ジタル化は進むのでしょうか。いろいろな問題があります。ただ
本稿を執筆しているのは29日、デジタル庁の詳細はわかってい
ないという前提で、以下記述することにします。
デジタル庁の組織について述べることにします。組織図は20
21年6月4日時点のものです。
デジタル庁のトップは菅総理大臣です。デジタル庁は、スポー
ツ庁、文化庁、金融庁のように長官を置かず、デジタル大臣がナ
ンバー2として所管します。平井卓也デジタル改革相がこのポス
トに就くものと思われます。当然、副大臣、大臣政務官がスタッ
フとして、デジタル大臣をサポートします。
問題は、デジタル大臣の下には、ラインとして、事務方のトッ
プとして、デジタル監が配置されています。デジタル庁が手掛け
る仕事の指揮命令は、このデジタル監が行うのです。デジタル監
には、スタッフとして、専門職の以下の8人のデジタル審議官が
置かれます。
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CA Chief Architest
CAIO Chief AI Officer
CDO Chief Design Officer
CIO Chief Innovation Officer
CISO Chief Information Security Officer
CPO Chief Product Officer
CTO Chief Technology Offiecer
CTrO Chief Transformarion Officer
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そして、デジタル監の下に、ラインとして、4つのグループが
配置されます。
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@戦略・組織グループ
Aデジタル社会共通機能グループ
B国民向けサービスグループ
C省庁業務サービスグループ
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この組織から考えると、デジタル庁におけるデジタル監の仕事
は重要です。専門家である8人の審議官の意見を聞きながら、全
体の仕事をまとめ上げる必要があります。このデジタル監は、か
つての「政府CIO」(最高情報責任者)の後継のポストとして
設置されたものです。
「政府CIO」は、2013年に設置されましたが、政府が民
間登用したIT人材の実質的なトップであり、これまでは、民間
企業のCIOの経験者を任命してきたのです。そういう意味では
伊藤穣一氏はまさに適任だったといえます。
ところが伊藤穣一氏が急遽だめになって、一橋大学名誉教授の
石倉洋子氏が候補に上がっています。現在調整中ということです
が、少なくとも、本稿執筆時点の29日現在、決まったという情
報はありません。ところで、石倉洋子氏とはどういう人物なので
しょうか。経歴は、次のように絢爛豪華です。
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専門は、経営戦略、競争力、グローバル人材育成。
米バージニア大学大学院経営学修士(MBA)、ハーバード大
学大学院経営学博士(DBA)。マッキンゼー・アンド・カンパ
ニーを経て青山学院大学国際政治経済学部教授。一橋大学大学院
国際企業戦略研究科教授。慶應義塾大学大学院メディアデザイン
研究科教授。積水化学工業株式会社、株式会社資生堂において社
外取締役。ダボス会議を主催する世界経済フォーラムのメンバー
・オブ・エキスパート・ネットワーク。
主な著書に、「戦略シフト」(東洋経済新報社)、「日本の産
業クラスター戦略」(共著、有斐閣)、「戦略経営論」(訳、東洋
経済新報社)、「グローバルキャリア」(東洋経済新報社)「世
界級キャリアのつくり方」(共著、東洋経済新報社)、「世界で
活躍する人が大切にしている小さな心がけ」(日経BP社)など
多数。 https://bit.ly/3DtJwrO
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しかし、経歴のどこを探しても、情報科学、情報システム、I
CT技術、システム設計・開発・管理、セキュリティなど、デジ
タル関連のキャリアはなく、専門は経営であり、発信力の強い人
ではあるものの、一般論としては、大変失礼ながら、政府のデジ
タル庁のデジタル監としての適任者とはいえないと思います。し
かも、1949年3月生まれの72歳の高齢です。
もちろん、デジタル監があらゆる技術に通じている必要はない
と思います。仕上げるべき目標を策定し、それを能力のある大勢
の人を使って仕上げる経営能力があればいいのです。石倉氏はそ
ういうマネジメント力には長けている人物であると思います。
なぜか、メディアは、石倉洋子氏のデジタル監就任予定をたん
とんと報道していますが、ネット上には、石倉洋子氏のデジタル
監就任について疑問の意見が多いようです。
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なぜ、72歳の専門分野が経営学博士をデジタル庁トップに使
うのか、わからない。菅総理と同い年、政府のいう事を聞きそう
な人物を見つけてきたのだろうが、担当するのはデジタル技術の
管理なのだ。経歴は凄いが畑違いの人物、最新のデジタル機器・
技術やハッカーなどからの情報流出防止などが理解出来るのか?
台湾のオードリー・タン氏など40歳の若さで国のデジタル化
を直接牽引している。少しゲームをかじった程度の平井卓也大臣
ともども、もっと適任者がいるはずだ。若くてコンピュータ技術
に長けている人物を任用しないと、日本は益々世界から遅れてし
まう。 https://bit.ly/3kwXdxI
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──[デジタル社会論V/017]
≪画像および関連情報≫
●イノベーションを起こす「人材」と「組織」について考える
/石倉洋子氏の講演会から
世界は今、非常にバランスがもろい状況にあると石倉氏は
語る。イラク問題、ウクライナ情勢、エボラ熱問題だけでな
く、どこでどんな危機が起こってもおかしくない。このとこ
ろ、新興国が担って来た経済成長が減速していることや、そ
の影響が中国に顕著に現れていることも周知の通りである。
「そんな危機的状況で、政府や政治の力がとても弱くなっ
ています。例えば、アメリカでは、中間選挙で共和党が上下
両院の過半数を占めたこともあり、世界に対するアメリカの
リーダーシップが停滞しています。先日は『今、信頼してい
る組織や機関は何か』とたずねた調査で、『社会的な組織』
という回答が多かったとレポートされていました。一方、政
府や宗教団体に対しては、信頼が非常に低くなっています。
BBC(英国放送協会)や、UNDP(国連開発計画)の
方々とお会いした時も、これほどの危機的な状況が世界中に
起こっていることはかつてないと話していました」
極端な気候変動が各地で起こっており、農産物や食品の生
産量と価格に及ぼす影響が懸念されている。資源枯渇も問題
だが、その権利を巡って起こる争いも見逃せない。では、こ
のような事象はなぜ起こっているのか。そして、それらはな
ぜ加速化しているのか。「これらの原動力となっているのは
おそらくテクノロジーです。テクノロジーの力が世界をつな
げたため、どこかで起こった事象が瞬時に世界中に伝わり、
大きな動きへと変貌していくという流れがあるからです。一
度進歩したテクノロジーを後退させることはあり得ません。
https://bit.ly/2WAfJg3
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石倉洋子一橋大学名誉教授