2021年09月28日

●「デジタル化が進化するエストニア」(第5580号)

 マイナンバーカードと健康保険証の一体化が遅れている理由で
すが、先行して運用が開始された一部の医療機関で保険資格の情
報が登録されていないところが続出したり、健康保険証に記載さ
れた情報が一致しなかったなどのトラブルが頻発したからといわ
れています。これは初歩的ミスもいいところです。システムが根
本的におかしいのです。
 とにかくマイナンバーカードはトラブル続きです。定額給付金
申請でも使えず、健康保険証との一体化でも使えず、これではワ
クチン接種の管理にも使えないでしょう。これまで使えているの
は「イー・タックス」だけです。
 それぞれ使えない理由は明白になっているはずです。それなら
なぜ、その問題点を解決しようとしないのでしょうか。マイナン
バー制度の主務官庁は総務省ですが、総務省は一体何をやってい
るのでしょうか。
 マイナンバーカードについての現況について、野口悠紀雄教授
は、次のように述べています。
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 このような状況を、なぜその後改善しなかったのか?ワクチン
接種がいつか行われることは、2020年の早い段階で分かって
いた。だから、もしマイナンバーを用いるなら、それに向けて準
備すべきだった。1年間あれば、準備ができたのではないだろう
か?土壇場になって導入しょうとしても、できないことは明らか
だ。この1年間に、マイナンバーカードについて実際になされた
ことと言えば、マイナポイントでポイント還元することだった。
マイナンバーカードを使えるためのインフラストラクチャーを準
備せず、普及だけを目的にしてきた。
 マイナンバーカードがそうだというわけではないのだが、膨大
な広告宣伝費をかけて粗悪品を売り捌こうとする悪徳商法を連想
してしまう。               ──野口悠紀雄著
      『良いデジタル化/悪いデジタル化/生産性を上げ
       プライバシーを守る改革を』/日本経済新聞出版
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 現在日本の医療の現場では、医療情報の一元化がまだできてい
ません。それぞれカルテは病院ごとに電子化されていますが、病
院間でデータを共有して利用できる体制になっていないのです。
これは、患者にとって、非常に不便なことです。ある病院でやっ
た検査の結果が、自分の医療情報でありながら、病院間で共有で
きていないために、病院が変わると、同じ検査をその病院でやら
なければならない。これは無駄なことです。そのため、私は、若
い頃から、ある特定病院でのみ診察を受けています。
 このことをとらえて、だから健康保険証をマイナンバーカード
と一体化し、医療情報を一元化すべきだと説く人がいます。政府
はそのように考えています。確かに医療情報は一元化すべきです
が、マイナンバーのような中央集権的な仕組みで一元化すべきで
はないといえます。
 病歴というのは、非常にセンシティブな個人情報です。もし、
これが悪用されると、大変なことになります。また、管理システ
ムのセキュリティが甘く、医療情報の外部流失の恐れもあるし、
カードの紛失やパスワードの盗難、認証局へのサイバー攻撃も十
分考えられることです。
 理想的には、医療情報はあくまで個人が管理し、攻撃不能な堅
固なセキュリティに守られ、必要に応じて情報を開示するような
システムが必要です。
 そんなことができるのでしょうか。
 ブロックチェーンを使えばそれは可能です。野口教授の本には
エストニアの例が出ているので、以下、要約してご紹介します。
 エストニア共和国は、北ヨーロッパの共和制国家であり、首都
はタリンです。バルト三国では最も北に位置し、南は同じバルト
三国であるラトビアと、東はロシア連邦と国境を接しています。
北はフィンランド湾を挟んでフィンランドと、西はバルト海を挟
んでスウェーデンと向き合っています。人口はわずか130万人
程度の小国です。しかし、このような電子政府が人口が小さいか
らできたというわけではないのです。
 エストニアでは、国民背番号制度があり、国民一人ひとりが、
「国民ID」という番号を持ちます。電子認証(本人確認)とサ
インをデジタルで行うために、ICチップを埋め込んだ「eID
カード」を全員が持っています。このカードを専用のカードリー
ダーに差し込んで、暗証番号を入力すると、無料で電子署名を行
うことができます。このエストニアのシステムは、2002年に
提供がはじまっています。
 エストニア政府は、「eIDカード」によって、国民の名前や
住所などの基本情報のほか、どの分野の教育を受けているのかな
どの情報を把握することが可能になります。このカードを持って
いると、エストニア政府が提供する様々なオンライン行政サービ
スを受けることが出来ます。データは、ブロックチェーンでデー
タベース化されているので、改ざんの恐れはないのです。
 エストニアでは、行政申請の99%がオンライン化されており
「eIDカード」と連携したサービスは2700を超えます。確
定申告の95%、法人設立手続きの98%、薬の処方の99%は
オンラインで行われています。
 その他、住民登録、年金や各種手当の申請、自動車の登録手続
き、国民健康保険の手続き、運転免許証の申請と更新、出生届提
出や保育園・学校への入学申請、学校の成績表へのアクセス、も
ちろん、銀行口座、病院の診断履歴へのアクセスも可能です。
 これらのエストニアのIT立国を支える基盤技術が、ブロック
チェーンです。エストニアでは、2008年にブロックチェーン
をテスト導入し、今日では、医療データの記録・管理にブロック
チェーン技術を活用していくための、試験運用が行われており、
今後も活用を広げていくことになっています。
             ──[デジタル社会論V/034]

≪画像および関連情報≫
 ●デジタル変革で電子政府化を実現したエストニア、隠された
  苦難の歴史と希望の未来
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   人口約130万人の小国エストニアが注目を集めている。
  1991年に旧ソ連から独立を回復後、行政システムの電子
  化へ一気に舵を切り、今では行政手続きの99%が電子化さ
  れた国だ。電子政府やIT先進国というイメージの確立に成
  功し、海外の優秀なデジタル人材を引きつけ、新しい国のあ
  り方を提示している。エストニアは、なぜ電子政府を実現で
  きたのだろうか。日本の10年先を進むとも言われるエスト
  ニアのデジタル変革と彼らが向かう新しい世界について、そ
  の歴史や文化的背景を踏まえて述べる。
   今年3月、欧州のエストニアで開かれた国会議員選挙にお
  いて、元大関の把瑠都(本名、カイド・ホーヴェルソン)さ
  んが当選した。エストニア出身の大相撲力士による国会議員
  の就任は日本でも話題になった。だが、この選挙は世界的に
  はより違う意味で受け止められた。投票数のうち43・8%
  が電子投票だったからだ。
   エストニアでは国民一人ひとりに与えられたデジタルID
  を用いれば、インターネットを通じて投票ができる。電子投
  票の受付期間中であれば、世界中いつでもどこからでも選挙
  に参加できる。2005年の地方選挙で世界に先駆けてイン
  ターネット投票を実現して以来、電子投票の比率は年を経る
  ごとに上がった。今回初めて4割を超え、電子投票の得票数
  が国政の結果を左右するほどになった。
                  https://ibm.co/2Y2yAS5
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エストニアの風景.jpg
エストニアの風景
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(2) | デジタル社会論V | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする