ンに在住しており、2016年にタリン工科大学物理学科に入学
し、在学中にはエストニア小型人工衛星開発や修士研究に従事し
つつ、コンサルティング会社を設立しています。2018年夏に
タリン大学を卒業し、エストニアでビジネスをしたい人のサポー
トの仕事を行っています。
この斎藤大樹氏がエストニアについて貴重なレポートをネット
にアップロードしています。野口悠紀雄教授の意見に加えて、こ
のレポートを通して、エストニアの電子政府について書くことに
します。このレポートについては、28日のEJの関連情報で一
部をご紹介しています。
エストニアは、「イー・ガバメント」と呼ばれる国民データー
ベースにより、国民はICチップ付きカード(国民ID)によっ
て、全ての行政サービスを受けることができます。実際に国民の
96%がインターネット上で所得税申告を行うなど、行政インフ
ラのIT化が進んでいるのです。
この国民IDカードは、パスポート、公的身分証明書、運転免
許証、健康保険証などとして機能し、本人確認に使われているの
です。完全に日本のデジタル庁がこれからやろうとしていること
を先取りしています。この国民IDの利用回数は、一日平均数回
以上といわれています。なぜかというと、銀行口座アクセスなど
民間サービスの本人確認に使われているからです。
面白いのは、エストニアでは、「イー・レジデンシィ」という
制度によって、世界中の人々に「バーチャル国籍」を発行し、電
子国民になることができます。安倍前首相も、2018年1月に
この制度によって、エストニアの「バーチャル国籍」をプレゼン
トされています。これについて、エストニア公共放送が安倍首相
の顔写真付きで次の記事を報道しています。
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◎Japanese Prime Minister becomes Estonian e-resident
https://bit.ly/39R1vL6
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ところで、エストニアの「バーチャル国籍」を取得することに
よって、何ができるのでしょうか。もちろん本来の国籍が変わる
わけではありませんが、大きなメリットとして、日本にいながら
簡単にエストニアで会社を設立することができます。
この制度の専用ページによると、2021年5月18日現在、
約150の国から約3万3千人が「電子国民」を申請していて、
約5000の企業が立ち上げられています。電子国民の申請費用
は、100ユーロ(約1万3000円)です。
エストニアというと、元大相撲力士の把瑠都(バルト)氏が記
憶に残っていますが、一時タレントとして活躍していたといわれ
ますが、2019年にはエストニアの国会議員になっています。
このエストニアについて、斎藤大樹氏は、エストニアの印象に
ついて、次のように述べています。
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まるで国全体がスタートアップ組織のようだ。しかし、国が打
ち出す電子国家としてのイメージとは裏腹に、実際には多くの人
がいまだに現金を使っていたり、ネット投票を利用していなかっ
たりと、後進的な部分もまだまだ残っている。だからこそ、この
先エストニアという小国がどのような世界を見せてくれるのか期
待できるのである。 ──斎藤大樹氏
https://bit.ly/3zUsdNE
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日本の場合は、マイナンバーを銀行口座と紐づけようとしてい
ます。これが実現できると、特別給付金などが迅速に行えると政
府は宣伝しますが、とくに日本の場合、特別給付金などを国が簡
単に支給するはずはないし、そもそもマイナンバーのような制度
を中央集権的な仕組みでやることに無理があるのです。
実は、エストニアも、現在の仕組みになる前の2007年に、
システムが大規模なアタックを受けて情報漏洩事故が発生し、制
度の見直しを迫られたのです。その結果、取り入れたのが「エッ
クス・ロード(X-Road)」です。
「エックス・ロード」とは何でしょうか。
「エックス・ロード」について、斎藤大樹氏は次のように述べ
ています。
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X-Road は、エストニアのバックボーンになっている。目には
見えるものではないが、エストニアの電子国家実現に極めて重要
な役割を果たしており、国のさまざまな公共および民間セクター
の電子サービス情報システムを調和して機能させることが可能で
ある。エストニアの「イー・ソリューション」環境には、一般向
けに幅広くサービスが含まれているが、各サービスにはもちろん
独自の情報システムが存在する。X-Road はそれらの分散された
データベースを安全に連携させるプラットフォームであり、転送
を確保したり、すべての送信データをデジタル署名などで暗号化
したりすることで記録できる。
言い換えれば、複数の行政システムへの書き込み、大規模なデ
ータセットの送信、情報システムでの検索を同時に実行できるツ
ール、それが X-Road である。また、さらなる拡張を念頭に置い
て設計されているため、新しいイー・サービスやプラットフォー
ムができれば、それを統合して、規模を拡大することも可能であ
る。 ──斎藤大樹氏 https://bit.ly/3kLkWeJ
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野口悠紀雄氏は、エストニアはブロックチェーンを活用した仕
組みを作っているといっていますが、斎藤氏のいう「エックス・
ロード」は、果たしてブロックチェーンなのでしょうか。これに
ついては、大事なポイントであるので、来週のEJではこの点を
検証していくつもりでおります。
──[デジタル社会論V/037]
≪画像および関連情報≫
●イー・デジデンシィ徹底解説
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2014年12月にローンチされたイー・レジデンシィ。
2019年時点で世界の登録者は50000人を超え、日本
からも約2500人のイー・レジデント(電子国民)が誕生
しています。安倍首相もイー・レジデントの1人として登録
を受けていることは有名です。
一方で日本人の多くが、まだまだイー・レジデンシィのメ
リットやデメリットを本当の意味で理解せず、とりあえず取
得している方が多いかと思います。
今回、現地エストニア在住者の視点から、2019年最新
版のイー・デジデンシィ事情を大解説し、取得のメリット・
デメリットや、どんな人がイー・レジデンシィを取得するべ
きなのか、解説していきたいと思います。
イー・レジデンシィは、エストニア政府の電子プラットフ
ォームを自国民のみならず、外国人向けに開放したプログラ
ムです。意外に思われるかもしれませんが、エストニア政府
自身は、e-Residency のために何か新しい技術を開発した訳
ではありません。
自国に元々存在していた技術を、そのまま外国人に開放し
ただけのことなのです。ただし、この大胆な政策を取れるの
もエストニア共和国の強みだと思っています。では、イー・
デジレンシィを取得し、イー・レジデントになると、どんな
恩恵を受けることができるのでしょうか?解説していきたい
と思います。 https://bit.ly/3EZ3XOf
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エストニア/電子国民をプレゼントされた安倍前首相