2021年08月06日

●「バーゼル委員会5つの近未来予測」(第5546号)

 バーゼル銀行監督委員会(BCBS)という機関があります。
この機関は、金融機関を対象とした国際的なルールを協議・決定
し、継続的な協力を行うためにG10(主要10カ国)諸国の中
央銀行総裁会議での合意によって創設された銀行を監督する最高
機関です。
 2017年10月31日のことですが、このバーゼル銀行監督
委員会が次のレポートを発行したのです。URLをクリックする
と、英文ですが、原文が読めます。
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  ◎健全な慣行とは何か:
  フィンテックの発展が銀行と銀行監督者にもたらす意味
                バーゼル銀行監督委員会
          https://www.bis.org/bcbs/publ/d415.pdf
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 このレポートでは、近未来の銀行について、5つのシナリオが
提示されています。以下、ひとつずつ説明します。
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        1.Better Bank
        2.New Bank
        3.Distributed Bank
        4.Relegated Bank
        5.Disintermediated Bank
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 第1は「Better Bank」です。
 これは、既存の銀行がデジタル化やフィンテック化に取り組み
より高度な金融サービスを低廉なコストで提供していく姿を想定
しています。そして、既存の銀行が依然として業界内において覇
権を握り続けるというシナリオです。現在、日本の各銀行はこの
シナリオの実現を目指して努力を続けています。しかし、どうし
てもレガシーなものが残るシナリオといえます。
 第2は「New Bank」です。
 これは、フィンテック企業が自ら銀行を設立し、フィンテック
の強みを生かして、既存の銀行に代わって、フルラインで高度な
金融サービスを提供するシナリオです。既存の店舗はデジタル店
舗に置き替えられ、その戦いのなかでレガシーの銀行は、新しい
銀行に敗れ去るというシナリオです。
 第3は「Distributed Bank」です。
 これは、第1のシナリオのベター・バンクと、第2のシナリオ
のニュー・バンクの中間的な位置づけになります。既存銀行とフ
ィンテック企業が相互に分業するシナリオです。
 このシナリオでは、APIの連携などにより、金融サービスの
提供や顧客チャネルの設置や運営を既存の銀行とフィンテック企
業が手分けして担っていくスタイルとなります。その結果、顧客
は、これまでのように、限定された銀行を繰り返し使うという慣
行から複数の金融機関を利用するようになります。
 第4は「Relegated Bank」です。
 このシナリオは、いわゆるビッグテックに代表されるプラット
フォーマーが顧客チャネルを掌握し、既存の銀行やその他のフィ
ンテック企業がその配下に組み込まれるというシナリオです。既
存の銀行にとって、最も避けたいシナリオであるといえます。
 自動車産業に譬えると、完成車組立メーカーとしての自らの地
位をブラットフォーマーに明け渡し、顧客チャネルから分断され
るかたちで、その配下に組み込まれた部品サプライヤーとしてモ
ジュール化された金融サービスを提供する姿が想定されます。
 ちなみに「Relegated 」とは、「左遷される」とか「格下げさ
れる」とか「退けられる」という意味です。
 第5は「Disintermediated Bank」です。
 5つのシナリオのなかで最も過激なシナリオといえます。既存
銀行は退けられ、フィンテック企業とメガテック企業に取って代
わられるシナリオです。いわゆる「銀行が破壊されるシナリオ」
であるといえます。ちなみに、「Disintermediated」とは「中抜
きされる」というような意味です。
 これらのバーゼル銀行監督委員会の分析のポイントは、顧客に
商品・サービスを提供するブレーヤーを次の2つに分類して分析
していることです。これは、添付ファイルの図を参照していただ
きたいと思います。とくに顧客接点は重要です。
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          @サービス提供者
          A   顧客接点
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 『アマゾン銀行が誕生する日』の著者の田中道昭氏は、バーゼ
ル銀行監督委員会の分析をふまえて、日本の金融機関に対して次
の3つの提言を行っています。
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@デジタル化がさらに進捗していくことが確実であるため、デジ
 タル化への対応を早期に実現すべき分野と、レガシーとして残
 ると判断される分野とを明確に峻別すること
Aデジタル化への対応を早期に実現すると意思決定した分野につ
 いては、重要な経営戦略として取り組むこと
Bレガシーとして残ると判断した分野については、人がやるべき
 ことをさらに先鋭化させ、専門性や信頼性をさらに高める努力
 が必要                  ──田中道昭著
         『アマゾン銀行が誕生する日/2025年の
              次世代金融シナリオ』/日経BP
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 2021年は、一貫して「デジタル社会論」について書いてい
ます。デジタル元年の今年は、今後もこのテーマを続けていきま
すが、「デジタル社会論/U」は、本日で終了します。10日か
らは、日本のデジタル化について「デジタル社会論/V」をお届
けします。    ──[デジタル社会論U/073/最終回]

≪画像および関連情報≫
 ●金融のデジタル化から考える、デジタルトランスフォーメー
  ション
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   デジタルテクノロジーは凄まじい勢いで進化を続け、社会
  ・経済を大きく変えようとしている。私たちは、今、どうい
  った変化の潮目にいるのか。その中でデジタルテクノロジー
  とどう向き合うべきなのか。あらゆる産業に大きな影響を及
  ぼす金融のデジタル化をテーマに、世界の先進的な取り組み
  を考察するとともに、顕在化しだしたデータ活用の影の側面
  を整理し、デジタル社会の「信用の構築」に向けて留意すべ
  きポイントを考えていく。    https://bit.ly/3jl4rUL
 ●図の出典:田中道昭著/日経BPの前掲書より
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銀行5つの近未来シナリオ.jpg
銀行5つの近未来シナリオ
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする