2021年06月14日

●「アマゾンのデイワン精神とは何か」(第5509号)

 アマゾンには、「DAY1」(デイワン)の精神というものが
あります。アマゾンのブログは「dayone/デイワン」という名前
が付いています。
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             アマゾンのブログ
       https://blog.aboutamazon.jp/
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 「アマゾンにとってはいつでも今日が創業日である」という意
味であり、アマゾンの生命線であるイノベーションを失わないた
めの言葉です。このデイワンの精神について、現職の入社6年目
のアマゾンの社員で、プライム・マーケティング事業統括本部の
ディレクターを務めている鈴木浩司氏と、入社16年目のオペレ
ーション部門のディレクター、鳴坂育子氏は、その趣旨について
次のように述べています。
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鈴木:僕はイノベーションを続けることの重要性がデイワンに現
 れていると思っています。常に挑戦していかないと、活力を失
 い、成長が止まってしまう。それを避けるには、素早く決断す
 る、社内の風通しをよくするなど、課題をクリアにしていく必
 要があります。そうした挑戦する精神のコアになるのがデイワ
 ンなのです。
鳴坂:デイワンには、成長を継続させていくという意味もあると
 思います。たとえば、新システムを導入したときのみ、それに
 合わせてプロセスを刷新して運用することにフォーカスしがち
 です。でも、それでは導入時がベストになる。そうではなく、
 継続的に改善点を探し、進化の努力を怠らないことが大事なの
 だと思います。          https://bit.ly/3guvonG
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 ここから、アマゾンと金融の問題について考えていきます。既
に述べているように、アマゾンは、銀行業の免許を取っていない
現状でも、銀行としての機能を果たしつつあり、しかも、現状の
銀行とは異なる機能を実現しています。問題を整理すると、次の
3つにまとめられます。
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 1.銀行の3大業務──預金、貸出、為替を疑似的に創造で
  きるものになっている。
 2.金融ディスラプター企業は既存金融機関よりも本来的金
  融機能を実現している。
 3.テクノロジー企業における「当たり前」を金融産業に持
  ち込もうと考えている。
                      ──田中道昭著
         『アマゾン銀行が誕生する日/2025年の
              次世代金融シナリオ』/日経BP
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 「1」について整理します。
 次世代金融プレーヤーを目指すアマゾンをはじめとするプラッ
トフォーマー企業は、銀行の3大機能を「疑似的(デュプリケー
ト)」に実現しています。アマゾンでいえば、「預金」はアマゾ
ンギフトカードやアマゾンチャージ、「貸出」はアマゾンレンデ
ィング、「為替(決済)」はアマゾンペイです。銀行との決定的
な違いは商流、物流、金流を三位一体で押さえていることです。
 「2」について整理します。
 現在、資金需要があるのは、銀行がお金を貸せない零細企業や
個人です。しかし、アマゾンをはじめ次世代金融プレーヤーは、
担保ではなく、商流を見てお金を貸しています。この傾向は中国
のアリババにおいて顕著ですが、アマゾンも同じ方向を目指して
います。アマゾンもアリババも、ともに自社を中心とする経済圏
の拡大を目指しているのです。
 「3」について整理します。
 テクノロジー企業における「当たり前」とは、アマゾンの「カ
スタマーエクスペリエンス」です。アマゾンは、その創業の19
97年の時点で「ワンクリック」を実現しています。ワンクリッ
クとは、ワンクリックで決済や発送の手続きができる機能です。
何かを購入するたびに、いちいちメールアドレスやパスワード、
配達先の住所を入力することなく、ワンクリックですべてを完了
させることです。アマゾンでは、これを「決済を感じさせないテ
クノロジー」と呼んでいます。
 アマゾンのそういう「当たり前」を金融産業に持ち込もうとし
ています。その「当たり前」とは、具体的には、次の8項目を指
しています。
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       @便利
       A手間がかからない
       B時間がかからない
       Cわかりやすい
       D自動でしてくれる
       Eフレンドリー
       F楽しい
       G取引していることを意識しない
           ──田中道昭著/日経BPの前掲書より
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 これまでの銀行は「不便」が当たり前であったといえます。わ
ざわざ店舗に足を運び、書類を作らされ、待たされ、窓口に呼び
出される。楽しくないし、応対もフレンドリーでない──そうい
うのがこれまでの銀行だったのです。
 アマゾンは、インターネット企業にとって「当たり前」のこと
を銀行に取り入れようとしています。銀行の、店舗や人、システ
ム、そういうレガシーはすべて破壊されます。そして、まったく
新しい銀行が誕生することになるのです。
             ──[デジタル社会論U/037]

≪画像および関連情報≫
 ●コラム:「アマゾン銀行」、データ支配による巨大な
  問題発生も
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   [ワシントン2021年3月24日/ロイター」銀行は世
  界金融危機の際に「大き過ぎてつぶせない」と言われたが、
  もし、アマゾン・ドット・コムが銀行業に進出すれば、この
  言い回しはもっとぴったりと当てはまるだろう。
   米国の規制当局はノンバンクへの預金保険提供に前向きで
  「バーチャル銀行」誕生に向けて道が開かれており、電子商
  取引の巨人であるアマゾンが、銀行業を手掛ける可能性もあ
  る。電子的にサービスを提供する銀行が増えれば、これまで
  口座を持てなかった人の役に立ち得る。しかし、アマゾンが
  手に入れるデータと同社の規模を考えると、問題は解決する
  よりもむしろ悪化しそうだ。
   世界金融危機の発生以降、従来型銀行の業界では競争が薄
  れている。米連邦預金保険公社(FDIC)が預金保険を提
  供した金融機関の数は、過去20年間で半分に減り、約50
  00社になった。2008年からはむしろ、JPモルガンな
  ど 既成勢力が肥大化し、同行の19年の預金残高は約1兆
  6000億ドルと、この間に60%増えた。ただ、ハイテク
  技術のおかげで金融サービス業界への新規参入が可能になっ
  た。例えば、ツイッターの創業者であるジャック・ドーシー
  氏が率いる決済企業・スクエアなど一部の企業は、産業銀行
  (ILC)という仕組みをうまく活用している。ILCが銀
  行免許を取得しつつ、その親会社は商業活動など他の事業に
  従事できるのだ。        https://bit.ly/35aK6e3
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アマゾン創業者/ジェフ・ベゾス氏.jpg
アマゾン創業者/ジェフ・ベゾス氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする