2021年08月31日

●「デジタル庁創設をめぐるゴタゴタ」(第5562号)

 8月28日付、朝日新聞に内閣官房IT総合戦略室幹部の処分
の記事が出ているので、ご紹介します。この記事は他紙にも出て
いると思いますが、日本経済新聞は完全スルーです。9月1日の
デジタル庁創設の直前であり、重要ニュースのはずですが、無視
です。この新聞は、政権に都合の悪いことは重用ニュースであっ
ても書かない方針のようです。
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◎IT室幹部ら6人処分/五輪アプリ不適切入札で
 東京五輪・パラリンピック向けアプリ(通称オリパラアプリ)
の発注を巡る問題で、内閣官房IT総合戦略室は27日、発注に
関わった幹部職員らの処分を明らかにした。調達の公平性に、国
民の疑念を生じさせかねないとして、訓告などの処分にした。
         ──2021年8月28日付、朝日新聞朝刊
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 「3社からの競争入札」のかたちを整えるために、事前に金額
を指示し、他社の見積書も参考に送付するなど、きわめて不適切
な発注をしておきながら「訓告」というきわめて軽い処分にとど
めています。
 公務員の処分というと、国家公務員法82条が定めている4段
階の「懲戒処分」があります。重い順に並べると次の通りです。
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         1.免職   3.減給
         2.停職   4.戒告
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 このなかに「訓告」はなく、「訓告」は法律上の処罰にならな
い比較的軽い実務上の処分の1つに過ぎないのです。訓告は、業
務違反の際に口頭又は文書で注意をする処分であり、給与や昇格
に影響はないきわめて軽い処分です。
 発注チーム管理者は、神成淳司室長代理ですが、この人には重
要な疑惑があります。そのことについて、朝日新聞は次のように
書いています。これだけのことをして訓告です。大甘な処分とい
われても仕方がないでしょう。
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 守秘義務を負わない民間企業の社長が仕様書作成に深く関与し
その企業が再受託者となった。社長と神成氏が共同開発者のシス
テムが、アプリに採用された。神成氏は利益を得る予定だったが
週刊誌による報道後に権利を放棄した。神成氏は、2017年〜
18年、社長から頻繁に高額な飲食接待を受けていたという。
         ──2021年8月28日付、朝日新聞朝刊
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 この神成淳司慶應義塾大学環境情報学部教授を高く評価してい
たのが和泉用人首相補佐官です。このことについて、8月26日
付の「デイリー新潮」は次のように書いています。
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 デジタル庁の母体になるIT室をこれまで事実上仕切ってきた
和泉洋人首相補佐官が、神成氏をデジタル監に推したというので
す。しかも和泉補佐官が根回ししたのか、官僚トップの杉田和博
・官房副長官も賛成に回ったそうです。
 一方、デジタル政策を担当する内閣官房参与である村井純・慶
應大学教授は反対したと言われています。結局、神成氏自身がデ
ジタル監のポストを辞退したのですが、和泉補佐官はまだ、8人
置くことになっている業務の最高責任者のどこかに神成氏を使う
つもりでいるようです。       https://bit.ly/3ypvALU
       ──2021年8月26日付、「デイリー新潮」
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 ところで「デジタル監」とは何でしょうか。
 このポストは民間人から登用することが決まっています。組織
のトップではありませんが、担当大臣の補佐から組織や実務の監
督まで幅広い業務を受け持ちます。政府全体でみても、民間登用
としては、省庁の事務次官を超える最上級の権限を持つポストと
いわれています。その専門能力を生かせるかどうかがデジタル改
革の成否にも影響します。
 2021年2月9日に閣議決定された「デジタル庁設置法案」
によると、デジタル庁のトップは首相が務め、首相を補佐するか
たちで、デジタル庁担当の「デジタル大臣」(仮称)を置くこと
になっています。このデジタル大臣を、民間で培った専門性を生
かして補佐するポストがデジタル監です。
 これでわかったことがあります。菅内閣が発足したとき、菅首
相が多くの民間人と会ったのですが、そのなかに、村井純慶応義
塾大学名誉教授がいたのです。このときは、なぜ、村井氏と会っ
たのかわからなかったのですが、デジタル庁についていろいろと
アドバイスを受けるためだったものと思われます。
 和泉補佐官は、このデジタル監について、神成敦司教授を推薦
しましたが、これには、村井内閣官房参与が反対したといわれて
います。村井教授が推薦したのが伊藤穣一氏です。伊藤穣一氏は
投資家やIT実業家などとして知られ、2011年にデジタル技
術の研究所であるメディアラボの所長に就任しましたが、少女ら
への性的虐待などの罪で起訴された米国の富豪ジェフリー・エプ
スタイン元被告(勾留中に死亡)から、資金援助を受けていたこ
とが明らかになり、19年に辞任した経緯があります。
 確かに、伊藤穣一氏は、インターネットおよびテクノロジー企
業に焦点を当てた起業家としての役割が評価され、PSIネット
ジャパン、デジタルガレージ、インフォシークなどを設立してい
ますし、ソニー株式会社の戦略アドバイザーも務めており、デジ
タル監としては適任者です。
 そして、8月28日現在、政府は、そのデジタル監に一橋大学
名誉教授の石倉洋子氏を起用する方向で調整していますが、これ
は決まりと考えられます。しかし、石倉洋子氏は経営学者として
は超一流ですが、デジタル監が勤まるかどうかは疑問です。
             ──[デジタル社会論V/016]

≪画像および関連情報≫
 ●伊藤穰一氏起用を検討したデジタル庁トップ人事で露わに
  なったもの
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   結果的に撤回されたものの、8月初旬に「政府は、9月に
  発足するデジタル庁の事務方トップとなるデジタル監にマサ
  チューセッツ工科大学(MIT)メディア・ラボの所長を務
  めた伊藤穰一氏を起用する方向で最終調整」というニュース
  を見た時には目を疑った。伊藤氏といえば、「エプスタイン
  ・スキャンダル」で、MITメディア・ラボの所長職辞任に
  追い込まれた人物だ。
   エプスタイン・スキャンダルとは、過去に未成年の売春斡
  旋で有罪となり、2019年にも性的虐待、人身売買などの
  容疑で再度起訴されたアメリカの実業家・ジェフリー・エプ
  スタインから、多くの名門大学や研究者が資金提供を受けて
  いたという事件だ。伊藤氏は問題ある人物だと知りつつも資
  金提供を受けていたと報じられたことで、MITの職だけで
  なく、その他の役職も辞任することになった。
   エプスタインの人脈が著名政治家、財界人、学者、テクノ
  ロジー業界の有力者、ハリウッド、英国王室にまで広がって
  いたこと、彼が獄中死したという展開もあって、この事件は
  アメリカ社会を大きく揺るがせた。2020年にはネットフ
  リックスが、彼の被害者たちにインタビューしたドキュメン
  タリーも制作している。伊藤氏の起用が検討されていた「デ
  ジタル監」は事務次官級の特別職で、平井卓也デジタル改革
  担当相は民間からの起用を明らかにしていた。伊藤氏は長年
  テクノロジー企業の経営や投資に携わり、MITの名門機関
  を率いた経験もあるので、名前が浮上したところまでは分か
  らなくもない。実際、力量や実績、国際的人脈に関しては、
  彼のように条件の揃った人は稀有だろう。
                  https://bit.ly/3gF2lys
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伊藤穣一氏.jpg
伊藤穣一氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論V | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする