2021年07月28日

●「グーグルによるプリン買収の狙い」(第5539号)

 7月28日付の日本経済新聞朝刊の第1面「キャッシュレス/
新世紀」に次の記事が掲載されています。デジタル金融のニュー
スなので、今朝はこの問題について、考えてみることにします。
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 米グーグルが、スマートフォンの決済アプリを運営するpring
(プリン、東京・港)の買収を決めた。2022年春にも送金・
決済サービスを本格展開するとみられる。大手銀行は「ユーザ層
の厚みを考えると脅威」(メガバンク幹部)と警戒する。キャッ
シュレス後進国の日本。決済サービス乱立は、勝者なき消耗戦を
長引かせることになる。
       ──2021年7月28日付の日本経済新聞朝刊
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 ところで「プリン」という企業──社員わずか12人、年間売
上高が1億円程度のスタートアップですが、ご存じでしょうか。
 実は、この小さな企業の買収をめぐり、グーグルとペイパル・
ホールディングスが争ったのです。ペイパルといえば、米国の個
人間送金で9割超の利用率を誇るガリバーですが、プリンは「送
金機能と掛け合わせたサービスの広がり」を考慮して、グーグル
を選んだといわれています。
 そもそも「プリン」という決済アプリは、どういう機能を持っ
ているのでしょうか。
 「プリン」の特色は、現金のやり取りが全てスマホひとつで完
結する点です。アプリは、アップストアやグーグルプレイから、
スマホにダウンロードできます。注目するべき点は、現金のやり
取りが全てスマホ一つで完結する点です。アプリは、銀行口座と
紐づけておく必要があります。
 送受金はもちろん、銀行口座へ現金を戻せることに加えて、セ
ブン銀行ATMへの出金までが無料(1日1回のみ)ででき、送
金は1円単位でできます。
 このアプリでやれることは次の3つで、いたってシンプルその
ものです。
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          1. お金を送る
          2.お金をもらう
          3. お金を払う
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 「お金を送る」場合を考えます。この場合、お金を送る相手も
プリンのアプリをダウンロードしておくと便利です。「お金を送
る」をタップし、送る相手を選びます。そうすると、チャット画
面に移動しますが、そのまま金額を入力し、「お金を送る」ボタ
ンをタップすれば、それで送金完了です。
 送金されたお金を受け取ることは簡単です。「お金をもらう」
ボタンをタップし、受け取りの申請一覧の金額の部分をタップす
れば、受け取り完了です。
 面白いのは、送金する相手が「プリン」をダウンロードしてい
なくても、次の3つの方法で送ることができます。詳細は省略し
ますが、アプリをダウンロードしておく方が便利です。
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           @  SNS
           A LINE
           BQRコード
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 「お金を払う」ことは簡単です。スマホ決済アプリと同じよう
に、QRコードで支払います。「お店ではらう」をタップすると
QRコード読み取り画面が表示されるので、お店のスタッフから
提示されたQRコードを読み取って支払います。
 注目すべきは、グーグルがどうして「プリン」に目をつけたか
です。これについて、日本経済新聞は、「プリン」と組むメリッ
トについて、次のように述べています。
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 プリンは、17年5月、決済代行事業などを手掛けるメタップ
スとベンチャーキャピタルのWiL(ウイル)に加え、みずほ銀
行も参画した。グーグルが「幅広い事業者向けに展開するプリン
の独自路線を評価した」(関係者)ように、当初から独立系とし
て展開した。日本瓦斯(ニチガス)、伊藤忠商事などが株主に加
わった。連携する銀行口座はメガバンク3行を含む50行以上。
最大手のペイペイも三菱UFJ銀行の口座には対応していない。
 プリンは法人サービスも展開しており、こちらが収益の大半を
占める。ニチガスなど約400社が社員の経費精算や個人事業主
への支払いなどに導入している。銀行振込などで報酬や経費を支
払っていた企業は送信手数料を削減できるほか、「月2回」「週
1回」といった柔軟な支払い方法を取りやすくするのが利点だ。
 グーグルは検索エンジン、電子メール、地図サービスなどを無
料で提供してきた。プリンとは「お金のやり取りにかかるコスト
をゼロに近づけ、多くの人の暮らしを便利にしたいという思いが
合致した」(関係者)
       ──2021年7月28日付の日本経済新聞朝刊
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 2018年のことですが、みずほ銀行は、一度プリン買収に動
いています。しかし、このときは、金額面で折り合えず、断念し
ています。その後、みずほ銀行は、「Jコインペイ」を立ち上げ
ていますが、メガバンクや有力地銀は参加を見送っています。
 日本の伝統的金融機関は、自己の収益基盤を守ろうとするため
どうしても自前主義にこだわり、フィンテック企業との協業がう
まくいっていないのです。
 グーグルは、2018年頃から提携先として50社ほど候補を
上げて、綿密に調査したすえに、プリンとの提携に踏み切ってい
ます。グーグルがはじめるスマホ決済の全容は明らかになってい
ませんが、事業の本格展開は2022年春といわれています。
             ──[デジタル社会論U/066]

≪画像および関連情報≫
 ●グーグルが「プリン(pring)を買収した理由とは?
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   7月13日、グーグルはモバイル金融サービスを提供する
  「pring (プリン)」の全株式を取得するための契約に合意
  したことを発表した。同社には親会社のメタップスをはじめ
  ミロク情報サービス、日本瓦斯(ニチガス)、伊藤忠商事、
  ファミマデジタルワン、SBIインベストメント、みずほ銀
  行、SMBCベンチャーキャピタルなどメガバンクを含む複
  数の資本が入っており、株式譲渡が完了するとみられる8月
  中には実質的にグーグル傘下の企業となる。
   プリンでは買収後も既存のサービスに変更はないと説明し
  ているが、同件の最初に報じた日本経済新聞では「グーグル
  日本で金融本格参入へ/国内スマホ決済買収」のタイトルで
  グーグルがプリンをベースに日本国内における送金・決済サ
  ービスの分野に本格参入することを伝えており、いわゆる、
  「GAFA」などの名称で呼ばれる米IT大手の金融分野で
  の日本進出が本格化しつつあることを予感させる流れになっ
  ている。
   プリンの会社設立は2017年、サービス開始はiOS版
  アプリの登場した2018年3月と、「○○ペイ」などが多
  数リリースされた時期に登場した金融スタートアップの1社
  となる。プリンに関してよく誤解されている1点を挙げれば
  同社が志向しているのは「○○ペイ」が提供しているような
  「QRコード(バーコード)決済サービス」ではなく、「送
  金」を中心とした「シンプルなお金の移動サービス」だ。
                  https://tcrn.ch/3zGGWfk
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プリンで送金する.jpg
プリンで送金する
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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