ックスといえば、リーマン・ショックと深く関係しているからで
す。2006年5月、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、ジョン
・スノー財務長官を事実上更迭し、ヘンリー・ポールソン財務長
官を任命します。ポールマン氏は、1999年から、ゴールドマ
ン・サックスの会長兼最高経営責任者だった人物です。問題は、
スノー財務長官がなぜ更迭されたかです。
スノー長官は、大型減税や年金・医療改革などに関する国民へ
の説明能力が問題視され、1年以上前から辞任の憶測が流れてい
たのです。ところが代わったポールソン財務長官も、2008年
のリーマンショック前後の公的資金投入に対するチグハグな対応
に強い批判が集まったのです。その間の事情について、ウィキペ
ディアは、次のように紹介しています。
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(ポールソン財務長官は)2008年3月のベア・スターンズ
危機の時は救済に動いたが、9月のリーマンブラザーズの危機に
おいては、「公的資金を投入しようと考えたことは一度もない」
とリーマンの救済を拒否。このリーマン破綻をきっかけに世界金
融危機(リーマン・ショック)は起きた。あわてて方針を一転し
金融機関安定化法案を成立させたが、この一貫しない態度が市場
の不信を招き、法案成立も全く効果がなく世界的な株式の大暴落
を招いた。公的資金の投入拒否については、選挙の2ヶ月前とい
う時期で公的資金投入を嫌がる国民を意識した可能性が言われて
いる。フランスのラガルド経済財務雇用相は「何が恐ろしかった
かと言えば、リーマン・ブラザーズを破綻させるというヘンリー
・ポールソンの決断だ」と批判した。
また、景気対策でアメリカ国債増発の必要に迫られ、ポールソ
ンとともに米中戦略経済対話の共同議長を務めていた1990年
代からの旧友の王岐山に大量の引き受けを要請して、中華人民共
和国が日本を上回る世界最大のアメリカ国債保有国となった。
──ウィキペディア https://bit.ly/3hBdzDI
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上記のいきさつでもわかるように、ゴールドマン・サックスは
リーマンショックにおいて、評判が損なわれた面があるのですが
現在、同社はJPモルガンと同様に既存金融機関でありながら、
いち早くDXに取り組み、フィンテックの分野で大きな成果を上
げている企業として知られています。
このような出来事があったことを前提に、現在のゴールドマン
・サックスを分析します。マーケティング戦略を考える際のフレ
ームワークに「3C分析」というのがあります。顧客ニーズや自
社の強みや弱み、競合の動きを分析することによって、最適な意
思決定につなげるためのものです。3Cとは次の3つです。
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@ 自社:Company
A顧客・市場:Customer
B 競合:Competitor
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第1のC──カンパニー(自社)の実績や評判などについて考
えてみます。
リーマン・ショックのマイナス面はあるものの、同社は現在で
も金融の世界では、随一のレピュテーション(評判)と、圧倒的
なブランド力を持っています。人材は、優秀な人材しか採らない
方針を貫いており、ディーリング業務がメインであるため、理数
系、テクノロジー系の優秀な人材が揃っています。
第2のC──カスタマー・マーケット(顧客・市場)について
考えてみます。
いわゆる証券会社には「ディーリング業務」というものがあり
ます。ディーリング業務とは、自社の資金を使って株式、債券、
為替などの取引を行い、リターンを追求する業務のことです。ゴ
ールドマン・サックスの場合、2006年の段階で、純収入にお
けるトレーディング業務の割合は68%を占めていたのです。
しかし、2017年では、それが37%までに落ちています。
それは、当局による相次ぐ規制の強化です。この規制強化によっ
て、それまで企業の屋台骨であったトレーディング業務の収益は
大きく落ちているのです。
しかし、投資銀行部門、すなわち、株式や債券の引き受けや、
M&Aなどのアドバイス業務は拡大しています。ゴールドマン・
サックスでは、これまではトレーディング部門の出身者が経営を
担うのが伝統だったのですが、2018年には、投資銀行部門出
身のデービット・ソロモン氏がCEOに就任しています。
第3のC──コンペティター(競合)についてはどうかについ
て考えてみます。
ゴールドマン・サックスの本来の競合相手はJPモルガンです
が、DXを推進している金融機関の経営者は、これからの真の競
合相手はGAFAであるといいます。ここに、2019年11月
14日付けの日本経済新聞の記事があります。
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【ニューヨーク=宮本岳則】米巨大ハイテク企業「GAFA」と
米金融大手の協業が相次いでいる。13日に明らかになったアル
ファベット傘下のグーグルによる消費者向け銀行口座サービス参
入計画では、米シティグループが管理業務を担う。アップルのク
レジットカード事業もゴールドマン・サックスが裏で支える。
アップルが8月に米国で始めたクレジットカード事業「アップ
ルカード」も同様だ。同社は「サービスをつくり上げたのはアッ
プルで、銀行ではありません」とアピールしているが、カード利
用者の審査や顧客からの問い合わせ対応などは、ゴールドマンが
担う。 ──2019年11月14日付、日本経済新聞
https://s.nikkei.com/3dJ2rDN
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──[デジタル社会論U/053]
≪画像および関連情報≫
●ゴールドマン躍進支えるCEO「超非常識」な素顔
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2020年が始まった頃、デービッド・ソロモンは守勢に
立たされていた。ウォール街で最も話題になり、そして最も
多くの批判を集める投資銀行、ゴールドマン・サックスの最
高経営責任者(CEO)に就任して、ちょうど1年が経過し
た頃だった。ソロモンは前任者たちが長らく避けてきた領域
へと進出し、ビジネスの幅を広げようとしていた。
ところが、消費者に接近を図るソロモンの戦略は株主には
響かなかった。ソロモンの下でゴールドマンはアップルと提
携してクレジットカードを立ち上げたりした。が、1月の投
資家向けイベント後に銀行アナリストのマイク・マヨはこれ
らの試みを「気晴らしとムーンショット(壮大な計画)を足
して割ったようなもの」と呼び、こういった動きを好感して
ゴールドマンの株を買った投資家は1人も知らない、と語っ
た。ソロモンが率いるゴールドマンの方向性に困惑する株主
と同じく従業員にとってもソロモンは謎のリーダーだった。
前任のロイド・ブランクファインは、2008年のリーマン
危機を乗り切った冷静な戦略家と見られていた。一方、余暇
にDJとしてプレイするソロモンは、率直で現実的な反面、
直感的で柔軟な人物という評価が入り乱れていた。そして、
ソロモンがCEOとしての立場を確立しようとしているさな
かに、新型コロナウイルスのパンデミックが発生した。トッ
プに着任して間もなく、自らのリーダーシップが試される最
大の難局に直面したわけだが、これは自らの能力を示す最大
のチャンスでもあった。 https://bit.ly/36aYFyT
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デービッド・ソロモンCEO