2021年06月17日

●「アリババのバックヤードを支える」(第5512号)

 アリババのバックヤードを支えるアントフィナンシャル傘下企
業の一覧を再現します。@についての解説は終了しています。
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   @アリペイ ・・・・・・・・・      決済
 → Aアントフォーチュン ・・・・  資産運用管理
 → Bジーマクレジット ・・・・・    芝麻信用
 → Cマイバンク ・・・・・・・・ オンライン銀行
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 第2は「アントフォーチュン」です。
 アントフォーチュンとは2015年8月に設立された株式ファ
ンド、ゴールド、定期などのユーザーの資産をワンストップで運
用管理するサービスのことです。代表的商品としては「ユエバオ
(余額宝)」というのがあります。ユエバオは、アントフィナン
シャルが出資する天弘基金によって運用されています。
 ユエバオは、アリペイに電子マネーをチャージすることで、最
大7%もの金利が付く投資信託商品です。従来の金融商品のよう
に預け入れの年数に縛りがなく、銀行預金のようにいつでも引き
出すことができるため、きわめて自由度が高いのです。
 アリババにおいてユエバオは、アリペイ口座に滞留する資金を
有効活用する手段として位置づけられており、これによるアリペ
イ決済を促進させ、アリババのプラットフォームの強化に寄与す
るものです。しかし、2017年からは、当局による規制や監視
が強化されつつあります。
 中国人の老後観を知る調査があります。海外資産運用会社フィ
デリティ・インターナショナルとアント・フォーチュンが、20
18年に共同で実施した調査「中国老後見通し調査報告」による
と、調査対象となったアント・フォーチュンの利用者2万844
0人のうち、18〜34歳の若者が75%を占めていますが、中
国の若者は役職定年を57歳前後に定め、定年後の生活を楽観視
し、憧れてもいる傾向があります。ただ44%だけは、老後のた
めに貯金し、その額は月平均で1339元(1元=約16円)前
後だといいます。
 アントフォーチュンには、ユエバオとあわせて注目されている
サードパーティ金融機関向けのマーケットプレイス「財富号」と
いうものがあります。これについては、田中道昭氏の解説を引用
します。
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 アントフォーチュンのユーザーは財富号を通して、アントフィ
ナンシャルの金融商品だけでなく、サードパーティが提供する保
険や定期預金などの金融商品も購入することができます。サード
パーティの金融機関にとっては販売チャネルの拡大や販促費用節
減というメリットがあります。一方、アリババやアントフィナン
シャルにとっては、品揃えの充実でユーザーの選択肢を増やし、
利便性を向上させられるメリットがあります。
 こうなると、アリババのプラットフォームにサードパーティが
集まってくるのも必然です。結果、ユーザーは増え、商流・金流
・物流からのビッグデータが蓄積され、それを活用してのプラッ
トフォームの強化といった相乗効果が生まれていきます。
                      ──田中道昭著
         『アマゾン銀行が誕生する日/2025年の
              次世代金融シナリオ』/日経BP
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 第3は「ジーマクレジット(芝麻信用)」です。
 「ジーマクレジット」とは、アリババや、アントフィナンシャ
ルが蓄積してきた個人や中小企業のビッグデータをAI・クラウ
ドコンピューティングによって解析し、個人や企業の信用力をス
コア化するものです。これについては、中国に関する他のテーマ
について書いたとき、既にご紹介しており、その概要は「ワイア
ード」の解説から引用します。
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 芝麻信用のスコアは最低が350点、最高が950点で、点数
が高ければ低金利でローンを組めたり、賃貸物件の契約で敷金が
不要になったりといった特典がある。またレンタルサーヴィスを
利用する際にデポジットを払わなくてもいいなど、恩恵はさまざ
まな分野に及ぶ。
 芝麻信用は中国では非常に人気が高いが、こうした民間企業の
提供するクレジットスコアサーヴィスと、政府の準備する社会信
用システムとの境界は曖昧になっている。例えば、中国の裁判所
はアリババと協力していることが明らかになっている。裁判所が
科した罰金の滞納者の情報をアリババと共有することで、該当者
は芝麻信用でのスコアが下がるという仕組みだ。
                  https://bit.ly/3gA9cs6
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 第4は「マイバンク(網商銀行)」です。
 「マイバンク」は、2015年6月にオンライン銀行として設
立されています。Tモールやタオバオなど、アリババのECサイ
トを活用する中小企業や個人向けのリテール・小口融資を事業の
柱としています。
 「網商貸」と名付けられた小規模企業、個人事業者向けの融資
サービスはとてもスピーディーに処理が行われます。スマホから
融資申請を提出すると、即座にコンピューターで融資判断を下し
数分以内に送金されるという仕組みになっています。
 アントフィナンシャルは、この超高速融資システムを「3・1
・0」という言葉で説明しています。融資申請の記入に必要な時
間は約「3」分。提出すると「1」秒でシステムが融資可否を判
断。そして審査にたずさわる人間は「0」。AIによる審査のみ
で判断を下しています。2018年6月時点において、マイバン
クを利用する中小企業は1042万社、融資額累計は1兆880
0億人民元とされています。マイバンクもアリペイアプリからア
クセスできます。     ──[デジタル社会論U/040]

≪画像および関連情報≫
 ●審査に1秒!中国「超高速融資」の恐るべき実力
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   網商貸の利用者は、ネットショップ、飲食店、野菜市場の
  店主個人事業主のトラック運転手などさまざまだ。網商銀行
  成立後は、ネットショップ経営者以外にも融資対象を拡大し
  た。肉まんを売る屋台のような超零細事業者でも融資を受け
  られる点が売りだ。2015年以来、350万社に融資して
  きた。前身も含めると600万社に達する。「客がアリペイ
  を利用して肉まんを買えば、我々は顧客数を把握できます。
  商品単価が安くて売り上げが少なくともかまいません。固定
  客がいれば融資は可能です。また屋台の経営者は電気代や水
  道代といった公共料金をアリペイで支払えば、それもまた融
  資判断の材料になります。他にもシェアサイクルの利用時に
  違反行為はなかったかなどのさまざまなビッグデータが活用
  されています」
   平均の融資額は、1件あたり1万7000元(約28万6
  000円)。まさにマイクロクレジット(銀行から融資を受
  けられない、零細事業者向けの小額融資)である。劉氏は次
  のように説明する。
   「顧客の多くはネットショップや商店、レストラン、運転
  手など。最近ではネットショップをやっていない、オフライ
  ン事業のみの顧客も増えています。野菜市場のおばさんも融
  資を受けてますよ(笑)。小規模企業や個人事業者の資金需
  要は一般企業とは異なります。一般企業は運転資金をプール
  していますが、私たちの顧客は必要があって初めて融資を申
  請するのです。         https://bit.ly/3cDnbfE
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中国「マイバンク」.jpg
中国「マイバンク」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(2) | デジタル社会論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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