2021年10月12日

●「X-Roadはブロックチェーンではない」(第5590号)

 話をエストニアの「X-Road」に戻したいと思います。エストニ
アの電子政府では「X-Road」が国民の生活に浸透しており、国民
に貢献しています。
 日本では、病院に行って診察を受けると、医師が処方箋を病院
のコンピュータを使って患者の目の前で作成し、プリントアウト
して紙で渡されます。患者はその紙の処方箋を調剤薬局に持って
行き、そこで薬を調剤してもらいます。当然調剤には時間がかか
るので、そこでかなり待たされることになります。したがって、
病院に行く日は完全に一日仕事です。
 われわれは、そういう診察から薬を調剤薬局でもらうまでの長
いプロセスに慣れてしまっているところがあります。そもそも処
方箋自体がコンピュータで作成されるのであれば、それを印刷す
ること自体が無駄なことです。
 病院の医師が、コンピュータで、ある特定個人の処方箋を作成
すると、その内容を公認のすべての調剤薬局に作成とほぼ同時に
届けることができます。患者は、どこでも都合の良い調剤薬局に
行けば、そこで薬を受け取れるのです。ただし、全国民がセキュ
リティの厳しい本人確認ができるカードを保有していることが条
件になります。
 しかし、エストニアでは、斎藤大将氏によると、この医療問題
については、次のようになっているのです。
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 「X-Road」開発の貢献はエストニアにとって大きい。病院、診
療所、薬局などのシステムやデータベースが連携することで、処
方箋情報が即座に薬局で確認できたり、異なる病院・診療所での
治療・検診において、患者のこれまでのデータを参照することが
可能となった。これは患者のデータが国民IDに紐づけられてい
ることも関係している。
 また、裁判所、警察、検察、刑務所、弁護士などのシステムと
データベースも連携され、裁判プロセスの効率化も実現され始め
ている。このことが、844年分の労働時間を節約すると言われ
る理由であろう。          https://bit.ly/3aDHF6R
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 ここで明らかにしなければならないのは、「X-Road」とブロッ
クチェーンとの関係です。「X-Road」は果たしてブロックチェー
ンなのかということです。
 ブロックチェーンを簡単にいうと、非中央化された分散データ
ベースで、合意プロトコルを通じて更新されます。ネットワーク
上の全てのノードは平等であり、データベースの完全なコピーを
所持しています。データベースに格納されたブロックは暗号学的
ハッシュ機能でリンクされます。
 これに対して「X-Road」は、オープンソースのデータ連携レイ
ヤーで、組織がインターネット上でデータ連携することを可能に
します。つまり、「X-Road」は中央管理された情報システム間の
分散統合レイヤーで、安全に標準化されたサービスの提供と消費
の方法を提供するのです。「X-Road」はデータ連携をする双方の
匿名性、整合性、互換性を保証します。
 こまかなことは難しくなるので比較は避けるとして、ブロック
チェーンと「X-Road」の共通している点は、データをリンクする
暗号化ハッシュ機能だけです。それ以外は、あまり共通点はない
といえます。自転車も自動車も車輪がありますね。しかし、自転
車が自動車の前にあったからといって、自動車は自転車を元にし
ているといわないように、「X-Road」はブロックチェーンを基盤
として使っているわけではないのです。つまり、ブロックチェー
ンと「X-Road」はそういう関係です。
 「X-Road」はブロックチェーンを基盤として使っていない──
エストニアに在住する斎藤大将氏もこれと同じ考え方です。斎藤
氏は次のように述べています。
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 ブロックチェーンと「X-Road」の共通要素は、どちらもデータ
のリンクに暗号化ハッシュ関数を使用するところにある。逆に言
えば、これ以外での共通点はあまりない。元来のブロックチェー
ンと「X-Road」では、使用目的が異なる。
 暗号化ハッシュ機能はブロックチェーンが生まれる以前から存
在している。つまり、暗号化ハッシュタグを「X-Road」で使って
いるからといって、「X-Road」がブロックチェーンを基盤として
いることにはならない。
 「X-Road」はエストニア政府が開発した情報連携プラットフォ
ームだが、MITライセンスのもとにオープンソースとして公開
されている。「X-Road」とブロックチェーンを混同している人が
日本でも多く見られるが、「X-Road」の根底のシステムがブロッ
クチェーンというのは間違った認識と言える。
                  https://bit.ly/3al3xnj
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 エストニア政府では、システム開発に当たって、「システムの
『重複を避ける』」というポリシーがあります。このポリシーを
守るために、データベースの複製を許さず、多数のシステムを共
通のシステム間連携基盤「X-Road」で連携した分散型システムを
構築したのです。つまり、「X-Road」は「重複開発を避ける」と
いうルールをシステムアーキテクチャに落とし込んだ結果といえ
ます。このような取組は、政府横断的なITガバナンスが効いて
いなければ実現できない方法といえます。
 また、エストニア電子政府では徹底して分散型システムによる
リアルタイムな情報連携を重視し、各政府機関はそれぞれ「独立
に最適な技術を利用」しつつ、他のシステムと連携が可能になっ
ています。
 エストニア政府は、「X-Road」の売り出しにも熱心であり、そ
れを仲介するプラネットウェイ・コーポレーションという企業も
あります。日本政府は「X-Road」を参考にすべきです。
             ──[デジタル社会論V/044]

≪画像および関連情報≫
 ●日本初!X-Roadとブロックチェーンを商用実装した、 コー
  ルセンター向けワンストップサービスを開発・運用開始!
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   ニチガスはIT先進国エストニアの技術である“X-Road”
  と、仮想通貨などでの応用例が多いブロックチェーンを活用
  したコールセンター向けワンストップサービスの自社開発に
  成功し、実運用を開始いたしました。本サービスは、X-Road
  とブロックチェーンを、商用に実装した日本初の取り組みで
  す。将来的には、本サービスおよびシステムの販売、そして
  本サービスを起点にあらゆるサービスのワンストップ化とス
  トレスフリーな世界の実現を目指します。
   本サービスは、システム内で複数に分散しているデータベ
  ースをプラネットウェイ社のX-Road 技術である「プラネッ
  トクロス」によって高度に安全を担保しながら統合し、当社
  提携のコールセンターにおいて、お客さま情報の検索と受付
  業務の一元的な運用を可能にしました。一般的に、分散する
  データベースの統合には膨大なコストと時間がかかりますが
  「プラネットクロス」を活用することで、コストと時間をか
  けずにデータ統合およびデータ交換基盤の構築を実現させ、
  かつ複数システム間で相互に安全なアクセス方法を確立する
  ことができます。また、ブロックチェーン技術によって、各
  データベースへのアクセス権の管理だけでなく、アクセスロ
  グを改ざん不可能な状態にすることで、部外者の情報アクセ
  スを遮断することができます。  https://bit.ly/3amIgcL
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斎藤大将氏/エストニア在住.jpg
斎藤大将氏/エストニア在住
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論V | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする