きるのでしょうか。
一番心配なのは、みずほFGという企業の信用力が低下するこ
とです。みずほFGのようなメガバンクの信用力が低下すると、
次のようなことが懸念されると、ある有力外資銀行の幹部は指摘
しています。
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メガバンクの信用力が懸念される事態になると、国際金融市場
からみずほは外される恐れがある。 ──某外資銀行幹部
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具体的には何が起きるのでしょうか。
それは、ドル資金の調達難です。銀行の信用力が低下すると、
ドルの調達コストが跳ね上がって高くなり、事実上ドルの調達が
できなくなります。これを防ぐためには、信用を補完して支える
しかないのです。具体的には、みずほ銀行の国による公的管理で
す。日銀による信用補完という手もあります。公的なバックボー
ンがあれば、ドル資金の調達問題は緩和されるからです。しかし
そこまでいくと、経営陣は当然の代償として、経営責任を追及さ
れ、引責で総退陣を迫られるのは必至です。
このようなさなかに、みずほFGの前社長で、現在、取締役会
長を務める佐藤康博氏(旧日本興銀出身)の言動に批判が集まっ
ています。危機感が欠如しているのです。『選択』10月号はこ
れについて、次のように書いています。
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会長就任後、念願の経団連副会長になり、「見るからに有頂天
だった」(財界関係者)。後任の坂井辰史社長については悪口、
批判を言い放題だったが、みずほFGがシステム障害を繰り返し
深刻な経営問題を抱え込んでからは一変。
「坂井はよくやっているという擁護論を唱え始めた」(全国紙
記者)同記者は「システム障害で坂井氏が引責辞任となれば、開
発時から社長を務めた自分も責任を問われるという計算を働かせ
て、態度を変えた」とみる。仮に会長辞任となれば経団連副会長
も辞職しなければならなくなるからだという。
8月のシステム障害発生から間もない休日に、佐藤氏が経団連
御用達といわれる神奈川県のスリーハンドレッドクラブで経営者
仲間とゴルフに興じていたことも、財界関係者の間で不評だ。佐
藤氏は名誉職ではなくみずほFGのれっきとした取締役会長だ。
財界関係者も「こんな時にねえ」と緩んだ行動に鼻白んでいる。
──『選択』/2021年10月号/経済/情報カプセル
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企業には「オペレーショナルリスク」というものがあり、それ
ぞれの企業は、それに備える対策を公表しています。みずほFG
は、オペレーショナルリスクについて、ウェブサイトで次のよう
に書いています。
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当グループでは、オペレーショナルリスクを「内部プロセス・
人・システムが不適切であること、もしくは機能しないこと、ま
たは外生的事象が生起することから当グループに生じる損失に係
るリスク」と定義しています。
当グループのオペレーショナルリスク管理は、当社が統括して
います。具体的には、オペレーショナルリスクについて、システ
ムリスク、事務リスク、法務リスク、人的リスク、有形資産リス
ク、規制・制度変更リスク、レピュテーショナルリスクの各リス
クを含む幅広いリスクと考え、これらのリスクに関する当グルー
プの基本的な方針を定め、主要グループ会社の管理を行い、合わ
せて、当グループ全体のオペレーショナルリスクの状況をモニタ
リングし管理する態勢となっています。
https://bit.ly/3FkpdOq
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みずほFGの定義によると、オペレーショナル・リスクとは、
「システムが不適切であること、もしくは機能しないこと」と明
確にしており、現在、みずほFGで起きていることは、オペレー
ショナルリスクそのものということになります。
もし、オペレーショナルリスクの可能性が高まると、銀行は自
己資本の算定方式が厳しくなり、自己資本比率が大幅に下がるこ
とになります。そうすると、引当金などの大幅な積み増しが必要
になり、銀行は深刻なリスクに見舞われることになります。
エストニアのシステム構築のポリシー「ノーレガシー」の反対
を行く極端な例として、みずほグループのシステム障害について
書いてきましたが、みずほのトラブルは、現在でも、一向に収ま
る気配を見せていません。何しろ業務改善命令直後の9月30日
にシステム障害を起こしているからです。まさにMINORIの
泥沼地獄そのものです。このみずほグループのシステムの惨状に
ついて、野口悠紀雄教授は次のように述べています。
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みずほの場合、レガシーシステムの一般的な問題に加え、縦割
り組織と経営者の無理解という2つの要因が問題を悪化させた。
みずほの元のシステムである旧第一勧業銀行のシステムは19
88年に稼働を始めたものだ。当時は、ATMの24時間稼働も
インターネットバンキングも、携帯電話による振り込みサービス
も存在しなかった。その後、これらのサービスを追加していった
が、20年以上にわたって一度も見直さなかった設定があり、こ
れが問題を引き起こした。そして、システム担当者も、こうした
問題があることに気付いていなかった。さらに、障害が起きたと
きに適切に対応できなかった。つまり、巨大なシステムはブラッ
クボックス化していたわけだ。 ──野口悠紀雄著
『良いデジタル化/悪いデジタル化/生産性を上げ
プライバシーを守る改革を』/日本経済新聞出版
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──[デジタル社会論V/042]
≪画像および関連情報≫
●「緊急メール」に誰ひとり動かず みずほ銀障害、顧客軽視
の風土浮き彫り
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「ATMのエラー発生が多発しています」。報告書による
と、2月28日午前10時15分、業務委託先の管理センタ
ーからみずほ銀行の6つ以上の部署へ430件のエラーを検
知したとの緊急メールが送られたが、対応に動く担当者はい
なかった。通帳やキャッシュカードがATMに取り込まれる
トラブルは最終的に5244件発生したが、それを想定でき
なかった。
複数の部署の担当者は午前11時12分にはATM前で顧
客が立ち往生していることをSNS上の情報で把握。休日対
応で人員の限られた問い合わせ電話はパンクし、顧客は動く
に動けない状況で7時間以上待たされたと申告した顧客もい
た。みずほ銀がホームページに「後日銀行から連絡するので
立ち去って構わない」旨のメッセージを掲示したのは発生か
ら約6時間後の午後3時58分。問題を把握した後も掲載文
を誰が書くか決まらず、書いた文案への各部署からの反応も
ないなど作業は停滞した。
みずほ銀はリスクを過小評価していた。同行の障害対応は
5段階あり、不特定多数の顧客に重大な迷惑が及ぶ例は頭取
に報告が上がる最重要ケース「S」だ。だが、午後1時前に
ようやくシステム部門が社内に送った報告メールは、特定の
顧客に軽微な迷惑をかけたとする「A2」。藤原弘治頭取が
障害を知ったのは午後1時半、インターネットニュースを通
じてだった。 https://bit.ly/3acU7tK
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佐藤康博みずほ取締役会長