LINEペイとは、LINE上で決済したり、送金するサービス
のことです。スタートしたのは2014年12月のことです。こ
のLINEペイを起点にLINEは、資産運用や保険、それにロ
ーンなどの金融事業を総合的に展開してきたのです。
2020年1月23日現在の日本の「○○ペイ」の会員数は次
のようになっています。
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会員数 利用可能店舗数
LINEペイ 3690万人 171万店舗
ペイペイ 2300万人 185万店舗
d払い 2000万人 131万店舗
auペイ 600万人 100万店舗
メルペイ 500万人 175万店舗
楽天ペイ 未公開 300万店舗
https://bit.ly/2U98sTv
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この表で見るように、LINEペイは、他の○○ペイより一歩
先行していますが、そのためには加盟店を増加させるために相当
の積極策を展開したのです。例えば、QRコード決済に限るもの
の、加盟店の導入費用ゼロ、加えて、2018年8月から3年間
(2021年まで)、決済手数料を無料とするなど、かなり思い
切った積極策を展開しているのです。
それにしても「導入費用ゼロ、決済手数料無料」とは相当の積
極策ですが、LINEとしては決済において収益を上げる必要が
ないからできることです。これによってLINEが手に入れたい
のは、そこで得られる決済データであり、これをビッグデータと
して蓄積し、新たな金融サービスとして進化させたいと考えてい
るのです。なお、LINEはZHDと統合することになったので
2020年4月にLINEペイは「ペイペイ」に統合されること
になっています。これによってZHDは、この分野では断トツの
トップに立つことになります。
LINEは証券へも銀行へも保険へも進出をしています。20
18年1月にLINEフィナンシャル株式会社が設立され、野村
證券と組んで、同年6月に、ネット証券「LINE証券」が誕生
しています。なぜ、野村證券がLINEと提携するのかについて
野村證券の森田敏夫社長は次のように述べています。
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野村證券の顧客は、50歳以上が7割。つまり、いわゆる「資
産形成層」と言われる、若年層へのアプローチは、正直、弱いん
です。これは、もう明らかです。
LINEさんには、7600万人の月間アクティブユーザーが
いる。我々が持つ証券口座は531万口座ですから、ざっと15
倍の規模です。そして、LINEさんの場合、逆に50歳未満の
方々が、75%。つまり、「野村が弱い」というところを、しっ
かり押さえている。(中略)LINEさんは逆に、証券業務につ
いては弱いわけです。そこは我々がきちっとお手伝いをする。
──田中道昭著
『アマゾン銀行が誕生する日/2025年の
次世代金融シナリオ』/日経BP
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LINEは、銀行についても、みずほ銀行との共同出資による
「LINE銀行(スマホ銀行)」を2020年に設立予定でした
が、「LINE銀行設立準備会社」への追加投資と経営体制の変
更のため、新体制による2022年度中の新銀行設立を目指す予
定です。これらの計画については、LINEがZHDと経営統合
しても、計画通り実施されることになっています。
ヤフー・ソフトバンク連合によるスマホ決済サービス「ペイペ
イ」についても触れておきます。ペイペイは、LINEペイ、楽
天ペイ、オリガミ(メルカリの子会社であるメルペイに吸収)な
どに続くQRコード決済の後発組としてスタートしたので、その
遅れを取り戻すために次のような積極策をとっています。
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1.加盟店への支払が最短翌日
2. 決済手数料3年間無料
3. 特殊キャンペーン展開
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3番目の特殊キャンペーンとは、「100億円あげちゃうキャ
ンペーン」という名前で評判になり、これによって「ペイペイ」
の名前を覚えた人もいるくらいです。2018年12月4日にこ
のキャンベーンは実施されています。
どういうキャンペーンかというと、ペイペイの利用者に購入金
額の20%相当額を次回以降の買い物に使えるポイントとして還
元するサービスです。ただし、還元額は1人当たり5万円を上限
とするというもの。しかも、40回に1回の割合で、購入額全額
(1回当たり10万円が限度)がポイント還元するというサービ
スが付いています。なお、ソフトバンクのスマホの場合は10回
に1回の確率で、全額ポイント還元するサービスです。
このキャンペーンは大評判になり、ポイントの還元額が12月
13日には100億円相当に達したのです。たったの10日間で
100億円が消費されたことになります。わずか10日間で、ペ
イペイの会員は190万人に達したのです。
2018年10月16日、LINEは、損保ジャパン日本興亜
との提携によって「LINE保険」を立ち上げています。スマホ
から加入でき、保険料は100円から加入できるのです。販売開
始から約半年間で、公式アカウント登録ユーザー数891万人、
サービス登録ユーザー数37万2000人、契約件数17万件を
突破しています。LINEのフィンテック事業の概要について述
べてきましたが、おそらくLINEという企業のイメージが、変
わったと思います。 ──[デジタル社会論U/049]
≪画像および関連情報≫
●ヤフーとLINEの経営統合、成功のカギ握る
フィンテック事業
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インターネット広告収入については、経営統合によって、
シェアの向上が期待される。2018年の国内インターネッ
ト広告市場では、ヤフーが22%、LINEが8%。経営統
合後は1社で3割を占め、広告主に対してはより大きな交渉
力を持つはずだ。
eコマースについて、ZHDはこれまで「ヤフー!ショッ
ピング」や「ヤフオク!」に力を入れてきたが、ZOZOの
株式を50・1%保有し子会社化する(2019年11月に
買収完了)とともに、ヤフー!ショッピングの上位版ともい
える「ペイペイモール」を2019年10月に開設するなど
積極展開している。ZHDが提供するそうしたeコマース事
業へ、LINEの月間利用者8200万人から送客ができれ
ば成長率の増大が期待できるのは確かだろう。
統合シナジーには「(4)新規事業/システム開発のおけ
るシナジー」もあげられている。これについては、ZHD、
LINEそれぞれの人材やシステム基盤を有効活用すること
で、統合効果を出すことができるだろう。そうなると、今回
の経営統合における最大の焦点は、成長率は大きいものの、
収益化に時間がかかりそうな「(3)フィンテック事業にお
けるシナジー」をどう生み出すかにかかってくる。
https://bit.ly/3w3jDdA
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LINEのフィンテック