2021年06月11日

●「金融を疑似的に創造するアマゾン」(第5508号)

 銀行の3大業務といえば、「預金」「貸出」「為替」ですが、
銀行の3大機能は、次の3つです。
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           1.金融仲介
           2.  決済
           3.信用創造
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 日本経済が右肩上がりの高度成長を遂げていたとき、当時の日
本の銀行は十分機能していたのです。なぜなら、当時は旺盛な資
金需要があったからです。したがって、銀行は「金融仲介」機能
を使って、お金が余っているところから資金を集めて、お金を必
要としているところに融通していたのです。
 しかし、そのときでさえ銀行は、貸し出しの審査では、企業に
対しては担保主義、個人に対しては支払い能力を重視していたの
です。銀行として、貸し倒れを防ぐには、それしか方法がなかっ
たからです。
 ところが近年では、大企業にも基幹産業にも旺盛な資金需要は
ありません。これでは、銀行は「金融仲介」機能を働かせようが
ないのです。それでも貸し出しの審査は、相変わらず、担保主義
と支払い能力主義と何も変わっていないのです。
 資金需要がないといっても、銀行として貸し出せる担保を持つ
企業の資金需要がないのであって、十分な担保を持たない中小企
業や零細企業、あるいは個人は、その多くが事業の継続のために
資金を必要としているのです。
 これに対して、次世代金融プレイヤーを目指すアマゾンをはじ
め巨大なプラットフォーマーは、銀行とは異なる情報に基づいて
資金を必要とする企業に対して融資を行っています。彼らは厳し
い銀行業の認可を持っていませんが、金融をデュプリケート(疑
似的)に創造できるのです。なぜなら、彼らは銀行が持っていな
い情報をビックデータとして把握しているからです。これによっ
て、今まで銀行が独占してきた銀行の3大業務──預金、貸出、
為替という業務が銀行の独占ではなくなりつつあるのです。
 次世代金融プレイヤーは、次の3つの情報が自然にストックで
きているのです。
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             @商流
             A物流
             B金流
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 「商流」とは、流通の中の1つで、商的流通・取引流通ともい
われ、主に取引の流れを指します。商取引活動は、商流、物流、
金流の3つに分けられます。
 一般的に商流はその際に発生する所有権・金銭・情報の移動を
指しますが、物流は、物をAからBへ流すことをいいます。金流
とは、商取引の結果生ずるお金の流れです。
 巨大プラットフォーマーのうち、アマゾンのような電子商取引
(EC)にかかわる業態は、その市場を利用している販売事業者
が何を誰にどのぐらいのボリュームで売っているかを把握できる
し、とくにアマゾンは、商品を顧客に届けるフルフィルメント・
バイ・アマゾン(FBA)によって、物流まで把握しているので
す。そのデータの蓄積があれば、販売事業者の信用力を正確に把
握することができます。
 これについて、『アマゾン銀行が誕生する日』の著者、田中道
昭氏は、次のように述べています。
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 銀行は、法人取引において従来通りの担保主義でお金を貸そう
とします。対する次世代金融プレイヤーは主には商流を見てお金
を貸すことができます。個人への融資においては、これまで銀行
は支払い能力を見てきました。しかしそれは形式的なもので、本
当の収入や借入残高も完全には捕捉できず、オーバーローンにな
る危険もあったのです。次世代金融プレイヤーはここでも商流を
見てお金を貸します。蓄積されているビッグデータが「これまで
約束を守ってきているのか」「そもそも支払いの意思があるか」
といった個人の信用力を裏付けるのです。
 日本を含む先進国において、本当に資金を必要としているのは
零細企業や個人です。彼らに対する貸出ができるのは、担保主義
を中核としている銀行ではなく、アリパパやアマゾンなのではな
いでしょうか。こうした現状を目の当たりにするにつけ、金融の
あり方を変革し、今の時代に合わせた金融のあり方を追求してい
るのは、既存金融機関ではなく、彼らをデイスラブ卜しようとし
ている次世代金融プレイヤーであると思えてきます。
                      ──田中道昭著
         『アマゾン銀行が誕生する日/2025年の
              次世代金融シナリオ』/日経BP
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 しかし、そうはいっても銀行の信用は絶対的なものです。それ
は、長年銀行が築いてきたものだからです。このところ、いわゆ
る「○○ペイ」などの普及によって、日本もキャッシュレス化が
進んでいるように見えますが、日本の市中現金のGDPに対する
比率はまだ21%であり、世界一です。それは、日本の治安がよ
く、現金の盗難や偽札のリスクが少ないからです。
 「○○ペイ」にしても、銀行口座と紐づけているケースは少な
く、ほとんどはそのつど、現金で「○○ペイ」にチャージしてい
るケースがほとんどであり、現金と変わらないのです。そこには
銀行の絶対的な信用があります。
 巨大プラットフォーマーが、金融をデュプリケート(疑似的)
に創造できるといっても、それは銀行そのものではありません。
一体アマゾンは、どのようにして、正式に金融に進出し、どのよ
うな銀行を築くのか、来週から考えていくことにします。
             ──[デジタル社会論U/036]

≪画像および関連情報≫
 ●「日本の金融は、自らが次代のプラットフォーマーとなれ」
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   特徴かつ長所の一つだと思いますが、日本の金融機関は、
  内部に大量かつノイズの少ないデータを保管しています。た
  とえば、銀行が保管しているお客さまの入出金明細もその一
  つです。
   ところが、この財産は長い間眠った状態で、利用は限定的
  でした。現在、劇的にAI(人工知能)などの数理技術が進
  歩し、計算コストが下がったことで、過去から蓄積されたデ
  ータが、莫大な価値に転換しうる時代に入っています。他国
  の金融機関や他の産業、とりわけ、GAFAのようなプラッ
  トフォーマーにとっては、垂ぜんのデータだと思います。
   ただし、金融機関にとって、この長所を活かせるモラトリ
  アムは長くありません。デジタルデータとその供給者は増加
  の一途で、アグリゲーターはそれらを吸引しながら重力を増
  してきています。SNSなどのデータは、今のところ単体で
  は質量は軽くて弱い吸引力しか持ちませんが、異種混合に重
  元素が合成されはじめると、2年程度内に、巨大なデータプ
  ラットフォーマーが出現するかもしれません。金融機関は、
  オイシイデータの供給者としてわずかなフィービジネスを志
  向するのか、自らが既存の資産を活かしてブラックホールと
  なるのか、そんな岐路に立っているように思います。
   もう一つ、日本の金融機関の長所は、大量に優秀な人財を
  抱えていることです。こちらの財には、短期間で他者がキャ
  ッチアップできない価値が具備されています。データがイン
  テリジェンスに転換された後、それを実現するのは、人間で
  す。金融機関にプラットフォーマーのポジションを期待する
  理由がここにあります。     https://bit.ly/3g6p8DH
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巨大プラットフォーマーの3大機能.jpg
巨大プラットフォーマーの3大機能
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | デジタル社会論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする