2021年09月07日

●「強力な後ろ盾を失ったデジタル庁」(第5567号)

 9月3日、菅義偉首相による突然の総裁選不出馬宣言──こう
いう退陣声明も珍しいですが、菅首相の退陣によって、創設され
たばかりのデジタル庁はどうなるのでしょうか。
 デジタル庁は菅首相の「肝いり」の政策です。菅義偉氏が昨年
9月の総裁選で目玉として掲げ、その推進を訴えていましたが、
行政の「縦割り打破」が前提の政策です。これまで各省庁がバラ
バラに進めてきた国のIT施策を予算を含めてデジタル庁に一元
化しようというものです。その実現には、国のトップの強力なリ
ーダーシップが不可欠です。
 2021年9月1日、デジタル庁の発足式において、菅首相は
次のように挨拶を行っています。
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 新型コロナ感染への対応の中、行政サービスや民間におけるデ
ジタル化の遅れが浮き彫りになった。思い切ってデジタルを進め
なければ、日本を変えることはできない。それを強力にリードす
る司令塔が必要である。こうした思いで、デジタル庁の創設を決
断した。行政サービスの電子化の遅れ、バラバラな国と自治体の
システム、マイナンバーカードの利便性の問題など、長年手がつ
けられず先送りされてきた課題がたくさんある。
 デジタル庁には、政府関係者に加え、民間でさまざまな経験を
された方が数多くいる。立場を超えた自由な発想で、スピード感
を持ちながら、行政のみならず我が国全体を作り変えるくらいの
気持ちで、精を尽くしていただきたいと思う。誰もがデジタル化
の恩恵を受けることができる、世界に遜色ないデジタル社会を実
現する。こうした決意を新たに、私からのあいさつとさせていた
だく。みなさんどうぞよろしくお願い申し上げます。
          ──菅義偉首相/https://bit.ly/3BHR6NO
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 「行政のみならず我が国全体を作り変えるくらいの気持ちで、
知恵を絞っていただきたい」──菅首相はこのように述べました
が、そのわずか2日後、退陣表明です。デジタル庁は、強力な後
ろ盾を失ったことになります。菅首相は、あのように見えて、実
はITに関しては関心が深いのです。
 第3次小泉改造内閣(2005年)で、竹中平蔵氏は総務大臣
に就任しましたが、そのさい、副大臣を務めたのが菅義偉氏だっ
たのです。小泉政権では、竹中平蔵氏を中心に数々のIT政策を
行っており、菅氏はそれを支えていたのです。総務省はIT政策
の担当省庁でもあるので、ITのことはある程度わかります。そ
ういう縁もあって、菅内閣において、竹中平蔵氏は一番先に内閣
官房参与になっているのです。
 しかし、デジタル庁の創設は時間がないこともあって、ドタバ
タ続きで、大変だったといえます。デジタル改革関連法案は、突
貫工事で作られており、今年の通常国会成立後にいくつものミス
が発見され、修正に追われています。また、事務方トップのデジ
タル監の人事も伊藤穣一氏が突然辞退しなければならなくなるな
ど、直前まで決まらず、9月1日直前に石倉洋子氏に決定したと
いういきさつがあります。
 実は、9月4日に、竹中平蔵氏は、自身のツイッターを更新し
次のように投稿しています。
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 この1年菅内閣が成し遂げたことは極めて多い。この成果が十
分評価されず辞任に至ったのは、単なる説明不足を超えて、大き
な理由がある。               ──竹中平蔵氏
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 その理由とは何でしょうか。
 9月4日付、デイリーは「その理由」について、次のように書
いています。竹中平蔵元総務相、小泉純一郎元首相、菅義偉首相
そして小泉進次郎環境相──不思議な縁です。
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 竹中氏は「脱炭素宣言、デジタル庁、携帯料金引き下げ、ワク
チン加速。この成果が十分評価されず辞任に至ったのは、単なる
説明不足を超えて大きな理由がある」と菅政権の功績を称えた上
で、辞任に至った理由を分析。
 「医療に関する鉄の三角形(厚生ムラ)を崩せなかったこと。
新総裁は、これを解体し日本版CDCを作れ!」と、日本でも疾
病対策予防センターを作るべきだと提言した。竹中氏は、小泉政
権時に郵政民営化担当大臣などを歴任。8月22日にも「コロナ
問題最大の課題は、病床不足で医療逼迫すること。病床を増やせ
というと、医療関係者は「出来ない」理由を並べたてる。小泉元
首相は官僚に対し、「出来ない理由を言うのではなく、専門家な
らどうしたら出来るか案を持ってこい」と常に述べた。「医療ム
ラ」を解体しないと日本は良くならない」とツイートしている。
                  https://bit.ly/3jIGEzD
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 菅首相は、なぜ総裁選不出馬を表明したのでしょうか。
 こういう情報があります。最大の謎は、なぜ、菅首相が4日間
連続して、孫のような小泉環境相とサシで面談を繰り返したかと
いうことです。
 実は、水面下では、猛烈な「菅降ろし」が起きていたのです。
司令塔は、どうやら安倍前総理と麻生財務相。それは地方の自民
党県連にまで及んでいたといいます。事実、菅首相の地元である
自民党神奈川県連幹部は「総裁選が行われる中で党員の声をしっ
かりと受け止めたい。県連としてはとくに菅さんを頼むという応
援をするつもりは一切ない」と明言しています。
 菅首相は、そういう党内の情勢を小泉環境相からつぶさに聞か
され、「もはやこれまで」と決断したというのです。小泉環境相
は多くの若手を束ねており、そういう情報が入るのです。政治に
はそういう裏側もあります。ただ、小泉環境相は総裁選前の解散
には色をなして反対したそうです。
             ──[デジタル社会論V/021]

≪画像および関連情報≫
 ●菅首相退陣へ/総裁選レース本格化/河野氏、石破氏
  立候補は・・・
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   菅首相は3日、自民党の総裁選挙に立候補しない意向を表
  明した。一方、河野規制改革担当相が立候補の意向を固める
  など、動きが激しくなっている。菅首相「自民党役員会にお
  いて、私自身、新型コロナ対策に専念したいという思いで自
  民党総裁選挙には出馬しないということを申し上げた」
   菅首相は自民党の臨時役員会で、総裁選に立候補しない意
  向を表明した。新総裁誕生を受け、退陣となる。小泉環境相
  「総裁選に突っ込んで、ボロボロになってしまったら、やっ
  てきた良いことすら正当な評価が得られない環境に総理を置
  いてしまうんじゃないか」
   前日まで4日続けて菅首相と会談していた小泉環境相は、
  「引くという選択肢まで含めて話をした」と明らかにした。
  河野規制改革相「私自身どうするか、先輩や仲間の議員と、
  じっくり相談し、決めてまいりたい」
   関係者によると、河野規制改革相は、派閥のトップの麻生
  財務相に総裁選立候補の意向を伝えたという。自民党・石破
  元幹事長「(出馬の考えは?)白紙です。よく整理をして、
  自分なりにどういう判断するにせよ、納得ができた時に決断
  するということだ」石破元幹事長は、立候補を模索していく
  姿勢をにじませた。岸田前政調会長「どなたが出てきたとし
  ても、私自身は従来通り、国民、党員の皆さんにしっかり向
  き合って発信し続けることが大事だ」
                  https://bit.ly/3jIypDs
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総裁選不出馬を宣言する菅首相.jpg
総裁選不出馬を宣言する菅首相
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論V | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする