2021年10月07日

●「MINORIの障害コボルが原因」(第5587号)

 「MINORI」は、総費用約4000億円かけて、8年間の
年月を費やし、2019年7月に完成しています。金融業界では
「史上はじめて銀行が自社の勘定系システムを全面再構築した」
と話題になったものです。
 「MINORI」は、2020年11月までは何とか動いてい
たのです。しかし、2020年11月30日にシステム障害を起
こしています。そのときの様子を日経XTECXは、次のように
報道しています。
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 みずほ銀行は2020年11月30日、同日午前9時過ぎから
法人向けのオンラインバンキングサービスで障害が発生している
ことを明らかにした。原因は調査中で、復旧のめどは立っていな
い。みずほ銀行の「みずほe−ビジネスサイト」に一部の利用者
がログインできない状態が続いている。同行は、ログインできた
場合も、手続きに進めないといった声が出ていることについても
認めた。11月30日午前11時50分時点でツイッターなどの
SNS(交流サイト)では「月末なのに手続きできない」「どう
したらいいのか」といった困惑の声が多数書き込まれている。
                  https://bit.ly/3AbE3mT
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 このシステム障害を経て、MINORIは2021年2月28
日に大規模なシステム障害を起こすのです。このときは、ピーク
時にはATMの7割に相当する4318台が稼働を一時停止した
のです。これに伴い、ATMが通帳やキャッシュカードを取り込
むトラブルが合計5244件起きています。ATMやインターネ
ットバンキング「みずほダイレクト」の一部取引もできなくなっ
ています。以来、MINORIは、昨日のEJで述べたように、
10月1日まで計9回のシステム障害を連発しています。
 どうして、完成したばかりのMINORIが、ここまで頻繁に
システム障害を起こすのでしょうか。
 その原因は、旧態依然たるプログラミング言語「COBOL」
にあります。以前のシステムがCOBOLが原因で起きており、
新システムでは、当然別のプログラミング言語で書き換えるべき
であったのに、どうしてCOBOLをMINORIでも使い続け
たのでしょうか。おそらく、COBOLを残さざるを得なかった
事情があったのではないかと考えられます。これについて「週刊
現代」は、次のように書いています。
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 事実、全面改修を経たはずのMINORIのシステム構成は、
不自然なほど複雑怪奇だ。普通預金を司る機器は日本IBMが作
るが、その上で走るソフトは富士通が作る。他行との接続を司る
システムは、機器を日立と富士通が作ってソフトをNTTデータ
が作る。各業務のシステムをベンダーが分割して作り、さながら
怪物「キメラ」のようになっている。
 これが意味するのは、おそらく2011年に金融庁から業務改
善命令を受けた時点で、みずほのシステムは根本的な再構築がも
はやできない状態だった可能性だ。古い部分と新しい部分が幾重
にも折り重なり、さらに開発元も複数のベンダーにまたがってい
た。しかも、この時すでにみずほは延べ3000億円近くをシス
テム改修に投入していた。20年以上も、二人三脚を続けてきた
ベンダーを切り捨て、一から作り直すわけには、いかなかったの
だ。いまや、システムの全容を知る者は、みずほにも、ベンダー
にもいない。  ──「週刊現代」  https://bit.ly/2WGOyAR
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 この原因を作ったのは、秋草直之氏という人物です。秋草氏は
ソフトウェアエンジニア出身で、90年代に富士通の社長を務め
辣腕で鳴らした人物です。この秋草氏が勧銀に「STEPS」を
売り込んだのです。秋草氏は、勧銀に勘定系システムの開発とメ
ンテナンスを請け負うことによって、勧銀から安定的に巨額のカ
ネを引き出す仕組みを作っています。年々コストが膨らむ仕組み
であり、勧銀内部ではそれを懸念する声もあったのですが、この
ときの富士通は、経産省の後押しがあり、勧銀としては受け入れ
ざるを得ない状況にあったのです。
 みずほのシステムは、富士通の「STEPS」が中心となって
おり、統合当初は、勧銀がSTEPSに一本化しようとして、興
銀と富士銀の反対に遭い、MINORIを開発することになった
経緯は既に述べています。それにしても、2019年に新規に開
発したはずのMINORIが、システム障害を多発するのは異常
な状態であるといえます。これに対して、金融庁は、どのような
検査をしてきたのでしょうか。
 金融庁は、システム障害が起きるたびに検査強化を打ち出して
きています。6月15日に公表された、第三者によるシステム障
害特別委員会の報告書によると、「勘定系システムMINORI
の設計などに欠陥はなかった」としています。しかし、現実にシ
ステム障害は異常なほどの高頻度で起きています。
 これに関して、金融庁はどのように対応するのでしょうか。雑
誌『選択』はこの問題について、次のように述べています。
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 「金融庁がみずほに業務改善命令」。主要メディアが一斉に報
じたのは9月22日だ。そのなかでは、みずほのシステムを金融
庁の管理下に置くという、システムの公的管理にも触れていた。
 しかし、いま、生じている実情からすれば、「システムの公的
管理」に深い意味はない。「監督官庁がシステムを管理しても、
障害は阻止できない」(大手銀行システム部門担当者)からだ。
 むしろ、現状、深刻化しているのはみずほFGという企業の信
用力の失墜である。このまま、システム障害の原因究明ができな
い状態が続くと、みずほFGにはいかなる事態が待ち構えている
のか。          ──『選択』/2021年10月号
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             ──[デジタル社会論V/041]

≪画像および関連情報≫
 ●3メガバンクの「みずほ」だけシステム障害が頻発する理由
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   日本の3大メガバンクの一つであるみずほフィナンシャル
  グループ(FG)傘下のみずほ銀行とみずほ信託銀行は20
  21年8月20日、システム障害により一時全国の店舗窓口
  で振り込みや入出金ができない状態に陥ったと発表した。み
  ずほ銀行では2021年2月末から短期間に4回のシステム
  障害が発生し、6月に「第3者委員会」が再発防止策を発表
  したばかりである。
   8月25日付け読売新聞は、次のように報じている。「今
  年に入ってみずほ銀行で相次ぐシステム障害について、金融
  庁は、いずれも2019年に稼働した新たな中枢システムに
  起因するとの見方を強めている」「障害が起きにくい最新鋭
  のシステムとされたが、逆に構造が複雑になり、トラブルの
  温床になる皮肉な結果となった。旧3銀行の『縄張り意識』
  も、いまだに影を落としている」
   さて、バブル崩壊後、国際競争力を得るためには規模の拡
  大が必要不可欠であることから都市銀行の再編が行われた。
  その結果、2001年には、旧三井銀行の流れをくむさくら
  銀行と住友銀行とが合併し、三井住友銀行が発足した。20
  02年には、第一勧業銀行、日本興業銀行、富士銀行が合併
  し、みずほ銀行が発足した。2006年には、東京三菱銀行
  とUFJ銀行とが合併し、三菱東京UFJ銀行(2018年
  に三菱UFJ銀行へ商号変更)が発足した。
                  https://bit.ly/3uE9ntf
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みずほ/2月28日のシステム障害.jpg
みずほ/2月28日のシステム障害
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論V | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする