2021年08月05日

●「CXが不可欠になった背景を探る」(第5545号)

 CX(カスタマーエクスペリエンス)が不可欠になった背景に
は次の3つがあります。
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      1.タッチポイントの増加・多様化
      2.カスタマーの価値観の大幅変化
      3.購買サイクルの長期化・複雑化
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 第1は「タッチポイントの増加・多様化」です。
 かつて企業と顧客のタッチポイントというと、対面か電話に限
られていたといえます。それがインターネットの出現・普及によ
り、ウェブサイトやメール、SNSなど、一挙に増加・多様化す
るようになっています。
 とくにスマホによるSNSの普及は、顧客自身が簡単に情報発
信する側に立てるようになり、企業と顧客の双方向の情報交換、
コミュニケーションがとれるようになってきています。これによ
り、顧客はモノを購入するとき、デジタルとリアルの店舗を回遊
して、意思決定をするようになっています。これを「カスタマー
ジャーニー」と呼ぶことがあります。これをもう少し、正確にい
うと、カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを知り
購入・利用意向をもって実際に購入・利用するまで、また利用後
に廃棄するまでに、顧客が辿る一連の体験を「旅」に例えてその
ように呼ぶのです。
 第2は「カスタマーの価値観の大幅変化」です。
 「モノ消費」から「コト消費」という、顧客の価値観の変化で
す。商品の所有に価値を見出す消費傾向を「モノ消費」、商品や
サービスを購入したことで得られる体験に価値を見出す消費傾向
を「コト消費」といいます。
 もうひとつ「商品のコモディティ化」ということがよくいわれ
ます。コモディティ化というのは、競合の結果として製品やサー
ビスについてあまり差がなくなり、顧客からみて「どの会社の製
品やサービスも似たようなもの」に映る状況をいいます。
 例えば、ソニー損保のようなサービスが普及し、どこの損保も
それが当たり前になる状況が「コモディティ化」です。そうする
と、顧客は製品やサービスを機能的な価値だけで判断することが
難しくなり、その他の価値観を比較・検討することが重要になっ
てきます。それがカスタマーエクスペリエンスが重視されるよう
になった背景になっています。
 第3は「購買サイクルの長期化・複雑化」です。
 企業は、製品やサービスを提供することだけを目指すのではな
く、購入前の認知、比較検討段階、購入後のサポートまでの長期
にわたる顧客の全体プロセスにおいて、顧客の維持、紹介の獲得
のため、それぞれのタッチポイントにおける戦略に気を配る必要
が必要になってきています。
 最近では、新たなテクノロジーを使った製品やサービス導入が
増加してきており、製品の購入には、製品・サービスの理解や、
導入後の実益や導入プロセスなどを検討する必要があるなど、従
来の購買サイクルよりも複雑化・長期化しています。
 なぜ、CX(カスタマーエクスペリエンス)がいま必要になっ
てきているのかについて、書いてきています。しかし、わかりに
くい、書きにくいテーマであることも確かです。しかし、CXを
実践している企業は多いのです。
 そこで、もうひとつわかりやすい例を上げることにします。米
大手コーヒーチェーン、スターバックスについて書かれた文章を
ご紹介することにします。
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 コーヒーチェーンの大手スターバックスは、店舗に訪れた顧客
へ「こんにちは」とあいさつしている。顧客一人ひとりの心を豊
かにし、一つのコミュニティーとして活動することを指標にして
いるのだ。
 心地のよい接客スタイル、店内の雰囲気やBGMにも顧客満足
度へのこだわりが見られる。デザイン性が高く評価されている商
品パッケージや季節限定商品なども、スターバックスならではで
あり、他店舗と差別化したサービスだ。顧客がそのサービスに感
動・共感し、「また訪れたい」とリピーターになることで、常に
店舗が盛況なのである。       https://bit.ly/3frdS3P
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 コーヒー店でおいしいコーヒーを出すのは当たり前です。そう
いう店はたくさんあります。しかし、人がコーヒー店に行くのは
単にコーヒーを飲むためだけではなく、そこでゆったりとした時
間を過ごしたいからです。スターバックスでは、何よりもリピー
ターを大切にし、顧客に次の体験を味わってもらうためのCXを
提供しています。
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 ◎スターバックスのミッション
 スターバックスの店舗をコーヒーをテイクアウトする場所か
 ら一日中快適に過ごせる場所にする。
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 そのための施策として、2002年にスターバックスは、無料
WiFiサービスを開始しています。まして昨今では、コロナ禍
のために在宅ワークが増えており、在宅ワークのためにも、店舗
でゆったりとした時間が過ごせることが条件になります。そのた
めに、コーヒー店としてはCXが不可欠なのです。
 私は、よく行く池袋の「伯爵」というレトロな喫茶店によく行
きます。場所が丸善ジュンク堂に近いこともあり、全体としてス
ペースにゆとりがあり、ゆったりとして過ごせます。簡単な食事
もできますし、味はレストラン並みです。しかも、コーヒーは2
杯目からは半額であり、ゆっくりと過ごしてもらおうという店の
配慮が感じられます。明らかにこの店がCXを意識していると思
われます。そういうカスタマーエクスペリエンスが今求められて
いるのです。       ──[デジタル社会論U/072]

≪画像および関連情報≫
 ●スタバの販促ゲーム/緑色のエプロン
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   スタバがいろいろ仕掛けてきます。日本でも消費者の心を
  くすぐるような仕立てが、いろいろあるかと思いますが、こ
  ちら北米では今「スターバックス・フォア・ライフ」と称し
  まして、ビンゴゲーム仕立ての販促をしています。
   ローカルネタで申し訳ないのですが、見てやって下さいま
  し。それはよくあるお店のポイントを集めて何かが貰えると
  か、お買い上げに応じて×××とかって言うようなゲーム感
  覚のもので、こんな表になってウェブ上(私のアカウント)
  に現れてきます。
   一回のオーダーにつき、一つのコマが開きます。各列3つ
  揃えばビンゴ。賞品は、上から、スタバの一生分の珈琲チケ
  ット、1年分、1ヶ月分、1週間分、そして、ボーナススタ
  ーは単なるポイントです。
   このゲーム販促(販売促進)、確か冬にもあったんですけれ
  ど、なかなか揃いませんでした。最初は良いのですが、その
  うち同じ駒ばかり開いて重なるんですよ。いつも違うのが来
  るとは限らないんです。あと、ちょっと。あと一つ。
   だから今日ももう一杯。と、消費者を煽るんですね〜。今
  回も、まさにそのパターン。だって、あと一つで一生涯スタ
  バが無料なんて、嬉しいですから。と買いに行って、もう数
  回は同じ駒でした。それに実際、私の周りで当たった人って
  聞いたことはありません。    https://bit.ly/37eiOVg
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スターバックス.jpg
スターバックス
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする