2021年06月23日

●「楽天テンセントから出資受け入れ」(第5516号)

 今日のEJは、昨日のEJの≪画像および関連情報≫で取り上
げた「政府も身構える『テンセント・リスク』楽天への出資案が
飛び火」関連の情報について書くことにします。いったい、いま
楽天に、何が起きているのでしょうか。
 2021年4月21日の産経新聞電子版は、この件について次
のように報道しています。
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 楽天グループが中国IT大手の騰訊控股(テンセント)子会社
から出資を受けたことに日本政府が警戒を強めている。顧客情報
などがテンセントを通じて中国当局に流出する懸念が拭えないた
めで、政府は外国人投資家による日本企業への出資規制を定めた
「外為法」に基づき、楽天を監視する考えだ。楽天は米国でも事
業を行っていることから、日本と同様に中国への警戒が高まって
いる米当局にも情報提供を行う。
 問題となっている出資は今年3月、楽天と日本郵政が資本業務
提携を発表した際に明らかにされた。楽天が第三者割当増資を行
う形で日本郵政から1499億円の出資を受けるのに合わせ、テ
ンセントの子会社からも、657億円の出資を受けるというもの
だった。この出資によりテンセントの子会社は楽天株の3・65
%を保有する大株主となった。  ──2021年4月21日付
          産経新聞電子版 https://bit.ly/2TMy8VQ
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 今年の3月12日のことです。楽天は、日本郵政や米ウォルマ
ートなどから総額で2423億円を調達する第三者割当増資を受
けています。このとき、中国のテンセントグループからも657
億円の出資を受けることになっていたのですが、テンセントにつ
いてはなぜか12日には払い込まれることはなかったのです。し
かし、4月1日になって、テンセントから払い込みが行われてい
ます。この遅れの原因は何なのでしょうか。
 この事情について、ある新聞社のデスクは、次のように説明し
ています。
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 実は、この払い込みの遅延には外国為替及び外国貿易法(外為
法)が絡んでいます。経済産業省が中心になって政府は2019
年末に外為法を改正しました。このとき、海外企業が指定業種の
企業に1%以上の出資をする場合、届出を行うことを義務付けた
のです。その指定業種というのは、「国の安全を損なうおそれが
大きい」業種などで、武器製造や原子力、電力、通信などが対象
です。楽天は携帯電話事業も手掛けていますから、この業種に該
当します。その届出を出すのか出さないのかでもめたようです。
        ──「デイリー新潮」https://bit.ly/3gN0ecF
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 外為法改正の要求は米トランプ政権からの要請です。米中貿易
戦争が激化し、当時のトランプ大統領は米国内から中国企業を締
め出そうとしていたのです。その中国の企業のなかには、アリバ
バやテンセントが入っています。そして、日本に対してもストレ
ートではないものの、同調するよう求めてきたのです。
 楽天の三木谷浩史社長は、「テンセントとは単なる業務提携」
とはいうものの、実際には携帯電話基地局の建設資金が、日本郵
政や米ウォルマートなどからの2423億円では足らず、日頃か
ら親しいテンセントのポニー・マーCEOに頼み込んで、657
億円の出資を引き受けてもらったのです。この間の事情について
細川昌彦明星大学経営学部教授は次のように述べています。
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 やはり出資元がテンセントというのが大きい。同社は米国政府
がアリババ集団とともに、米国民からの投資禁止を検討した企業
だ。メッセージアプリの微信(ウィーチャット)などを通じて、
米国内のユーザーデータが中国政府に流出する可能性を懸念して
使用禁止の大統領令まで出している。トランプ政権の手法はとも
かく、こうした懸念はバイデン政権でも払拭されていない。米政
権に個人情報の扱いで懸念あり、と名指しされた企業が、通信や
金融など個人情報やデータを握る楽天に出資する。ここを問題視
したのではないだろうか。
 しかも日米の法律では、規制当局の間で情報交換する規定もあ
ることから、この件も当然ワシントンとも既に連絡を取り合って
いるだろう。事前届け出がなければ規制当局は詳細な内容も把握
できず、米国に情報提供することもできない。日本の規制は甘い
と、米国から批判されないようにしたいだろう。
                  https://bit.ly/2UljC7J
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 実はタイミングも悪かったのです。楽天がテンセントからも出
資を受けると発表した直後の3月17日、LINEが業務委託し
ている中国の関連会社から個人情報が流出していた事実が明らか
になったからです。
 しかし、テンセントからの出資金は既に払い込まれているので
外為法では事実上何もできないのです。米国はインテリジェンス
(諜報)機能があるので、調べることは可能であり、もし問題が
発覚すれば、取引後であっても、さかのぼって取引を無効にでき
る強力な権限を持つのです。細川教授は楽天の今後に関し、次の
ように述べています。
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 これまで楽天は、米国では一応信頼できるプレーヤーとして、
5G絡みのプロジェクトにも参画できていた。今後、楽天は米国
との関係で大変なリスクをいつまでも背負うことになってしまっ
た。米国の怖さを考えて、虎の尾を踏まないようにしなければい
けない。ただ、テンセントの出資を受け入れるに当たって、こう
した米国事業に伴うリスクを楽天がどこまで理解していたかはわ
からない。        ──細川昌彦明星大学経営学部教授
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             ──[デジタル社会論U/044]

≪画像および関連情報≫
 ●楽天「中国市場参入」は幻に、テンセントの出資で
  “外為法の抜け穴”が露呈
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   「日米首脳会談の直前のタイミングで中国の資本を受け入
  れるなんて、普通の経営者ならやらないと思います」
   ある日本政府関係者は、中国のテンセント(騰訊控股)か
  ら出資を受けた楽天を強い言葉で非難した。名指しこそ避け
  ているが、三木谷浩史会長兼社長に対する批判も辛らつだ。
   楽天は3月12日に日本郵政、テンセント子会社、米ウォ
  ルマート、三木谷氏の親族名義の会社から合計2423億円
  を調達すると発表。このうちテンセントによる出資は、3月
  末に完了し、657億円、出資比率3・65%が払い込まれ
  た。楽天の発表直後から、トランプ前大統領の厳しい対中路
  線を継続するバイデン米政権の懸念が、国家安全保障局(N
  SS)をはじめとする日本政府の関係部局に伝えられたとい
  う。4月16日の日米首脳会談に前後して、政府内部の楽天
  への警戒感が一気に高まったというわけだ。
   そもそも政府は2020年5月の改正外為法の施行で、安
  全保障上の観点から重要な日本企業への外国人投資家の株式
  取得を厳格化したはず。だが、「純投資」を主張するテンセ
  ントは、いとも簡単に外為法の事前規制をすり抜けた。冒頭
  の政府関係者の衝撃は大きく、楽天に対する監視を慌てて強
  めている。だが、外為法には「監視」という規定はなく、事
  後の監視の手立ては限られるのが実態。政府内部のいら立ち
  は募るばかりだ。        https://bit.ly/3qpfxvj
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三木谷浩史「楽天」会長兼社長.jpg
三木谷浩史「楽天」会長兼社長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | デジタル社会論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする