す。田中道昭氏は、これを前提として、テンセントの金融事業に
ついて、次のように述べています。
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アントフィナンシャルの金融商品が「ユエバオ」ならばテンセ
ントは「零銭通」、アリババのオンライン銀行が「マイバンク」
ならばテンセントは「ウイーバンク(WeBank)」、アリババの保
険サービスが、「相互保」ならば、テンセントは「ウイーシュア
(WeSure/微保)」、アリババの信用スコアが「ジーマクレジッ
ト」ならばテンセントは「テンセントクレジット(騰訊信用)」
です。 ──田中道昭著
『アマゾン銀行が誕生する日/2025年の
次世代金融シナリオ』/日経BP
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これによると、テンセントの金融事業は、アリババのそれをト
レースするようにすべてをカバーしています。最新のシェアを調
べると、次のようになっています。アリペイとウィーチャットペ
イの2つで92・53%を占めています。
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アリペイ ・・・・ 53・71%
ウィーチャットペイ ・・・・ 38・82%
その他 ・・・・ 7・47%
──2018年第3四半期現在
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アリババの決済手段「アリペイ」を、もう少していねいに見る
ことにします。アリペイを使うにあたっては、スマホに「アリペ
イアプリ」をインストールし、銀行口座との連携を設定するだけ
です。こうしておくと、ありとあらゆるものがアリペイで決済で
きるようになります。アリペイ決済を扱う事業者の手数料は低額
であり、ユーザーにとっても、事業者にとっても、メリットのあ
る魅力的なツールといえます。
アリペイアプリの画面を見ると、次のような機能が備わってい
ることがわかりです。
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@スキャン ・・・・・ QRコード決済
Aペイ ・・・・・・・ QRコード決済
Bコレクト ・・・・・・・ 割り勘機能
Cポケット ・・・・・・・ 割引や優待
Dトランスファー ・・・・・ 送金機能
Eトップアップ ・・・・ チャージ機能
Fユエバオ ・・・・・・・・ 小額投資
Gジーマクレジット 信用スコアリング
Hマイバンク ・・・・・・・ 小口融資
Iインシュアランス ・・ 保険サービス
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アリペイにしてもウィーチャットペイにしても、その他、ペイ
ペイやLINEペイなどのいわゆるキャッシュレス決済の基本は
アプリに現金を貯めるということになります。もう少し正確にい
うと、アプリのなかには「ウォレット(財布)」という機能があ
り、そこにお金をチャージしておくのです。
もちろん銀行口座に紐づけておけば、ウォレットにお金が不足
すると、自動的にチャージされますが、銀行口座を持っていなく
ても使えるのです。指定の場所(日本の場合はコンビニ)に用意
されているATMに現金でチャージすればいいのです。いわゆる
「○○ペイ」といわれるものはすべてこの仕組みです。
この仕組みによると、ウォレットには大小はあってもお金がス
トックされることになります。そのお金を銀行の金利よりも高く
運用しようというのが少額投資商品です。
アリペイの「ユエバオ(余額宝)」は、MMFです。MMFは
「マネー・マネジメント・ファンド」の略であり、その主要な投
資対象は国債など国内外の公社債や譲渡性預金(CD)、コマー
シャル・ペーパーなどの短期金融資産とするオープン型の公社債
投資信託のことです。
MMFとしてのユエバオの特徴について、田中道昭氏は次のよ
うに述べています。
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MMFとしてのユエバオの特徴は、最低1人民元から投資でき
ること、銀行預金よりも高い金利で運用できること、アリペイ決
済にユエバオ口座を利用できること、即日引き出しが可能で解約
ペナルティもないことなどです。つまり流動性が高く、利便性に
優れた金融商品だと言えます。
ユエバオは2017年第3四半期時点の預かり資産残高が1兆
5600億人民元(約25兆4000億円)に達し、中国のMM
F全体の23%以上を占めていると言われています。
──田中道昭著/日経BPの前掲書より
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テンセントにも、ユエバオに似た「零銭通」というサービスが
あります。2018年11月にサービスが開始された流動性の高
い小額投資商品です。その発想は、ウィーチャットペイの残高に
金利を付けるという考え方に立っています。資金を寝かしておく
のは、もったいないという考え方です。
仕組みは、銀行口座とウィーチャットの「ウォレット」から零
銭通口座へ入金し、資産運用することができます。この口座はQ
Rコード決済や送金に使うことができます。テンセントは、零銭
通の利回り、預入限度額、取引限度額などにおいて、ユエバオよ
りも有利な条件をつけているといわれます。
零銭通は、ユエバオと同様に、ウィーチャットペイのウォレッ
トに滞留する資金を有効活用する手段としての意味合いがありま
す。現在、テンセントは、物凄い勢いで、アリババを急追してい
ます。 ──[デジタル社会論U/045]
≪画像および関連情報≫
●モバイル決済ツール「ウィーチャットペイ」に定期預金機能
が追加「アリペイ」に対抗
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2019年10月中旬、微信支付(ウィーチャットペイ)
の「銭包(ウォレット)」メニュー内に、新たに「銀行儲蓄
(銀行預金)」機能が追加された。同機能は現時点ではA/
Bテスト段階にあり、一部ユーザーのみに開放されている。
この銀行預金機能は銀行がウィーチャットに提供する定期預
金商品であり、ユーザーはウィーチャットペイの中で当該銀
行の預金口座を直接開設でき、銀行窓口や銀行アプリでの手
続きも必要としない。テスト画面から見るに、同機能の提携
銀行は現時点で中国工商銀行(ICBC)のみとなっており
同行の既存の預金商品と同様、最短預入期間は7日で、3年
定期では年利3・85%に上っている。
現在、ウィーチャットペイの定期預金機能における口座開
設、預入・引出手数料などの費用は一切かからない。ここ1
年で、ウィーチャットペイでは、さまざまな機能変更が実施
されている。昨年11月中旬には「零銭通」機能が正式にリ
リースされた。ユーザーは零銭通にお金を預け入れると同時
に、これを自由に使うことができ、同時に2・383%の年
利も付くというものだ。続いて今年9月には、「微信支付分
(ウィーチャットペイポイント)」機能が正式に運用開始と
なった。ユーザーは個人の実名登録と消費履歴などによりポ
イントをためることができ、ポイントの多寡に応じてシェア
デバイスを保証金なしで借りたり、保証金なしでホテルを予
約できたりといったサービスが受けられる。
https://bit.ly/3iX3AuQ
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ウィーチャット