2021年05月17日

●「大前研一氏ディエムについて語る」(第5489号)

 2021年5月14日のことです。当日付の朝日新聞朝刊は、
次のタイトルの記事を報道しています。
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 ◎FB主導の仮想通貨 また縮小
 米フェイスブック(FB)が主導して立ち上げを目指していた
暗号資産(仮想通貨)「ディエム」の発行・管理団体(本拠・ス
イス)は12日、スイス金融当局への許可申請を取り下げ、主要
拠点を米国に移すと発表した。スイスを拠点にグローバルなデジ
タル通貨の立ち上げを目指してきたが、米国の既存銀行と提携す
る形に切り替える。当初の構想からは大きく後退した形である。
           ──2021年5月14日付、朝日新聞
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 「ディエム」とは、フェイスブックの仮想通貨「リブラ」を改
称した名前です。なぜ、名称を改称したのでしょうか。
 「リブラ」では、日本円も含む複数主要通貨(中国・人民元は
含まず)によるバスケットに連動する仮想通貨を管理団体である
リブラ協会が発行するという野心的な計画だったのですが、主要
国の政府や中央銀行が、米ドルにとって代わりうるとの懸念や、
マネーロンダリングに利用される恐れがあるなどして猛反発、計
画を変更せざるを得ない状況に追い込まれたのです。
 そこでフェイスブックは、通貨の名称を「ディエム」に変更し
ディエムの管理団体であるディエム協会が、シルバーゲート銀行
と提携し、同銀行がドルに連動する「ディエム・ドル」を発行す
ることになったのです。シルバーゲート銀行とは、仮想通貨関連
会社へのサービスで現在業績を伸ばしている、カルフォルニア州
に本拠を置く銀行です。いずれにせよ、当初の計画から考えると
大幅な計画変更であり、後退であるといえます。
 この「ディエム」、かつてのリブラ構想については、多くの識
者──とくに世界の金融関係の学者や評論家が警戒し、疑問を呈
するなか、経営コンサルタントの大前研一氏は大賛成してしてい
ます。どのような点が賛成なのかについて、参考になると思うの
で、大前研一氏の意見をご紹介しておきます。
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 現在の通貨制度には大きな問題がある。まず基軸通貨であるは
ずの米ドルが、ドナルド・トランプ前大統領の時代に、彼の身勝
手な発言や思いつきのツイートに反応して乱高下してしまってい
た。それから、世界の国際決済システムの中核を担っているSW
IFT(国際銀行間通信協会)がアメリカの強い影響下にあるた
め、アメリカが制裁対象にした国や地域の銀行や企業はSWIF
Tが使えなくなり、米ドル建ての送金や決済ができなくなる。実
際、イランの制裁にこれを用いたために、フランスの石油会社ト
タルは同国での石油掘削事業から撤退してしまった。
 つまり、現在の通貨制度だと、アメリカの大統領の一存で世界
中が振り回されてしまうのだ。そうならないためには米ドル以外
の基軸通貨、それからSWIFTではない国際決済システムが必
要であって、デイエムはまさにその役目を果たすのが目的なので
ある。しかも、デイエムは、ビットコインのような発行・運営団
体が不在で価値の裏づけもない仮想通貨とは異なる。デイエム協
会が発行・運営し、米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドなどの主
要通貨や短期国債などで裏づけることによって、価値が大きく変
動しにくい設計になっているのである。(中略)
 フェイスブックCEOのザッカーバーグ氏も、本気なら、フェ
イスブックを辞めて、自分の財産をここに半分くらいつぎ込むべ
きだろう。そうすれば「信用」が生まれる。
              ──大前研一著/プレジデント社
                   『大前研一DX革命』
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 大前研一氏といえば、2001年に上梓した『大前研一新・資
本論/見えない経済大陸へ挑む』(東洋経済新報社)のなかで、
21世紀は、リアルの経済の他に、サイバー、グローバル、マル
チプルが加わった4つの経済空間が生まれると予測しています。
ビットコインやフェイスブックのリブラ(ディエム)のような仮
想通貨は、サイバー空間の経済へ導くテクノロジーといえます。
 そして、おそらく2021年中には、ディエムに加えて、中国
のデジタル人民元のような中央銀行による仮想通貨(CBDC)
も出現し、サイバーの経済空間が一層よく見えるようになると思
われます。これは先端テクノロジーを使いこなすディスラプター
(破壊的イノペーター)であり、対応を怠ると、業界もろとも消
滅させられるほどの破壊力を秘めています。
 しかし、日本では、2021年になっても、20世紀のリアル
な経済しか見えていない経営者や政治家が、過半数を占めていま
す。これでは、日本経済がいつまでもデフレの底に沈んで、低迷
から脱却できないのも無理はないのです。大前研一氏にいわせる
と「DX」の本質は次のようになります。
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 DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、単にITや
デジタルテクノロジーを取り入れるといった単純なことではなく
デジタルテクノロジーを用いて、21世紀型企業に変革を図るこ
とである。                 ──大前研一氏
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 実はGAFAのうち、もっとも破壊力の大きい企業は、アマゾ
ンであると私は考えています。アマゾンは、最初から「あらゆる
商品の品揃え」を行い、それらをECでなるべく安い価格で販売
し、自ら届けることを目標としており、そのため、物流には最も
力を入れています。DXを語るうえで、アマゾンという稀有な企
業のことをもっと詳しく知る必要があります。
 アマゾンを単なるEC企業と考えると、とんでもない間違いを
犯すことになります。そういうわけで、EJでは、しばらくアマ
ゾンについて調べてみることにします。
             ──[デジタル社会論U/017]

≪画像および関連情報≫
 ●英ディエムの弁護士立ち上がる、フェイスブックのリブラ
  改名に障害
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   最近ディエムに改名したフェイスブックのステーブルコイ
  ン、リブラのブランド再生計画の試みは、同名の英国フィン
  テック企業が法的措置を取る準備をしており、再び壁にぶつ
  かったようだ。計画の運営組織であるリブラ協会は最近、新
  たなスタートを切るためにラテン語で「日」という意味の、
  ディエム協会に改名したと話した。
   しかし、シフティッドの報告によれば、フェイスブックや
  関係機関は、小規模の買い手や売り手がインターネット上で
  所持品を交換できるロンドン拠点のディエムプラットフォー
  ムとの厄介な法的論争に陥るかもしれない。メディアはディ
  エムの創設者でCEO(最高経営責任者)のジェリ・クピ氏
  の発言を引用した。
   「12月1日にフェイスブックのリブラ協会がディエムに
  改名することを知り、驚愕した。(中略)小規模新興企業と
  て、リブラのアルトコインから生じる顧客の混乱が私たちの
  成長に大いに影響を与えるのではないかと懸念している」法
  的論争の合図となりそうだ。またメディアは、クリス・アデ
  ルスバッハ氏というディエムの投資家が、法律専門家はフィ
  ンテックチームに「ディエムの銘柄を守る」ように助言した
  と話したと伝えている。     https://bit.ly/33HOCAh
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大前研一氏.jpg
大前研一氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(2) | デジタル社会論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする