事業です。それに「フーマ」などのスーパーをはじめとするロー
カルサービス事業、デジタルメディア&エンターテインメント事
業がフロントヤードの事業とすると、クラウドコンピューティン
グ事業、マーケティングサービス事業、ロジスティクス事業、決
済&フィナンシャルサービス事業は、それらを支えるバックヤー
ド事業ということになります。そのなかで、最も注目すべきなの
は、アントフィナンシャルです。
もともと2004年にアリババの連結子会社として、「アリペ
イ」が設立されたのです。しかし、アリババはソフトバンクなど
の外国資本を多く受け入れており、中国人民銀行(中央銀行)に
よる外資規制の関係で難しい問題が起きるのです。
アリババは2011年にアリペイの株を売却し、アリババの連
結を外し、そのうえでアリババの創業者のジャック・マー氏は、
個人で中国内資会社を設立します。「内資」とは「外資」に対応
する言葉です。そして2014年10月に、その会社名を「アン
トフィナンシャル」に変更して、現在に至っています。
アリペイは、2011年5月、中国人民銀行から事業ライセン
ス「支払業務許可証」を取得しています。これは、「非金融機関
支払いサービス管理弁法」に基づいています。そうすると、アリ
ペイとアントフィナンシャルの関係はどうなるのでしょうか。こ
れについて、田中道昭氏は次のように説明しています。
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アリババは、2011年のアントフィナンシャル設立以降、直
接的には同社の株主ではなく、2014年合意に基づいてアント
フィナンシャルから支払金利前税引前利益(EBIT)の37・
5%のプロフィットシェアなどを受けるというスキームを取って
いました。しかし、2018年2月、アリババは新株発行を引き
受けるかたちでアントフィナンシャルの株式33%を取得するこ
と、あわせてプロフィットシェアなど従来のスキームを終了する
ことを発表しました。こうしてアントフィナンシャルは、文字通
り、アリババグループの金融事業を担う子会社(非連結)になる
のです。 ──田中道昭著
『アマゾン銀行が誕生する日/2025年の
次世代金融シナリオ』/日経BP
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いわゆるGAFAのような中国を含むプラットフォーマーのこ
とを「ディスラプター」といいますが、これは、破壊的イノベー
ターという意味です。これについて、大前研一氏は「アント・フ
ィナンシャルこそ破壊的イノベーターである」として、自著にお
いて、次のように述べています。
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アント・フィナンシャルが日本で銀行をひとつ買収したら、他
の銀行はその翌日にもつぶれてしまうだろう。アント・フィナン
シャルはMMF(投資信託)で4・2%の運用益を出している。
これだけの成績を出せる金融機関は、残念ながら日本にはない。
では、そのようなデイスラプターの脅威に対抗し生き残るため
に、日本企業は今から何を行えばいいのか。それには、人材を育
成し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるしか
ない。 ──大前研一著『大前研一DX革命』
プレジテント社
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中国のデジタル事情については、2019年5月からの「中国
経済の真実」でも取り上げており、重複するので、要点を絞って
述べることにしたいと思います。
アント・フィナンシャルは、その傘下に、主として次の4つを
持っています。
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@アリペイ ・・・・・・・・・ 決済
Aアントフォーチュン ・・・・ 資産運用管理
Bジーマクレジット ・・・・・ 芝麻信用
Cマイバンク ・・・・・・・・ オンライン銀行
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第1は「アリペイ」です。
アリペイは、「Tモール」や「タオバオ」といったアリババの
ECサイトや、スーパーマーケットの「フーマ」などのニューリ
テール店舗やECサイトでのショッピングをはじめ、ありとあら
ゆるサービスシーンで利用できる決済システムとして、中国中を
席巻しています。
決済にはスマホによる「QRコード決済」が使われます。QR
コード決済には、ユーザーが自分のアプリ画面に表示されるQR
コードを店側に読み取ってもらう決済方法と、ユーザーが店側の
表示するQRコードをアプリ画面のスキャン機能を使って読み取
る決済方法の2つがあります。
アリペイ決済には、取引の安全性を保証する「エスクローサー
ビス」というものが用意されています。物品などを売買するさい
の取引の安全性を保証する仲介サービスのことです。
ECサイト取引で、商品を購入するユーザーがアリペイ決済で
代金を支払う場合、その代金はいったんアリペイにプールされま
す。そしてアリペイは、ユーザーが代金を支払ったことを販売者
に報告します。
販売者はその報告にしたがい、商品をユーザーに送付します。
商品を受け取ったユーザーは、商品に問題がなければ、アリペイ
にその旨報告し、その結果、プールされていた代金が販売者に支
払われます。もし、商品に問題があるときはアリペイがユーザー
と販売者間のトラブル解決を仲介し、問題を解決させます。不正
や偽造の多い中国でのネット通販において、アリババのECが、
とくに飛躍的に伸びた背景には、このエスクローサーサービスの
存在がきわめて大きいのです。
──[デジタル社会論U/039]
≪画像および関連情報≫
●中国巨大eコマース企業、アリババが世界に台頭できた理
由とは
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1999年、アリババ集団は中国浙江省杭州市で設立され
た。主なサービスは、B2Bオンラインマーケットプレイス
「アリババ・コム」や、中国国内個人向けECサイト、「天
猫(Tモール)」、中国消費者向けオンライン決済サービス
「アリペイ(支付宝)」などだ。現在は中国国内のみならず
グローバルに展開を行っている。アリペイの全世界のユーザ
ー数は10億人を超え、全体の売上高は6兆円に迫るなど、
その影響の大きさがうかがえる。また、その創業者であり元
CEOであるジャック・マー氏によるビジネスモデルや経営
手腕にも注目が集まり、中国の起業家で初めて、「フォーブ
ス」に掲載されるなど話題となっている。
中国の電子商取引最大手、アリババ集団が米ニューヨーク
証券取引所(NYSE)に上場した。史上最大の約2兆70
00億円を調達した。中国市場での流通総額は2960億ド
ル(約32兆2000億円)とその存在感は圧倒的だが、中
国で見せつける強さが、世界で通用するのか疑問の声も上が
る。これまでは政府の規制に守られてきたが、今後は世界で
の競争力を求められる。
アリババの総取引額がウォルマートの売上高(2015年
12月期は約4856億ドル=約54兆円)を抜き、世界一
の“流通企業”となる日が近づいている。
https://bit.ly/3vm3T58
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アリペイ