2021年07月14日

●「システム障害は人的な要因で発生」(第5531号)

 今年の事故当時のみずほ銀行の頭取は藤原弘治氏です。そして
現在も頭取の地位にあります。その藤原頭取は、3月1日に今回
の一連のシステム障害に関して、記者会見を行っています。日本
経済新聞は次のようにそのことを伝えています。
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 みずほ銀行の藤原弘治頭取は3月1日、2月28日に発生した
システム障害で一部のATMが正常に稼働しなかった問題で記者
会見し「ご不便をおかけしたお客様、社会に深くおわびを申し上
げる」と陳謝した。その上で「二度と起こさないという強い決意
のもと、再発防止の徹底に全力を尽くす」と述べた。(中略)
 28日に定期預金の取引に関連するデータ移行作業が45万件
そのほかの取引が25万件あった。取引がたまったことでシステ
ムの一部に負担が生じ、一部のATMが正常に稼動しない事態が
生じた。(システムの)キャパシティーが不十分だったことが今
回のトラブルを引き起こした。   ──2021年3月1日付
        日本経済新聞 https://s.nikkei.com/3yK3sDQ
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 今回のシステム障害を受けて、みずほFGでは、外部メンバー
による「システム障害特別調査委員会」を発足させ、6月15日
に調査報告書を出しているのですが、この報告書提出の数日前、
みずほFGは今回のシステム障害のけじめとしての役員人事を内
定していたのです。それは、みずほ銀行頭取の藤原弘治氏の辞任
と、みずほFG社長の坂井辰史氏の報酬カットというものだった
といわれています。
 しかし、報告書を受けて開かれた記者会見で公表された役員処
分は、まるで違うものになっていたのです。それは、次のような
内容だったといえます。
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 みずほFG社長/坂井辰史 役員報酬月額半額6ヵ月カット
 みずほ銀行頭取/藤原弘治 役員報酬月額半額4ヵ月カット
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 そこに何があったのでしょうか。当初の役員処分案は、すべて
の責任を藤原頭取に押し付けて、この不祥事の幕引きを図ろうと
する魂胆がまる見えの人事だったからです。このような姿勢が何
回もシステム障害を起こす要因になっています。この間の事情に
ついて『選択』/2021年7月号は次のように書いています。
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 なぜ、処分内容が変わったのか、みずほ関係者が打ち明ける。
「当初の人事の報告を受けた金融庁が激怒した」子銀行で起こっ
た事案とはいえ、メガバンクグループなどにかねて「完全親会社
による責任ある経営体制の確立」を求めてきた金融庁からすれば
持株会社トップの責任が銀行トップの責任より軽いという処分の
あり方は「企業統治の観点から言ってあり得ない話」(前出みず
ほ関係者)。仮に藤原が辞めるのならFGトップの坂井も共に辞
任して、責任の所在を明確にすべし、というわけだ。
 事情通によれば、背景には坂井に対する金融庁側の不信感もあ
るという。障害が発生した当初、なかなか記者会見を開こうとせ
ず、藤原に任せ切りにして説明責任を果たそうとしなかったから
だ。坂井は大企業との取引が主力だった旧日本興業銀行出身。同
庁内部では「グループ内で旧興銀勢が幅を利かせる中、リテール
顧客を軽んじた挙句のシステム障害だったのでは」の見方さえ浮
上している。      ──『選択』/2021年7月号より
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 『選択』が掲載する「みずほFG『統治不全』の極限」の記事
をよく読むと、合併してからほとんど20年になるのに、いまだ
に勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の人事の暗闘が続いている
ことがわかります。
 システム障害特別調査委員会の報告書によると、度重なる障害
発生の原因として「人為的な側面に障害発生の要因があった」と
断定し、そのうえで「組織的な動きに欠けていた」「経営陣への
情報共有も遅れた」、「想像力や感度の不足」と厳しく断罪した
うえで、「容易に改善されない体質ないし企業風土」と明記して
いるのです。
 『選択』の記事によると、みずほ銀行頭取の藤原弘治氏は、第
一勧業銀行出身で、みずほFGの中で一定の存在感を示す存在と
して知られています。藤原頭取は、3月1日に今回の障害につい
て記者会見を開いていますが、ITの専門誌「日経クロストレン
ド」の評価によると、藤原氏の記者会見に対して、次のように高
い評価を与えています。
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 システム障害に伴う当事者である企業の記者会見としては、周
到に準備され、記者の質問すべてに回答する時間を確保したこと
は高く評価できる。システムトラブルや不正事件で経営トップが
会見した事例は多いが、かえってイメージダウンとなったケース
も多い。みずほ銀行の場合には、今後システムトラブルによって
会見に臨む経営者には非常に参考になるものと考える。
                  https://bit.ly/3xxhmZC
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 みずほFG社長の坂井辰史氏は、藤原頭取と折り合いが悪く、
システム障害が発生する2週間ほど前の2月19日、みずほFG
は、4月1日付で藤原頭取を交代させる人事を決めていたといわ
れます。そこで障害が起きたので、藤原頭取を引責辞任させよう
として、金融庁からストップがかかったのです。
 なお、みずほFGはグループ会社ごとの縦軸によるガバナンス
のほかに、グループ会社を貫く横軸のガバナンスである「カンパ
ニー制度」を敷いています。そのひとつに「ITシステムグルー
プ」がありますが、そのトップがIT・システム分野に関しては
スブの素人の人事畑の役員が務めています。これではシステム障
害が連続して起きても当然であり、メガバンクとしての責任が大
きく問われます。     ──[デジタル社会論U/059]

≪画像および関連情報≫
 ●みずほ銀行 システム障害で処分発表 藤原頭取は当面続投へ
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   みずほ銀行がATMなどのシステム障害を短期間に4回起
  こした問題で、親会社の「みずほフィナンシャルグループ」
  は、責任を明確にするため、坂井辰史社長の役員報酬の月額
  50%を6か月減額するなど、グループの役員11人の社内
  処分を発表しました。
   みずほ銀行がことし2月末から2週間足らずの間にATM
  などのシステム障害を4回起こした問題で、外部の弁護士な
  どで作る第三者委員会は、一連の障害の原因として危機に対
  応する組織力や顧客目線の弱さなどがあるとする調査報告書
  6月15日、公表しました。
   これを受けて親会社の「みずほフィナンシャルグループ」
  は、15日、責任を明確にするためとして、役員の処分を発
  表しました。
   坂井辰史社長の役員報酬の月額50%を6か月減額するの
  をはじめ、銀行の藤原弘治頭取は、役員報酬の月額50%を
  4か月減額するなど、グループの役員11人を減俸にすると
  しています。
   一方、みずほは、藤原頭取について、当初月内にも辞任す
  る方向で調整していましたが、再発防止策の徹底にはなお時
  間を要するなどとして、当面職務に当たらせることにしまし
  た。この問題で親会社の「みずほフィナンシャルグループ」
  の坂井辰史社長が、15日記者会見し、みずからを含む役員
  11人を報酬減額の処分にしたことを受けて、「たび重なる
  システム障害でお客さま、関係者の皆さまに大変なご迷惑と
  ご心配をおかけした。改めて深くおわびしたい」と陳謝しま
  した。             https://bit.ly/36rmhzx
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みずほ銀行藤原弘治頭取.jpg
みずほ銀行藤原弘治頭取
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする