2021年05月27日

●「AWS/その知られざるビジネス」(第5497号)

 アマゾンといえば、当初は「インターネット書店」、現在では
「EC(電子商取引)の王者」という印象ですが、ICT業界で
は、アマゾンを「世界最大の企業向けのクラウドサービス提供会
社」と認識しています。
 クラウドサービス──これをアマゾンでは「AWS/アマゾン
・ウェブ・サービス」と呼んでいます。AWSは、クラウド・コ
ンピューティング・サービスの世界に革命を起こしたといっても
過言ではないほどの大変化をもたらしているのです。
 いわゆるクラウドコンピューティングサービスが登場するまで
は、サーバーを利用する必要があれば、企業は自社の建物の中な
どにサーバー機器を設置して利用するのが一般的だったのです。
こういう運用形態のことを「オンプレミス/on-premises」と 呼
んでいます。これには非常にコストがかかるのです。
 成毛眞氏は、AWSはアマゾンにケタ違いの儲けを生み出して
いるビジネスであるとして、AWSについて、次のように説明し
ています。
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 AWSは、巨大なサーバーを用意し、その中のシステム(高度
なデータ解析やAIを活用したサービスなど)をオンラインで、
あらゆる企業に提供する形にした。AWSのクラウドサーバーを
共有すれば、企業はわざわざ自社内にサーバーを置く必要がなく
なる。それぞれの企業が、独自にシステムを開発し運用するより
もはるかに安いコストで、高性能なシステムが使えるようになる
のだ。また、クラウドサービスは、大きくすればするほど、コス
トが削減できる。たとえば日本企業であれば、深夜にはコンピュ
ーターはほとんど使わない。しかし、時差があるニューヨークに
ある企業は、日本で使っていない深夜帯に同じサーバーを利用す
ることができる。こうしてコンピューターの減価償却費や電力コ
スト、メンテナンスの人件費などが抑えられる。これを地球上の
無数の企業に展開すれば、さらに安くなるというわけだ。
               ──成毛眞著/ダイヤモンド社
           『amazon/世界の戦略がわかる』
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 アマゾンは、その業態からいえば、いわゆる本家のICT企業
ではないのに、なぜ、クラウド・コンピューティング・サービス
の世界に君臨できているのでしょうか。
 ちなみに、クラウドコンピューティングとは、インターネット
を介してサーバー・ストレージ・データベース・ソフトウェアと
いったコンピューターを使った様々なサービスを利用することを
指します。クラウドコンピューティングでは、手元に1台のPC
とインターネットに接続できる環境さえあれば、サーバーや大容
量のストレージ、高速なデータベースなどを必要な分だけ利用で
きるわけです。
 それでは、どうしてAWSは、大手のICT企業をさしおいて
幅広く使われているのでしょうか。
 それは、AWSが「クラウドのデパート」といわれるように、
企業がすぐ使える数多くのサービスを揃えているからです。しか
もそれらを驚くべき安い価格で提供していることです。競合相手
であるヒューレット・パッカードは、2015年に撤退している
し、IBMは、比較的利益の大きいサービスに絞っています。
 「デファクトスタンダード」という言葉があります。ISO、
DIN、JISなどの標準化機関などが定めた規格ではなく、市
場における競争や、広く採用された「結果として事実上標準化し
た基準」を意味していることばです。
 これまでも大型コンピュータではIBM、PC用のOSではマ
イクロソフト、半導体ではインテルが、それぞれの分野で覇者に
なっています。それと同様に、クラウド・コンピューティングの
世界では、AWSがIBMやヒューレッドパッカードを制して覇
者になろうとしているのです。
 成毛眞氏の本には、そのことを裏付ける象徴的な話が出ている
ので、ご紹介します。
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 AWSの大きな転機となった顧客がいる。米中央情報局(CI
A)である。2013年に6億ドルで4年間の契約を結んだ。米
航空宇宙局(NASA)なども顧客であったが、CIAの受注先
が変わったのは衝撃だった。政府機関の仕事は、IBMのような
昔からの大企業が独占的に受注してきたからだ。
 IBMは政府に再度検討するよう求めたが、米連邦裁判所が、
「AWSのオファーの方が技術的に優れており、競合の結果は、
接戦とは言いがたいほどかけ離れていた」とIBMの要求を退け
たから、これはある意味宣伝効果がすごい。AWSの信用に政府
それも機密情報を取り扱うCIAがお墨つきを与えたことで、多
くの公的機関や企業が、AWSの導入に向け、より前向きに動き
出すことになった。日本でも日立製作所やキャノン、キリンビー
ル、ファーストリテイリング、三菱UFJ銀行、スマートニュー
スなど業種を問わず、大企業から新興企業まで続々とAWSを導
入し始めている。       ──成毛眞著/ダイヤモンド社
           『amazon/世界の戦略がわかる』
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 ネットフリックスという企業があります。米国に本社を置く、
世界的な定額制動画配信サービス及びオンラインDVDレンタル
運営会社です。2017年12月の時点で190ヵ国以上で配信
事業を展開し、2020年の売上は250億ドル、世界の契約者
数は2020年末時点で2億370万人であり、アマゾンと完全
に競争領域が重なっています。しかし、そのネットフリックスも
AWSを使っているのです。
 クラウドの利用とは対極にあると思われていた銀行もAWSを
利用しています。三菱UFJ銀行は、1000のシステムがあり
ますが、順次AWSに切り替えており、将来的には半分をクラウ
ド化しようとしています。 ──[デジタル社会論U/025]

≪画像および関連情報≫
 ●アマゾンのドル箱となったAWSがこれほど破壊的
  である理由
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   アマゾンをEコマースの会社だと思っているなら、認識を
  改めた方がいいかもしれない。Eコマースは、インフラを構
  築し、クラウドサービスとして販売することを正当化する口
  実のようなものだ。一番おいしい収益を上げているのは「ア
  マゾン・ウェブ・サービス」なのだ。
   アマゾンの第3四半期の業績がそれを物語っている。実際
  にアマゾンの業績報告を見てみれば分かる。アマゾンの総売
  上高のうち、AWSは8%だが、営業利益で見ると同事業は
  52%を占めているのだ。これは、AWSがアマゾンの北米
  のEコマース事業と同じ額の利益を上げていることを意味す
  る。これがどういうことか、分かるだろうか。アマゾンは、
  北米で5億2800万ドルの営業利益を上げるのに、150
  億ドルの売上高を必要とした。しかしAWSは、20億80
  00万ドルの売上高から、5億2100万ドルの営業利益を
  上げたのだ。
   どうやら、筆者が2008年に記した予言は正しかったよ
  うだ。当時筆者は、次のように書いている。
   アマゾンは、同社の「EC2」サービス用の永続的なスト
  レージサービスを発表した。注目すべきは、Eコマース事業
  者である同社が、いかに素早く競争の先頭に躍り出たかだ。
  実際、アマゾンの本当の事業は今後クラウドサービスになる
  と予想される。         https://bit.ly/3oJOJVu
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AWS
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする