けます。ソニーの金融関連企業には、生保、損保、銀行などがあ
りますが、いずれも既存企業よりも後発であるので、いわゆる過
去の業界の慣例にとらわれることなく、いずれも新機軸を打ち出
して成功を収めています。
ソニー損保は、1999年に営業を開始し、2004年にソニ
ーフィナンシャルホールディングス株式会社が設立され、現在は
その傘下に入っています。そのソニー損保は、1999年のスタ
ートと同時に、「保険料は走る分だけ」の自動車保険を発売して
います。
この保険は業界としては画期的ですが、「毎日運転する人と、
たまに運転する人の保険料が同じなのは不公平である」というユ
ーザーの声に応えたところに大きな意義があります。まさに顧客
視点に基づいてそれに応えた自動車保険といえます。
しかし、他の損保会社は、個々の人の走行距離に関係なく一律
に保険料を集める方が営業効率が良いので、とくに大手の損保会
社はなかなか追随しようとしなかったのです。
しかし、乗用車を仕事に使う人は別として、ほとんどの車のド
ライバーは、休日にしか乗らない人々です。したがって、この保
険は、そういう人がトクをする保険であり、ソニー損保としては
そういう保険があることが該当ユーザーに分かれば、必ず売れる
と確信したのです。
「保険料は走る分だけ」──ソニー損保はCMやネットで徹底
的にこのメッセージを流し、ソニー損保といえばこのメッセージ
が頭に浮かぶほど浸透を図ったのです。その効果もあって、ソニ
ー損保の自動車保険は売れ始めたのです。しかし、大手損保はし
ばらく静観していたものの、2013年になって、東京海上保険
日動の子会社であるイーデザイン損保は、「保険料は走った分だ
け」の保険を発売しています。
現在は、走行距離に応じて保険料の決まる自動車保険は数社が
発売していますが、その多くは「過去1年間の走行距離」に基づ
いて、保険料が決まります。しかし、ソニー損保の場合は予想年
間走行距離に応じて保険料を算出しているのです。ソニー損保は
「走った分だけ」ではなく、「走る分だけ」です。ここにソニー
損保のこだわりがあります。
ソニー損保は、つねに顧客の声を聴くことに徹しています。そ
の一端が、ソニー損保のウェブサイト「お客様とソニー損保のコ
ミュニケーションサイト」に見ることできます。
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◎「お客様とソニー損保のコミュニケーションサイト」
@コエキク改善レポート
A コエキク質問箱
B みんなの満足度
C 保険なるほど知恵袋
https://bit.ly/2WAXF5y
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Aの「コエキク質問箱」は、顧客からの質問や意見を受け付け
ています。「あなたの声を投稿する」という赤いボタンをクリッ
クすると、質問や意見を自由に投稿できます。
それらの質問や意見に対するソニー損保としての対応として際
立っていることは、担当者が顔写真付きで答えていることです。
これは、顧客の質問や意見に対する企業として責任のある対応を
とっていることを示しており、評価できます。
このように寄せられた顧客の質問と意見に対して、@の「コエ
キク改善レポート」において、ソニー損保としての改善への取り
組みや改善度を「@改善しました!」「A検討します!」「B申
訳ございません」の3つに分けて、それぞれに担当者が顔写真付
きで答えています。サイト上でここまでやっている企業は少ない
と思います。
Bの「みんなの満足度」は、ソニー損保が実施する顧客満足度
アンケート調査の結果を公開しています。なかでもソニー損保の
「ロードサービス」は極めて充実しており、次の範囲に及んでい
ます。代理店を介さないダイレクト保険会社の特性です。
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@事故車を修理工場に運ぶレッカーサポート
A事故現場から帰宅までの費用の負担
B修理後の車の自宅配送
Cレンタカーの費用の負担
Dその他
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ソニー損保の自動車保険では、@〜Cの費用を無料でやってく
れるのです。事故が起きたとき、24時間対応でソニー損保と連
絡ができ、しかも、相手との全交渉を含め、事故車を修理工場に
運ぶレッカー費用の負担、しかも修理車を自宅まで無料で配送し
てくれるなど、至れり尽くせりです。ソニー損保の自動車保険の
契約者は、事故を起こしてないときも安心して運転ができるので
まさにカスタマーエクスペリエンスを体験できます。
ソニー損保のロードサービスの満足度は次の通りです。
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とても満足 ・・・・・ 88・3%
満足 ・・・・・ 9・9%
やや満足 ・・・・・ 0・5%
不満 ・・・・・ 0・9%
とても不満 ・・・・・ 0・4%
https://bit.ly/3fkFW9g
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顧客にカスタマーエクスペリエンスを体験させる──これは、
ソニー損保のレベルの顧客対応をしなければ、なかなか難しいと
いうことがよくわかると思います。
──[デジタル社会論U/071]
≪画像および関連情報≫
●ソニー損保の自動車保険に優良ドライバーが年々溜まって
いく仕組み/テレマティス保険
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テレマティクス保険は説明が難しい保険なので、ソニー損
保ではウェブ専用とし、消費者からのプルを中心とすること
に決めた。コールセンターは、あくまでも販売のサポートと
位置づけた。ウェブでは動画を使って、当保険の契約から、
キャッシュバックまでの流れを説明し、それを理解してくれ
た消費者が契約まで進んでくれる。
通常の自動車保険に割高感を感じる若年の優良ドライバー
をターゲットとして発売したが、実際の加入者は若者も獲得
できているものの、通常の自動車保険と同様、ボリュームゾ
ーンの中年層が多数となっている。
やさしい運転キャッシュバックのリピートに関しては、点
数が高くキャッシュバックを受けた人のリピート率が高く、
それに比べてキャッシュバックがなかった人のリピート率は
低い傾向がある。すなわち年を経るに連れ、ソニー損保には
優良ドライバーだけが溜まっていく仕組みと言える。
テレマティクス保険の宿命としては、市場規模には限界が
あり、全自動車保険の中でシェアを限りなく大きくすること
はできない。それは、全ドライバーに占める優良ドライバー
比率は大体決まっており、シェア10%程度なら優良ドライ
バーだけが加入することはあり得るが、シェア30%となる
と優良でないドライバーまでも獲得しなくてはならないから
だ。彼らは保険料が割高になり、この保険にはもともと加入
しないため、それは現実的ではない。
https://bit.ly/3xjjvr9
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ソニー損保のCM2