をデジタル化し、電子行政を進めるための法律であり、安倍政権
で、2019年5月24日に参議院本会議で可決・成立していま
す。この法律に基づいて2024年度中に、行政手続きの90%
を電子化するための工程表「デジタルカバメント実行計画」が決
められています。
このとき、一元化を主張したのは、当時の平井卓也IT担当相
(現デジタル改革相)であり、菅官房長官(当時)は平井IT担
当相に具体案の作成を命じた経緯があります。
これを受けて内閣官房は、2020年度からIT調達の一元化
をやっとスタートさせ、2021年度予算では、約3000億円
を一括計上しています。これが来月のデジタル庁創設につながる
のです。
しかし、日本政府はこれまで大金を投じて何回もデジタル化に
取り組み失敗を繰り返しています。ここまで述べてきたように、
日本政府は、20年以上かけて、「イー・ジャパン戦略」を含む
「電子政府」に比較的早い時期から取り組んでいるにもかかわら
ず、2020年度の電子政府世界ランキングにおいて14位とい
う振るわない結果に終わっていることは既に述べた通りです。
どうしてうまくいかないのでしょうか。その原因を探るために
壮大な失敗に終わった2004年の「特許庁の基幹システム刷新
プロジェクト」の失敗の顛末を振り返ってみることにします。
作り直す特許庁の基幹システムというレガシーシステムについ
て、「日経コンピュータ」は次のように説明しています。
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特許庁の基幹系システムは、特許、実用新案、意匠、商標の知
財四権について、出願の受付、審査、登録といった基本業務を支
える。アプリケーションの開発規模は二千数百万ステップ。メガ
バンクの勘定系システム並みだ。当時のシステムは、NTTデー
タが開発したもの。特許庁はNTTデータと「データ通信サービ
ス契約」を交わし、1990年12月から利用してきた。データ
通信サービス契約とは、顧客向け業務システムを開発したITベ
ンダーがソフト/ハードの資産を所有し、機能だけを顧客に提供
する契約形態のこと。初期コストを抑えられる一方、開発・運用
コストの透明性を確保しにくい課題がある。
特許庁がシステム刷新に踏み切ったきっかけは、政府が200
3年に発表した電子政府構築計画が示した、レガシーシステム刷
新の指針である。メインフレーム中心のシステムの開発や運用保
守を、特定のベンダーに長年にわたって任せてきたことがコスト
の高止まりにつながっているとし、システムのオープン化を求め
た。NTTデータとデータ通信サービス契約を結んでいた特許庁
も例外ではなかった。 ──日経コンピュータ編/日経BP刊
『なぜデジタル政府は失敗し続けるのか』
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特許庁は、現行システム刷新の効果について、IBMビジネス
コンサルティングサービスに委託し、刷新の費用対効果は高いと
のコンサルティング評価を得ます。そんなことも実際にシステム
を使う立場の特許庁ができないのです。
そのうえで、特許庁は、2004年4月にデータ通信サービス
契約の未払い分約250億円をNTTデータに支払っています。
そして、2006年1月にNTTデータとの契約を解除し、特許
庁は刷新準備を整えています。
続いて調達仕様書を作成する必要があります。そのため、シス
テムに詳しい情報システム部門のAという職員とIBMビジネス
コンサルティングサービスに、調達仕様書の作成を委託したので
す。Aは開発要員ではなく、あくまで調達仕様書作成のスタッフ
としてIBMビジネスコンサルティングと組ませたのです。肝心
の特許庁のスタッフは、システムのことはわからないとしてこの
仕様書作りには参加していないのです。
Aは従来の業務プロセスを全面的に見直し、通常2年かかる特
許審査の期間を1年に短縮することを目標にして、システム全体
に大幅な改定を行っています。システム設計としては当然のこと
です。しかし、すべての情報をXMLで管理するなど、技術的難
度の高い試みをあえて行っています。XMLは、文章の見た目や
構造を記述するためのマークアップ言語の一種で、主にデータの
やりとりや管理を簡単にする目的で使われ、記述形式がわかりや
すいという特徴があります。
このようにして仕様書の骨子が固まると、Aは異動でプロジェ
クトを離れます。特許庁は、この調達仕様書に基づいて2006
年7月に入札を実施し、基本設計から詳細設計までを落札したの
は東芝ソリューション(現東芝デジタルソリューション)だった
のです。技術点としてはよくなかったが、入札価格が予定価格の
6割以下の99億2500万円であったので、それが決め手とな
ったのです。プロジェクトマネジメントの支援を請け負ったのは
総合コンサルティング会社アクセンチュアです。
さて、システム刷新プロジェクトは、2006年12月から開
始されたのですが、最初からカベにぶつかったのです。刷新シス
テムは、従来の業務プロセスを全面的に見直すという前提になっ
ているのに対し、特許庁のスタッフは、それでは使いにくいとし
現行業務をそのまま踏襲するかたちで、新しいシステムを作って
欲しいという要求を出したのです。
AとIBMビジネスコンサルティングの役割は、あくまで調達
仕様書の作成であり、会計課を通すものと考えており、実際のシ
ステムはわれわれ(特許庁)の意見を聞いてもらうという考え方
です。システムを構築する前から、実に無駄なことを積み重ねて
きているわけです。
そのため、東芝ソリューションは、現行の業務フローを文書化
するため、2007年5月までに、スタッフを450人体制に増
強し、作業を行うことになったのです。その後の話は来週のEJ
で述べることにします。 ──[デジタル社会論V/009]
≪画像および関連情報≫
●政府の情報システム、全く使われず廃止/開発費18億円
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サイバー攻撃などによる情報流出を防ぐため、2017年
度に運用開始された政府の情報システムが、使い勝手が悪い
ため実際の業務に全く使われていなかったことが会計検査院
の調べでわかった。今年3月に廃止され、システム開発費な
ど計約18億円が無駄になったという。
関係者によると、システムは「セキュアゾーン」と呼ばれ
省庁が持つ企業情報などを管理する目的で、総務省が開発し
た。インターネットから遮断された環境で情報を管理するの
が特徴で、職員による情報の改ざんや外部への持ち出しも防
ぐため、各省庁は専用回線からそれぞれの情報を閲覧する仕
組みだった。
開発のきっかけは15年、日本年金機構がサイバー攻撃を
受け、約125万件の個人情報が流出した問題だ。公的機関
へのサイバー攻撃の対策強化が急務となり、総務省は同年度
システム開発費などを補正予算で計上。開発段階では厚生労
働省や農林水産省が利用を希望していた。
しかし、16年度に開発したシステムはセキュリティーを
重視するあまり、データの閲覧はできるがダウンロードがで
きない仕様だった。このため、実際の業務で資料作成などを
する際は、職員がシステムのデータを再入力する必要があっ
た。他の情報システムと連携できないなどの問題もあり、厚
労、農水両省は導入を断念。17年度に運用開始された後、
一度も実際の業務に使われず、検査院の指摘を受け、総務省
が18年度末に廃止した。 https://bit.ly/3yUfhaJ
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特許庁