システム障害を起こしたのです。今年に入って8度目です。10
月1日付の日本経済新聞は次のように報じています。
─────────────────────────────
◎みずほ銀、今年8度目障害/外為取引387件に遅れ
改善命令から1週間で
みずほ銀行で30日午後、システムの不具合により、387件
の外国為替取引に遅れが出た。主に法人顧客の送金が滞ったが、
大半は同日付で処理ができるめどがついたというが、一部は翌月
に持ち越す可能性がある。詳細な原因は特定できていない。みず
ほで顧客に影響の出るシステムの障害が明らかになるのは今年に
入って8件目。9月22日に金融庁がみずほのシステムを実質管
理する業務改善命令を出したばかりだった。
──2021年10月3日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
昨日のEJで、エストニアでは、システム開発に当たっては、
「ノーレガシー」というポリシーを掲げ、13年以上古いシステ
ムは使わないことにしている事実を指摘しています。
そのとき、みずほグループのシステム障害の惨状についてふれ
ましたが、今日のEJではその問題について考えます。なぜなら
日本では、政府や大企業、とくに金融関係企業のシステム開発は
みずほだけでなく、いずれも似たようなところがあり、障害がい
つ起きても不思議ではないからです。
今年に入ってからのみずほのシステム障害は、まさに惨状その
ものです。2月28日にATMが通帳を吸い込み、出てこない障
害が発生すると、3月には3回の障害が起きています。3日、7
日、12日です。
そして、8月23日には全店の窓口取引を中止し、そして23
日にはATM130台が一時停止しています。9月に入っても、
8日に、機器の不具合でATM100台が一時停止し、30日に
外国為替取引に遅れが生じています。実に8回にわたるシステム
障害です。したがって、惨状のレベルを超えています。
みずほフィナンシャルグループは、旧第一勧業銀行、旧富士銀
行に旧日本興業銀行が加わって、誕生したメガバンクです。19
99年のことです。大物同士の統合なので、発足前から母体3銀
行の主導権争いが激化していたのです。
発足当時、3行はそれぞれ、次の大型コンピュータシステムを
保有していました。
─────────────────────────────
第一勧業銀行 ・・ STEPS/ 富士通
日本興業銀行 ・・ C−base/ 日立
旧富士銀行 ・・ TOP/日本IBM
─────────────────────────────
この3つの巨大なシステムをどのようにして統合化するかです
が、普通は顧客や預金などの情報をどれかひとつのシステムに全
て移行する「片寄せ」という方法を採用します。
しかし、当初みずほグループは、旧3行が使っている異なるシ
ステムをそのままに生き残らせ、「ゲートウェイ・システム」と
称する方法をとったのです。つまり、キャッシュカードは旧行の
ものをそのまま使い、それをATMに入れると、中継プログラム
によって旧行のシステムにつながり、処理ができるというもので
す。つまり、3行のシステムはそのままです。
続いて、旧第一勧銀の富士通のシステムと富士銀行のTOPを
並立させ、別のコンピュータでつなぐことが決まったのですが、
これはあえなく失敗し、システム障害を発生させてしまったので
す。これが発足後最初のシステム障害です。
その原因は、旧第一勧銀のステムの一部に、1971年に第一
銀行と日本勧業銀行が合併したときに作られたとみられるプログ
ラムにあったのです。そのプログラムは「COBOL」で書かれ
ていたのです。COBOLは80年代にはさかんに使われていた
言語ですが、2000年には、それを使いこなすエンジニアは激
減していたのです。
これを機に旧興業銀行は、旧第一勧銀の富士通のシステムと富
士銀行のTOPを並立させる方式に反対し、自社システムのベン
ダーである日立製作所にも声をかけて、新システム「MINOR
I」を開発することになったのです。
「MINORI」は、日立、富士通、日本IBMにNTTデー
タまで加わった4社の体制で開発されています。全面稼働したの
は、2019年7月16日朝、「MINORI」は全面稼働した
のです。そのときの模様について、日経XTECHは、次のよう
に書いています。
─────────────────────────────
みずほフィナンシャルグループ(FG)が20年越しで悲願を
達成した。2019年7月16日朝、新しい勘定系システム「M
INORI」が全面稼働した。1999年8月に第一勧業、富士
日本興業の旧3行が統合を発表しておよそ20年。2度の大規模
なシステム障害を経て、情報システム面でようやく「ONE M
IZUHO」を推進する体制が整った。
みずほFGは2019年7月13日午前0時から同7月16日
午前8時にかけて、MINORIへの移行に向けた最後の作業に
臨んだ。移行期間中はATMやインターネットバンキングなどを
停止していた。7月16日午前11時時点で、オンラインサービ
スに目立ったトラブルは起こっていない。MINORIへの万全
を期すため、みずほFGは2018年6月から始めた口座データ
などの移行を、全9回に分けて進めていた。今回はその最終回で
対象はみずほ信託銀行の勘定系システム「BEST」で管理して
いたデータだった。みずほ信託銀行のデータ移行が無事完了し、
MINORIは全面稼働した。 https://bit.ly/3a1IyG0
─────────────────────────────
──[デジタル社会論V/040]
≪画像および関連情報≫
●これから「みずほ銀行」に起こる、ヤバすぎる現実・・・シ
ステムの「爆弾」を誰も処理できない
───────────────────────────
これら2度の致命的な障害に懲りて、みずほは前述した新
システム「MINORI」の開発に着手したというわけだ。
いや、金融庁の叱責と業務改善命令に押される形で、着手せ
ざるを得なかったというほうが正しいだろう。2011年6
月のことだ。
MINORIは、約4000億円の費用をかけて8年後の
19年7月に完成した。業界では、「史上初めて、銀行が自
社の勘定系システムを全面再構築した」と話題になった。だ
が、どうやら実態は異なる。一から作り直した「新築」では
なく、既存の「塔」をさらに建て増しした「改築」だったと
考えなければ、説明がつかない謎があるのだ。先に触れたC
OBOLがいまだに使われているのである。
「ITベンダーの間では、かねて『なぜみずほは、わざわ
ざ高齢のエンジニアを雇ってまでCOBOLを使い続けるの
か』が疑問視されていました。MINORI導入時にCOB
OLを使った部分をなくして、別のプログラム言語で書き換
えてもよかったはずなのに、それもしなかった。それはつま
り、なくさなかったのではなく『なくせなかった』のではな
いか。勧銀時代から抱える古い重要プログラムやデータが、
いまだにMINORIの内部で生きているからではないか。
そうとしか考えられないのです」(前出・佃氏)
https://bit.ly/3FnYVLs
───────────────────────────
「MINORI」全面稼働