2021年10月18日

●「ウイニー開発者金子勇/不幸な死」( 第5594号)

 2000年前後の話です。いわゆるパソコンは、多くの家庭に
普及し、多くの人がインターネットを使い始めていた時代です。
マイクロソフトのOSのバージョンでいうと、ウインドウズ98
の時代です。
 当時「ウインMX」というファイル交換ソフトが日本で流行し
ていたのです。これは、「ナップスター」という音楽共有ソフト
の互換プロトコルを使い、中央サーバー型のファイル交換機能を
備えたファイル交換ソフトです。「ナップスター」は、1999
年に公開された「ナップスター」というファイル共有ソフトの名
称であり、そのソフトを開発した企業の名称でもあります。イン
ターネットを通じて個人間で音声ファイルの交換を行うことがで
きるファイル共有ソフトです。
 中央にサーバーがあります。そこにアクセスすると、どういう
ファイルが交換できるかわかります。ファイルには所有者が明記
されています。Cさんは、Aさんの持っているファイルが欲しい
とします。この場合、ファイルの交換自体はAさんとCさんの間
で行います。つまり、ファイルを共有するのではなく、お互いに
所有するファイルを交換するのがウインMXの特色です。
 ウインMXでは、サーバーに、誰がどのようなファイルを持っ
ており、いつ、どのようなファイルを交換したかという記録が残
るので、違法な行為をすれば発見されやすいといえます。
 「ナップスター」にしても、「ウインMX」にしても、目指し
ていたのは、中央サーバーを使わないピア・ツウ・ピア・ネット
ワーク(P2P)でのファイル交換ソフトの実現です。しかし、
それが、なかなかうまくいかなかったようです。それを開発した
のが「ウイニー」です。
 「ウイニー」では、中央サーバーがなく、ファイルの交換は、
「ウイニー」によって形成されたP2Pネットワークのなかのコ
ンピュータ同士で行われます。ファイルは、暗号化された状態で
交換されるので、誰がどのファイルを持っているのか、自分の所
有するファイルを誰がダウンロードしたのか、わからないように
なっています。これは「障害に強く、匿名性が高い」をクリアす
るよう配慮されていると見られます。
 「ウイニー」の仕組みは実際のところ、かなり複雑です。どの
ようにしてファイルを検索し、入手するのかに関心のある人は、
日経XTECHの次の記事を読んでください。
─────────────────────────────
          高橋健太郎氏/日経ネットワーク
    「ウイニーの仕組み/匿名を強化したソフト」
              https://bit.ly/3APaU1a
─────────────────────────────
 「ウイニー」の開発者は、2ちゃんねるで「47氏」という名
称で有名になった人物です。本名は金子勇氏といい、不幸なこと
に2013年の夏に亡くなっています。「WIRED」は、「日
本が失った天才、金子勇の光と影」というタイトルで、冒頭次の
ように紹介しています。
─────────────────────────────
 とあるソフトウェアエンジニアが42歳という若さでこの世を
去り、8年が経とうとしている。31歳でブロックチェーンの先
駆けたるP2P技術を実現し、34歳で京都府警に逮捕された。
無罪を勝ち取るまでに7年かかり、カムバック後、心臓の病で、
あっという間に天国へ。もしも生前の彼が、いかんなく能力を発
揮していたら?あるいは彼がいまも生きていたら・・・。仮想通
貨に一喜一憂する日本のIT業界に、ぽっかり空いた「金子勇」
という穴。その大きさを語り告ぐために、若きフォロワーが奮闘
している。             https://bit.ly/30vif9x
─────────────────────────────
 金子勇氏は、茨城大学工学部情報工学科を卒業し、博士研究員
として日本原子力研究所に勤務。地球シミュレータ向け、ソフト
ウェアの研究開発に従事しています。2000年から2001年
にかけて、情報処理推進機構(IPA)の未踏ソフトウェア創造
事業の一つ「双方向型ネットワーク対応仮想空間共同構築システ
ム」に参加しています。
 2002年1月、東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報
学専攻情報処理工学研究室(数理情報第七研究室)特任助手(戦
略ソフトウェア創造人材養成プログラム)に任用されます。その
同年5月にピュアP2P型の通信方式を持たせたファイル共有ソ
フト、ウイニーの最初のベータ版を電子掲示板サイト「2ちゃん
ねる」のダウンロードソフト板で公開したのです。
 その後の顛末について、「WIRED」は、次のように記述し
ています。
─────────────────────────────
 2002年に発表されるや否や爆発的に普及したファイル共有
ソフト「ウイニー1/Winny1」は、データ転送における優れたア
ルゴリズムに加え、高い「匿名性」を実現していた。それゆえ、
一部のユーザーが違法に入手した映画や音楽などの商用データ、
果てはコンピューターウイルスまで、ウイニーにアップロードし
世界中に拡散するという事件が頻発。その結果、ウィニー1の開
発者である金子までが(厳密にはウイニー2を開発したかどで)
「著作権法違反幇助」の嫌疑をかけられ、2004年に逮捕、起
訴される。             https://bit.ly/3p2bZAb
─────────────────────────────
 金子勇氏の逮捕は非常におかしいです。ユーチューブに著作権
法違反の動画がアップされるたびに、ユーチューブの開発者が逮
捕されることと同じだからです。
 いずれにせよ、この金子勇氏は、日本人には珍しい大変な天才
プログラマであり、ナカモトサトシと関係があるのではないか、
いや、ナカモトサトシ本人ではないかともいわれているのです。
そのあたりのことをさらに追及していきます。
             ──[デジタル社会論V/048]

≪画像および関連情報≫
 ●池田信夫氏/エコノMIX異論正論
  ───────────────────────────
   2013年7月6日、ファイル共有ソフトウイニーの作者
  金子勇氏が急性心筋梗塞で死去した。享年42歳。あまりに
  も早い死だった。警察が彼を逮捕し、ウイニーを葬り去った
  ことによって日本が失ったものは限りなく大きく、もう取り
  戻すことはできない。
   ウイニーは、2002年に開発されたP2Pソフトウェア
  である。P2Pというのは、インターネットでサーバを介さ
  ずにパソコン同士で直接ファイルをコピーするシステムで、
  1999年にアメリカで開発されたナップスターが最初であ
  る。これは著作権法違反として禁止されたが、その後も世界
  各国でP2Pソフトが開発された。
   ウイニーもその一つだが、著作権法違反に問われるおそれ
  があるため、金子氏(当時は東大助手)は2ちゃんねるに、
  「47」という匿名でプログラムを投稿した。これは大量の
  データをコピーするために、多くの中継点に部分的なキャッ
  シュ(一時コピー)を残し、次にコピーするときはそのキャ
  ッシュを集めて速度を上げるなど、当時としても先進的な技
  術を使っていた。
   しかし、ウイニーを使って映画をまるごとコピーするなど
  の事件が頻発し、一時はネット上の通信量の半分以上をウイ
  ニーが占めた。ウイルスができてパソコンのデータを流出さ
  せる事件も起こり、京都府警のパソコンもウイニーのウイル
  スに感染して容疑者の名前などのデータが流出した。
                  https://bit.ly/3j4vyUC
  ───────────────────────────
金子勇氏.jpg
金子勇氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論V | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする