2021年06月28日

●「LINEは和製テンセントである」(第5519号)

 LINEは、日本において8400万人のユーザーを持つ日本
におけるSNSの王者であり、プラットフォーマーです。規模は
違うものの、「LINEは日本のテンセントである」ということ
もできます。LINEの経営陣が、中国のテンセントをベンチマ
ークにしていることは確かです。
 LINEについては、本テーマの前編で、2月24日のEJ第
5434号から2月26日のEJ第5436号で取り上げて書い
ています。2019年11月18日に、LINEがヤフー!ジャ
パンを子会社に持つZホールディングス(ZHD)と経営統合す
るための基本合意に達したことを発表したからです。
 今やLINEは、政府機関や、学校教育に使われるなど、利用
者にとっては他に選択肢がないほど、国民的なアプリとなってお
り、ZHDとの統合によって、日本の社会インフラになりつつあ
ることが期待されたのです。
 ところがその経営統合の作業中の今年の1月下旬のことですが
関係者の指摘により、LINEの個人情報の扱い方に問題がある
とされたのです。ZHDは外部有識者による特別委員会を設置し
2ヵ月以上にわたる議論を経て、6月11日に第1次報告書を公
表しています。この特別委員会の座長を務める東京大学大学院法
学政治学研究科・宍戸常寿教授は、LINEについて次のように
述べています。
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 中国で国家情報法が制定されたさいに、LINEの開発や業務
委託の体制に及ぼす影響を問題視する声が社内であがらなかった
ことが問題である。    ──東京大学大学院・宍戸常寿教授
              ──週刊東洋経済/6月26日号
─────────────────────────────
 宍戸常寿教授が厳しく指摘しているのは、LINEが2016
年から中国・大連の関連会社や現地の業務委託先に対して、一部
の業務システムやサービスの開発およびコンテンツの監視体制を
任せることにした時期が中国において国家情報法が議論されてい
た時期と重なっていたからです。中国の国家情報法とは、「国の
情報活動を強化・保障し、国の安全と利益を守ることを目的とす
る」法律ですが、問題なのは、第7条にあります。
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◎国家情報法第7条
 いかなる組織及び個人も、法律に従って国家の情報活動に協力
し、国の情報活動の秘密を守らなければならない。国は、そのよ
うな国民、組織を保護する。
─────────────────────────────
 つまり、中国政府が必要であると判断すれば、中国企業は自社
の有している情報を必要に応じて差し出さなければならないこと
になります。中国の通信機器大手のファーウェイは、この法律に
よって世界中から締め出されつつあります。
 同様に、今や巨大なパワーを持つ中国が、LINEの有する日
本の個人情報をすべて把握することができることになります。こ
れは、恐ろしい事態です。
 LINEはどういう企業なのでしょうか。
 LINEは、2000年9月、韓国企業のネイバーの100%
出資によって創業された韓国系の企業です。ネイバーとは、どう
いう企業でしょうか。
 ネイバーは、韓国最大手の広告やコンテンツサービス、ビジネ
スプラットフォームなどを含む総合ネットサービス企業です。し
たがって、LINEの売り上げの約3割は、タイ、台湾、インド
ネシアなど、海外事業によるものです。
 現在のLINEについて、田中道昭氏はその売上構成から次の
ように紹介しています。
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 現在のLINEは広告事業をコアとする会社です。2017年
度決算においては、総売上1671億円のうち765億円が広告
収入です。LINE公式アカウント、LINEスポンサードスタ
ンプ、LINEポイント、LINE@、タイムライン広告、また
ポータル広告としてのNAVERまとめなどが、ここに含まれま
す。前年比を見ても39・9%の増加です。フェイスブックや、
グーグルはど極端ではありませんが、広告収入が大きなウエイト
を占め、その成長が総売上を押し上げている構図を見て取ること
ができます。
 その一方で、コミュニケーション事業及びコンテンツ事業は、
成長が鈍化、あるいは下落基調にあります。(中略)コンテンツ
事業は、ゲームやマンガ、ミュージック、占いなどです。こちら
は同0・81倍と減少傾向です。惜しむらくは、コンテンツ自体
の平均寿命の短さです。           ──田中道昭著
         『アマゾン銀行が誕生する日/2025年の
              次世代金融シナリオ』/日経BP
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 ECサイトがメインのアマゾンとコミュニケーションプラット
フォームがメインのテンセント──この構図は楽天とLINEに
もそのまま当てはまります。日本において、8400万人のアク
ティブユーザーを持つLINEの強みは、家族、友人、知人から
の連絡を受けたり、逆にこちらから連絡をとったりするたびにア
プリを開くことにあります。
 アプリを開いてくれれば、広告をはじめとする他の事業に大き
なプラスの影響を与えることができるのです。その点、ECサイ
トは、何かを買いたいときにしかサイトを訪れないものです。こ
の差はとても大きいといえます。
 現在、LINEのコミュニケーション、コンテンツ事業は成長
が鈍化し、下降傾向にあります。国内は飽和状態に達しつつあり
海外の会員数も伸び悩んでいるからです。問題は、その他事業の
成長です。これについては明日のEJでご紹介します。
             ──[デジタル社会論U/047]

≪画像および関連情報≫
 ●LINEの個人情報問題に政府が敏感に反応した理由──
  「行政のデジタル化」遅れの懸念も
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   LINEユーザーの個人情報が、同社の委託先の中国企業
  でアクセスできる状態にあったことが判明した。それを受け
  て、総務省がLINEを活用した行政サービスを停止すると
  公表するなど大きな影響が出ているようだ。この一連の動き
  は、LINEの利用者と日本の行政サービス、そして、LI
  NEを含む新Zホールディングスの戦略にどのような影響を
  もたらすだろうか。
   2021年3月1日、旧Zホールディングスとの経営統合
  を発表したメッセンジャーアプリ大手のLINEだが、同社
  を巡って大きな問題が起きている。発端となったのは、3月
  17日、複数のメディアでLINEの国内利用者の個人情報
  管理に不備があると報じられたことだ。
   さらに、そのリリース内容を見ると、LINEのIDや電
  話番号、メールアドレス、位置情報などは日本のデータセン
  ターで管理し、画像や動画、LINEペイの取引情報(本人
  確認に必要な情報を除く)などは、親会社の1つとなるネイ
  バーの本拠地でもある韓国のデータセンターで管理している
  ことを明かした。しかし、同社は日本と韓国以外にも拠点を
  持っており、中国でもいくつかの拠点で開発やモニタリング
  などの業務をしているという。  https://bit.ly/3xPqDMg
  ───────────────────────────
LINE出澤剛代表取締役.jpg
LINE出澤剛代表取締役
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする