2021年07月13日

●「みずほ銀行のシステム障害の原因」(第5530号)

 みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)というのは、第
一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の3行が合併してできた銀
行であり、現在は、三菱UFJFG、三井住友FGとともに3メ
ガバンクの一角を占める存在です。その発足は、2002年4月
1日、その発足初日に大規模なシステム障害が発生したのです。
 ときのみずほホールディング(現みずほFG)の社長は、前田
晃伸氏、現在NHK会長を務めています。その前田社長は、国会
に呼ばれたとき、次の発言をして顰蹙を買っています。
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       苦情はあるが、実害は出ていない
    ──前田晃伸みずほホールディング社長
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 大企業のトップは、システムは専門家の仕事であると考えてい
て、自社のシステムに障害が起きても、トップはシステムの知識
はなくても恥ずかしくないと考えているのか、その原因を正確に
理解しようと努力しないものです。そういうトップの怠慢からか
みずほFGは、次のように、ほぼ10年毎にシステムの大障害を
繰り返し起こしているのです。
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      第1回目システム障害/2002年4月
      第2回目システム障害/2011年3月
      第3回目システム障害/2021年2月
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 「実害は出ていない」とはよくいったものです。みずほ銀行の
ユーザーには、とんでもない実害が起きていたのです。ATMが
使えなくなっただけでなく、口座振替の遅れが250万件も発生
し、遅れるだけでなく二重引き落としが3万件も発生するなど、
ユーザーに対して、散々な迷惑をかけたのです。
 第2回目のシステム障害は、東日本大震災が発生した2011
年3月に起きています。勘定系システムの老朽化リスクが、震災
義援金の振り込みをきっかけに露呈したのです。
 そのとき、テレビ局がみずほ銀行に設けていた義援金口座に振
り込みが殺到し、その口座で記録できる取引件数の上限値をオー
バーし、まずはその口座の取引内容を照会できなくなってしまっ
たのです。
 本格的なシステム障害はその日、3月14日の夜に発生してい
ます。義援金口座への振り込み依頼を夜間バッチによって処理し
ようとしたところ、今度はバッチ処理で1つの口座につき処理で
きる件数の上限値をオーバーし、夜間バッチ全体が異常終了して
しまったのです。
 「夜間バッチ」というのは、データ処理を決まった時間やデー
タ量ごとにまとめて実行する処理(バッチ処理)の一種で、通常
業務が行われていない夜間を利用して処理を行うので、そう呼ば
れているのです。
 このため、3月15日の朝までに38万件の振り込みが未処理
となり、夜間バッチとオンラインシステムは、同じメインフレー
ム(ホストコンピュータ)で稼働していたため、夜間バッチの未
完了によってオンラインシステムの稼働に遅れが生じ、15日朝
からATMを使った振り込みができなくなるなど、目に見える障
害が発生し始めたのです。これが原因で翌15日朝までに約38
万件の振り込みが未処理になっています。
 3月17日朝からは全国の約440店での窓口業務と、約16
00カ所のATMがすべて停止するという大規模生涯に発展し、
急遽西堀利頭取による記者会見が行われ、システムの障害の詳細
について、説明が行われています。これだけの大問題になってい
るのに、トップによる記者会見が遅れたのは、原因究明の把握に
時間がかかったものと思われます。
 実はこのとき、今回と同様にATM(現金自動預払機)に通帳
やカードが取り込まれる障害があったのですが、未公表だったの
です。これを踏まえてシステムの仕様を見直しておけば、今年2
月28日に通帳などが取り込まれた5244件のうち9割以上は
防げたといわれます。
 そして、またしてもみずほ銀行は、今年の2月28日、3月3
日、3月7日、3月12日の4回、それぞれ異なるシステム障害
を起こしているのです。それぞれ異なるシステム障害を次に整理
しておきます。
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       2月28日:顧客への影響が甚大
       3月 3日:ハードウェアの障害
       3月 7日:プログラム設計ミス
       3月12日:ハードウェアの障害
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 このように4回もシステム障害が起きているのですが、顧客に
一番影響があったのは2月28日のATM障害です。この日は日
曜日であったことが顧客の迷惑を拡大したのです。この日、みず
ほ銀行のATMの70%以上に当たる4318台が停止し、AT
Mが通帳やキャッシュカードを取り込むトラブルが5244回も
発生したのです。しかし、当日が日曜日であったことから、係員
となかなか連絡がとれず、しかも通帳とカードがATMに取り込
まれているので、ATMの前を離れることができず、顧客は散々
な目にあっているのです。
 みずほFGは、6月15日、2月以降、みずほ銀行のATMで
立て続けに発生したシステム障害について、外部調査の報告書を
発表しています。
 調査委員会では、障害発生時と発生後のシステムの復旧状況や
顧客対応などについて原因を調査し、複数回発生した障害に共通
する原因に、組織間での情報共有が機能しなかった点を指摘して
います。この調査委員会の報告については、明日のEJでも引き
続き、取り上げることにします。
             ──[デジタル社会論U/058]

≪画像および関連情報≫
 ●みずほ銀行、相次いだシステム障害/脆弱性を直視しない
  体質が課題
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   みずほ銀行で相次いだシステム障害について、親会社のみ
  ずほフィナンシャルグループ(FG)の坂井辰史社長は定時
  株主総会で「私の責任のもとに一致団結して対応する」と約
  束した。ただ、過去にもATMでキャッシュカードが取り込
  まれる同様の障害を起こしながら、抜本的対策を取らなかっ
  た経緯が今回明らかになっている。顧客目線の弱さは深刻で
  信頼回復への道のりは平坦(へいたん)ではない。
   株主総会では、昨年も質問に立ちシステム面の弱さを指摘
  したという男性株主が「1年経ってみると、人的手配が不足
  していたように報道されている」と、対策が講じられなかっ
  たことに不満をあらわにした。坂井氏は「指摘をたまわった
  にもかかわらず、障害を起こしたことをおわびしたい」と陳
  謝。今後は現場、本部を問わず組織全体で障害対応力の向上
  を図る姿勢を強調した。
   みずほの第三者委員会が今月まとめた報告書には、システ
  ム障害による通帳やカードの取り込みが、2018年6月に
  1821件、19年12月に187件あったにも関わらず、
  「公表基準に達していない」として発表しなかった事実が盛
  り込まれた。報告書はトラブルをATMの仕様変更につなげ
  られなかった組織について、「顧客への影響に対する感度の
  低さが見て取れる」と指摘。再発防止策を講じていれば、今
  年2月28日の障害で起きた5000件超の取り込みのうち
  9割は防げたと推定する。    https://bit.ly/36pzYyO
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記者会見するみずほフィナンシャル/前田晃伸社長(当時).jpg
記者会見するみずほフィナンシャル/前田晃伸社長(当時)
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | デジタル社会論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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