2021年09月17日

●「マイナンバーカードとe−TaX」(第5575号)

 『良いデジタル化悪いデジタル化』(日本経済新聞出版)の著
者である野口悠紀雄教授ご自身が、この本のなかでマイナンバー
カードについて次の体験を紹介しています。
 ある日、マイナンバーカードの有効期限が気になったので、カ
ードを調べてみたところ、「2025年の誕生日まで有効」と記
載されていたので、ひとまず安心したといいます。しかし、電子
証明書の有効期限は2020年までであると知って、慌てたとい
います。2020年はじめの話です。
 マイナンバーカードの有効期限は10年間ですが、署名用電子
証明書及び利用者証明書の有効期限は5年間です。カードと証明
書の有効期限が異なるのです。これは不便です。これではカード
の有効期限が10年であっても、電子証明書の有効期限が5年で
あれば、マイナンバーカードの有効期限は実質的に5年というこ
とになります。また、20歳未満の人のマイナンバーカードの有
効期間については、容姿の変動が大きいことから、顔写真を考慮
して5回目の誕生日ということになっています。
 マイナンバーカードの申請時に市役所の窓口で、「e−TaX
を使わないのであれば電子署名は必要ないでしょう」といわれた
人もいるといわれます。そういわれれば、手続きに時間もかかる
ので、多くの人は手続きをしない選択をするでしょう。なお、マ
イナンバーカードとe−TaXの関係については後述します。
 しかし、そのとき電子証明書の手続きをしなかった人は、マイ
ナンバーカードによる昨年の特別定額給付金のオンライン申請は
できなかったのです。電子証明書の手続きをしなくてもいいとア
ドバイスした市役所に聞くと、「そのような事態(特別定額給付
金申請)は想定できなかった」と述べています。
 野口教授によると、その後しばらくして、マイナンバーカード
電子証明更新手続きの通知が届いたといいます。手続きのために
来庁せよというのです。これについて、野口教授は、次のように
述べています。
─────────────────────────────
 そもそも、電子証明書は、窓口に行かずに済ませるための道具
だ。その手続きをするために、コロナ感染の危険を冒して役所に
出頭しなければならないというのでは、話が逆ではないか?
 それだけではない。そもそも、電子証明書に5年という有効期
限を設けているのも、おかしい。電子署名を頻繁に使う場合には
何度も同じ秘密鍵を使っていると、それを外部者に推測されてし
まう危険がある。だから、電子証明書に一定の期限を設けること
にしている。
 ところが、マイナンパーカードの電子署名を頻繁に使う人など
まずいない。事実、私はこの5年間に一度も使ったことがない。
これは多くの人に共通することだろう。もし頻繁に利用している
人がいるのなら、その場合には任意で更新申請をすることとすれ
ばよい。一度も使っておらず、したがって、秘密鍵が知られた可
能性など絶対にあり得ないにもかかわらず、「5年たったから無
効」とするのは、役所の形式主義以外の何物でもない。さんざん
迷ったあげく、有効期限の1週間前に、私はおとなしく窓口に出
頭して、電子証明書の更新をした。     ──野口悠紀雄著
      『良いデジタル化/悪いデジタル化/生産性を上げ
       プライバシーを守る改革を』/日本経済新聞出版
─────────────────────────────
 ところで、「e−TaX」とは何でしょうか。
 「e−TaX」とは、「国税電子申告・納税システム」であり
2004年6月から導入されています。これは、行政手続きのオ
ンライン化で成功した唯一の例であるといわれます。
 2021年6月25日付の朝日新聞デジタルは、大阪国税局に
おける、2020年分所得税の確定申告状況における「e−Ta
X」の利用状況について、次のように報道しています。
─────────────────────────────
 大阪国税局は6月25日、2020年分所得税の確定申告状況
を発表した。申告した個人は、356万5千人(前年比2・9%
増)で、うち190万人(同12・5%増)がスマホやパソコン
でできる国税電子申告・納税システム「e−TaX(イータック
ス)」を利用。e−TaXで申告した人の割合が、初めて半数を
超えた。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、利用が広がった
とみられる。
 同局によると、管内の近畿2府4県で、申告会場に行かずにe
−TaXを使ったのは132万7千人。前年より26万9千人増
えた。自宅などでスマホを使って申告した人も、前年の倍の20
万5千人だった。          https://bit.ly/3zn3YaR
─────────────────────────────
 今回は、コロナ禍であったことが、e−TaXの利用を押し上
げている面はありますが、2017年度の法人税申告においては
e−TaXの普及率は79・3%と80%近くになっています。
そのため、2020年からは、大企業へのe−TaX義務化が行
われています。
 e−TaXを利用する場合は、「利用者識別番号」という16
桁の番号の取得と暗証番号の登録が必要になります。これらは、
e−TaXにログインするさい、本人認証のために必要になる手
続きです。しかし、マイナンバーカードを利用すると、e−Ta
Xの利用者識別番号と、暗証番号の手続きや入力が不要になりま
す。e−TaXでは、インターネットを利用してやりとりするデ
ータについて、データの作成者は誰であるか、送信されたデータ
は改ざんされていないかを確認する必要があります。
 ところがマイナンバーカードを使えば、e−TaXの事前準備
として必要であった電子証明書の登録が不要になるのです。それ
に加えて、e−TaXの利用によって、企業の経理そのものが合
理化されるメリットもあります。紙ベースで作成するよりは、は
るかに経理業務の効率化と改善につながるからです。
             ──[デジタル社会論V/029]

≪画像および関連情報≫
 ●マイナンバーカードを作るべきか?
  ───────────────────────────
   10万円の特別定額給付金がマイナンバーカードで申請で
  きるということをきっかけにして、マイナバーカードがここ
  にきて、俄然注目を浴びています。
   これまでの普及率は4割弱(2021年8月末現在)、ま
  だ10人中6人が持ってない。これまで絶対持っておかない
  とっていうメリットがほとんどありませんでした。あえて、
  これまでのメリットを挙げるとすると
   @マイナポイントで買い物のポイント還元
   A住民票などの各種証明書をコンビニのコピー機で取得で
    きる
   Bネット(e−TaX)での確定申告が可能
   C顔写真付き身分証明書として利用できる
   Dマイナポータル(情報提供等記録開示システム)を利用
    できる
   1のマイナポイントは、マイナンバーカードとキャッシュ
  レス決済の普及に向けた取り組みの1つで、「キャッシュレ
  ス・消費者還元事業」と同じように、キャッシュレス決済に
  対して国からポイントが還元される制度。
   「キャッシュレス・消費者還元事業」は2020年6月ま
  でで終了し、2020年9月から導入されました。期間限定
  で、25%のマイナポイントが還元されます(ポイント上限
  5000円まで)。
  ───────────────────────────
マイナンバーカードとe−TaX.jpg
マイナンバーカードとe−TaX
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論V | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする