動きを象徴していると
いえます。RPAは、次の言葉の省略形です。
─────────────────────────────
◎RPA
Robotic Process Automation
─────────────────────────────
RPAは、「ロボテック」という言葉から始まりますが、ペッ
パーのようなロボットが何らかの作業をするのとは異なります。
普通人間の行うPC操作の一部をソフトウェアで自動化すること
をいいます。もっときちんというと、RPAは、これまで人間の
みが対応可能とされていた作業、もしくはより高度な作業を、人
間に代わって実施できるルールエンジンやAI、機械学習などを
含む認知技術を活用して代行・代替する取り組みのことです。
矢野経済研究所が2020年に実施した調査によると、RPA
の市場規模は、次のように躍進しています。ここで、市場規模と
いうのは、RPA関連サービスおよびRPAツール製品の売上高
のことです。
─────────────────────────────
2016年 ・・・・ 85億円
2017年 ・・・ 178億円
2018年 ・・・ 338億円
2019年 ・・・ 530億円
─────────────────────────────
RPAが普及した理由について考えると、これには次の3つの
背景があります。
─────────────────────────────
@生産労働人口が減少している
A人対応業務量が増加している
B働き方改革が促進されている
─────────────────────────────
第1は「生産労働人口が減少している」ことです。
現在、生産労働人口が減少しています。生産労働人口は、20
25年までの5年間で約4%減少するといわれています。これに
対応する方策が求められています。
第2は「人対応業務量が増加している」ことです。
複雑化・細分化した業務パターンに対して、業務のデジタル化
の遅れにより、結果として人が対応しなければならない業務量は
増加しています。
第3は「働き方改革が促進されている」ことです。
2019年4月から、働き方改革が法令化され、休暇取得や残
業時間に対するチェックは厳格化されつつあります。そのため、
働き手一人当たりの生産性の向上が必須になっています。
RPAは、このような背景の下で普及しつつありますが、本格
的な普及はまさにこれからです。2019年1月のRPA国内利
用動向調査によると、現状は次のようになっていまする
─────────────────────────────
RPA導入済 ・・ 32%
導入検討中 ・・ 36%
未導入 ・・ 32%
──RPA国内利用動向調査/2019年1月調査
─────────────────────────────
しかし、RPAはここにきて、2つの問題点が浮かび上がって
きています。
─────────────────────────────
@RPA開発要員の確保が困難化している
AそのままRPAに適用可能業務が少ない
─────────────────────────────
第1の問題点は「RPA開発要員の確保が困難化している」こ
とが上げられます。
外部のRPA開発人員の確保が困難で、結果として高コストに
なってしまうことです。それに個々の業務に合わせてシステムを
作るので、開発側のスケールメリットが得られないことです。し
たがって、どうしても高コストになります。
第2の問題点は「そのままRPAに適用可能業務が少ない」こ
とが上げられます。
結局、仕事のやり方自体を変更せざるを得なくなることもあり
かえって作業効率が悪くなることもあります。つまり、ロボット
そのものに限界があることです。
──[デジタル社会論V/069]
≪画像および関連情報≫
●「RPAを導入したが効果が出ない」と悩む企業がまずやる
べきこととは何か
───────────────────────────
ワークスタイルにイノベーションをもたらすといわれるR
PA(ロボティック・プロセス・オートメーション)。業務
改革と生産性向上に貢献するデジタル・テクノロジーとして
脚光を浴び、ここ数年、国内でも幅広い業種の企業で導入が
進んだ。一方で、「自動化した結果を管理できていない」と
か「当初の課題が解決していない」、「新しい課題が生まれ
た」など、新たな問題も浮上しているようだ。「そうした問
題は、ある程度の規模でRPAを導入した際に起こることが
多いようです」。こう切り出したのは、Hinemos の営業を担
当するHinemos担当課長の谷越桂太氏だ。 大規模にRPAを
導入すると、自動化の弊害が生じる可能性があると同氏は警
鐘を鳴らす。
「ソフトウェアロボットを搭載したPC端末が、定型的な
業務を自動実行してくれると思いがちですが、RPAのシナ
リオの実行が成功しているのか、あるいは失敗しているのか
がわからなくなってしまうこともあります。例えば、PCの
環境変化によって失敗していたとしても、成功していると思
い込んで失敗に気づけなければ、原因の特定にも動けず、当
然、問題を解決することもできません」(谷越氏)
大量のRPAによって自動化した業務の結果を管理できて
いないにもかかわらず、RPAの導入を他のシステムに広げ
たり、さらに重要な業務オペレーションにまで適用を拡大し
たりすることは、RPAはもちろん、システム運用、業務そ
のものに大きなリスクを潜在的に抱え込むことになってしま
う。 https://bit.ly/323XnXN
───────────────────────────
RPA