ラクト」と「ダップス/DApps」 のそれぞれの関係について、言
葉を整理します。そもそも暗号資産「イーサリアム」の「スマー
トコントラクト」とは何かの解明です。
「スマートコントラクト」とは、ブロックチェーンシステム上
の概念です。あらかじめ設定されたルールにしたがって、ブロッ
クチェーン上のトランザクション(取引)、もしくは、ブロック
チェーン外から取り込まれた情報をトリガーにして実行されるプ
ログラムがスマートコントラクトです。
ここで注意すべきは「スマート」という言葉です。スマートに
は「賢い」とか「頭が切れる」とかいう意味がありますが、「コ
ンピュータで制御できる」という意味もあるのです。しかし、ス
マートコントラクトのスマートは、「自動的に実行される」とい
う意味で使われています。提唱者は、ニック・サボ氏という米国
の経済学者であり、暗号研究家です。ちなみに既にご紹介してい
るヴィタリック・ブテリンは、イーサリアムの考案者です。
スマートコントラクトは、ブロックチェーン上で書かれたプロ
グラムによって実現されますが、そのプログラミング言語が「ソ
リディティ」であり、その実行環境が「EVM/イーサリアム・
ヴァーチャル・マシン」です。そして作り出されるさまざまなス
マートコントラクトが分散型アプリケーション「ダップス」であ
るというわけです。
このあたりのことを本やネット上の解説をいくら読んでも半透
明のもやがかかっていて、はっきりしません。スマートコントラ
クトについて、ウィキペディアにある「ニック・サボ」氏のペー
ジでは、スマートコントラクトを次のように説明しています。
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「スマートコントラクト」という呼称と概念はサボ氏によって
開発されました。この概念は、インターネット上における他人と
の電子商取引プロトコルの設計に、「高度に進化した」契約と実
行の商習慣をもたらすことを目的としています。
ウィキペディア https://bit.ly/31YVsni
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スマートコントラクトの概念を拡張すると、ビットコインは、
「通貨を送金、保管することに特化限定したスマートコントラク
ト」ということになります。これをあらゆる取引に対応できるよ
うに機能を拡張、発展させたものが現在いわれているところのス
マートコントラクトのシステムであるというのです。
ひとつ具体的な例を上げます。フランスの大手保険会社のAX
Aでは、2017年11月にイーサリアム・ブロックチェーンを
利用し、スマートコントラクトで、完全に自動化した航空機遅延
保険「フィズィ/Fizzy」 を発表しています。そのステップは次
の通りです。
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@AXAと連携している航空交通データベースが飛行機遅延
の情報を検知し、イーサリアム・ブロックチェーンに情報
をインプットする。
Aスマートコントラクトが保険金を支払うかどうかを自動的
に判断し、支払う場合は、そのリクエストを保険会社のシ
ステムに送信する。
Bリクエストを受けた保険会社のシステムは、保険の契約者
に対し、保険金支払いを実施する。以上のプロセスは完全
自動で実施される。
─────────────────────────────
この場合、スマートコントラクトは、ブロックチェーンと一体
になって、「決められたある条件を満たすと自動的に契約(コン
トラクト)を実行する」役割をします。
AXAの「フィズィ」は、明らかに分散型アプリケーションの
「ダップス」として記述されますが、この場合、このアプリは、
保険金を支払うかどうかの判断の情報を提供して、スマートコン
トラクトがコントラクト処理を実行することになります。あくま
でアプリは、スマートコントラクトを前提としてプログラミング
されることになります。このあたりのスマートコントラクトとア
プリの関係がいまひとつ明確ではないのです。
ダップスのプログラミング言語のソリディティについて、ある
サイトでは次のように解説しています。
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ソリディティは、コントラクト指向の高水準言語です。コント
ラクト指向とは、コントラクトする(取引処理を実行させる)目
的に特化していることを指します。イーサリアムの特徴のひとつ
である、スマートコントラクト(取引契約における過程の全てを
自動化するための、規約またはその機能)の実装に欠かせない要
素です。高水準言語とは、人間にとって理解しやすい単語や構文
概念で記述されるプログラミング言語のこと。
https://bit.ly/30oEGgI
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イーサリアム・スマートコントラクト上で動く分散型アプリケ
ーション「ダップス」には、次の問題点があります。
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@ 実行速度
A 手数料
B オラクル
C 安全性
Dプライバシー
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現在のアプリケーションは、サービスの提供者がセキュリティ
面なども含めて総合的に管理しています。いわゆる集権型のアプ
リケーションです。しかし、管理者に全ての権限が集中している
ことが多くの問題を生んでいます。
──[デジタル社会論V/067]
≪画像および関連情報≫
●スマートコントラクトで航空機遅延保険を完全自動化する
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「フィズィ/Fizzy」 は航空機遅延保険と呼ばれるタイプ
の保険で、保険加入者は自身が搭乗するフライトに対して保
険をかけ、2時間以上の遅延やキャンセルがあった場合、金
銭的な補償を受けられます。フィズィでは保険契約から支払
いまで主な処理をイーサリアム・ブロックチェーン上のスマ
ートコントラクトが扱い、保険の加入から支払いまでのプロ
セスが自動化されています。フライトが2時間以上遅延した
場合、着陸後数分で保証について連絡がくるといいます。ど
んな理由でも2時間以上遅延すれば保険が適用され、保険会
社に連絡したり、書面で補償を請求したりする必要がありま
せん。
フィズィのウェブサイトでフライトナンバーと出発日を入
力し、居住国を選ぶと、過去の航行データをもとに保険料が
計算され、契約の選択肢が示されます。東京からパリまでの
直通便で試したところ、一番安い保険が6ユーロ700円ほ
どで、到着が2時間以上遅れるまたはフライトがキャンセル
されると130ユーロの補償を受けられます。130ユーロ
は15000円強で、ホテルまでタクシーで行く、新たにホ
テルを予約するといった出費をカバーできます。より補償額
の多い保険でも20ユーロ2400円ほどです。保険は高い
というイメージがありますが、手頃な金額で保険をかけられ
もしもの場合に妥当な補償が受けられます(為替レートは、
2019年8月現在の1ユーロ118円で換算)。ただし、
居住国の選択肢がヨーロッパの主要国に限られていることか
ら、現状はヨーロッパ在住者を対象とした保険商品だと考え
られます。 https://bit.ly/3C7aIeh
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ニック・サボ氏