2021年06月02日

●「アマゾン銀行は本当にできるのか」(第5501号)

 ここまでGAFAのひとつであるアマゾンの動きについて詳細
に述べていますが、EJの最大の関心は、アマゾンが銀行をはじ
めるのではないか、それも2025年までにはじめるのではない
かということです。実は、GAFAはいずれも金融業に進出する
のではないかといわれています。そのなかにあって、最も金融業
進出の可能性が高く、インパクトが大きいと思われるのがアマゾ
ンであるからです。
 アマゾンは、マーケットプレイスに出品する業者に対するFB
A(フルフィルメント・バイ・アマゾン)のサービスの一環とし
て、資金の貸付を行っています。それが融資サービス「アマゾン
レンディング」です。
 銀行は、企業の決算書に基づいて融資を判断しますが、アマゾ
ンは、出品業者の取引状況をすべて把握しているので、それに基
づき融資を行うことができます。考えてみると、決算書はその企
業の過去の状態を示す数値にしか過ぎず、それから現況は推測す
るしかないのです。
 出品業者が融資を申し込まなくても、アマゾンの基準によって
融資できる出品業者の場合、事業者の出入金管理画面に、融資で
きる金額の上限金額や期間、金利が表示されるのです。融資可能
な金額は、10万円から5000万円までであり、返済期間は指
定された期間から選択できます。つまり、アマゾンレンディング
では、融資の提案がきた時点で、審査はすでに終わっており、ス
ピード融資が受けられます。
 このアマゾンレンディングについて、成毛眞氏は次のように述
べています。
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 アマゾンレンディングは、米英日で展開している。2011年
に開始され、2017年6月時点の貸付総額は約30億ドルに達
している。このうち、3分の1に相当する10億ドルは過去1年
間の貸付額だという。FBAの拡大に伴い、金融事業で顧客の間
口が広がっていることがわかるだろう。
 金利は年率6〜17%とも言われており、銀行融資より高い。
消費者金融並みの高金利と批判が集まっている銀行のカードロー
ンですら3〜14%程度だ。しかし、零細や小規模業者の中には
アマゾンレンディングでしか借りないという業者もいるという。
面倒な書類手続きからも解放されるため、商品企画や仕入れに専
念できるからだ。       ──成毛眞著/ダイヤモンド社
           『amazon/世界の戦略がわかる』
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 金融の基本は、クレジットカードへの参入です。アマゾンは、
金融機関と提携して、クレジットカードを発行しています。クレ
ジットカードは、個人向けの金融と変わらないのです。アマゾン
のクレジットカードには、次の2種類があります。
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       1.  アマゾンマスターカード
       2.アマゾンマスタークラシック
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 「アマゾンマスターカード」(アマゾンゴールド)は、買い物
でたまるポイント還元率は2・5%です。アマゾンゴールドに加
入するには、年会費1万800円を支払う必要がありますが、ア
マゾンゴールドは、アマゾンプライムサービスの年会費が無料に
なるので、実質的には変わらないのです。
 「アマゾンマスタークラシック」は、年会費は無料であり、買
い物でたまる還元率は最大2%です。還元率2%を得るには、ア
マゾンプライム会員への加入が必要になります。つまり、年会費
1万800円を支払う必要があります。
 どちらがトクであるかは、アマゾンでの買い物の額によるので
す。ゴールドで月1万円ずつアマゾンで買い物をすると、年間で
3000ポイント、つまり、3000円の割引になります。ゴー
ルドを持っていれば、アマゾンで取り扱っている商品のすべてが
送料無料で、2・5%引きで買えることになります。
 しかし、個人金融は、国によって、制度、金利、リスクに差の
あるドメスティック事業であり、アマゾンの、世界を対象とした
ICTを核とするスケールメリットが働かず、一番参入が厳しい
分野であるといえます。
 銀行には、「金融仲介」「信用創造」「決済」の3大機能があ
り、その機能を提供する次の3大業務があります。
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             @預金
             A貸出
             B為替
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 このうち「貸出」に関しては、アマゾンレンディングによって
一部実現しています。これらの銀行の3大業務のなかでも、最も
厳しい規制を受けているのは「預金」です。お金を人から預かる
業務は、銀行のレゾンデートル(存在意義)であり、自己資本比
率など、厳しい規制があります。
 アマゾンは、この「預金」を「アマゾンキフトカード」や「ア
マゾンキャッシュ」で代替しようとしています。「アマゾンキフ
トカード」は、文字通り贈呈用に購入するカードであり、コンビ
ニやオンラインで誰でも購入できます。これを自分で商品を買う
ために使ってもいいのです。
 「アマゾンキャッシュ」は、いわゆるプリペイド口座です。ア
マゾン口座に入金した現金で買い物ができるサービスです。しか
し、アマゾンキフトカードやアマゾンキャッシュは、見方を変え
ると、「ユーザーからお金を預かる」という意味で広義の預金と
いえるものであり、預金業務を代替するものといってもよいと思
いいます。さらにポイント付与というかたちで、実質的な利息を
付けています。アマゾンは銀行に少しずつ近づいてきています。
             ──[デジタル社会論U/029]

≪画像および関連情報≫
 ●着々と進む「アマゾン銀行」誕生への布石
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   ネット通販の王者、米アマゾン・ドット・コムが放つ「ア
  マゾン・エフェクト(効果)」は今やインターネットの中だ
  けにとどまらない。米高級スーパーのホールフーズを買収し
  無人コンビニの「アマゾン・ゴー」も話題を呼んだ。アマゾ
  ンがさらなる「経済圏」の拡大に向けて着々と強化を進めて
  いるのが金融分野だ。やや地味な取り組みの積み重ねだがそ
  の全貌を分析すれば、近い将来に「アマゾン銀行」が金融業
  界を揺るがす可能性は否定できない。
   米ベンチャーキャピタル(VC)大手アンドリーセン・ホ
  ロウィッツのゼネラルパートナー、アレックス・ランペル氏
  は2月、金融サービスに本格参入する可能性があるIT(情
  報技術)大手を列挙した。
   「最も手ごわいのはアマゾンだ。同社が低金利ローンや銀
  行口座の開設などに乗り出せば、サイトの売り上げはさらに
  増えるだろう」
   ランペル氏はこう分析する。実際、アマゾンの銀行業参入
  の観測は年々強まっている。CBインサイツが調べた範囲で
  は、アマゾンが次世代の銀行を築きつつあると断言するのは
  難しい。だが、アマゾンが「自らのエコシステム(生態系)
  への参加者を増やす」という戦略の柱となる金融商品の開発
  に力を注いでいるのは明らかだろう。
               https://s.nikkei.com/2TmeSht
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アマゾンギフトカード.jpg
アマゾンギフトカード
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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