配なのは、東京、大阪だけでなく、感染拡大が地方に広がってい
ることです。2021年5月12日現在、直近一週間における人
口10万人当たりの感染者は次のようになっています。
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◎人口10万人当たりの感染者数
東京都 ・・・・ 41・3人
大阪府 ・・・・ 67・7人
福岡県 ・・・・ 56・6人
久留米市 ・・・・ 65・8人
5月12日、羽鳥慎一モーニングショウ/データ
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これを見ると、久留米市は、数値が大阪府に近づいており、福
岡県も感染者が拡大しています。そういうなかにあって、東京都
は、かなり感染を抑えているように感じます。
ところで、5月11日、「デジタル改革関連法」が参院内閣委
員会で可決され、本原稿執筆時の12日に成立する見通しになっ
ています。しかし、この法案は、菅政権発足後、たった5か月で
まとめられた法案であり、しかも計63本の法案が束ねられ、多
くの影の部分もあるにもかかわらず、野党が十分に追及できない
状態のまま成立することになります。
「デジタル改革関連法」は、デジタル庁設置法案のほか、デジ
タル社会の理念を定めた「デジタル社会形成基本法案」、個人情
報保護法や行政手続きの押印廃止に必要な法律の改正案を盛り込
んだ「デジタル社会形成整備法案」、マイナンバーと預貯金口座
をひもづければ、公的な給付金の受け取りをスムーズにし、災害
や相続時の口座照会もできる法案から成っています。
デジタル庁については、もっと情報が集まってから、改めて述
べることにして、本題に戻ることにします。
GAFAの4大プラットフォーマーのなかの2つの「A」、1
つはアップル、2つはアマゾンです。これらの2社は、グーグル
とフェイスブックとは、少し違うスタンスを持っています。アッ
プルは、もともとPCメーカーであると同時にソフトウェアメー
カーです。しかし、インターネットを使うことが前提であるスマ
ホ、アイフォーンを開発しているので、GAFAの有力な一角を
占めています。
アマゾンは、そのメインはEC、エレクトロニック・コマース
すなわち、電子商取引がメインの企業です。アマゾンは、当初は
「インターネット書店」として世の中に認識されましたが、はじ
めから、本だけを売るのではなく、あらゆる商品を扱う世界一の
EC事業を目指し、実際にそうなっています。書籍は、著者、書
名、出版社などのデータが明確であり、商品を間違える心配がほ
とんどないので、最初の商品になったのです。
アマゾンが「インターネット書店」として開業したのは、19
95年7月のことです。そのとき、アマゾンの創業者のジェフ・
ペゾス氏があるレストランで、知人にナプキンの紙にペンで描い
て説明したというアマゾンの事業計画があります。図については
添付ファイルをご覧ください。
ジェフ・ペゾス氏は、顧客によい体験をしてもらうことが大切
と説きます。たとえば、他の書店を何軒まわっても、絶対に見つ
からなかった本がアマゾンで簡単に見つかり、買えたとします。
しかも、即日手に入ったとします。これは顧客にとってよい体験
です。「アマゾンは何でもあるんだな」という体験です。
こういう体験が積み重なると、トラフィック、すなわち、サイ
トには、多くのお客が集まってきます。多くのお客が集まると、
さらに本が売れるようになり、アマゾンとしては、さらにセレク
ション(品揃え)が豊富になり、さらに一段と本が売れるように
なります。
このような良いサイクルが続くと、アマゾンは売上高を伸ばし
て成長し、低価格でサービスを提供することになります。物流は
規模の経済が働くので、低コストで商品が提供できるようになり
ます。そして、それが顧客体験の向上につながり、トラフィック
が増えるという循環になっていくのです。
尾原和啓/島田太郎両氏は、このジェフ・ベソス氏の理論は、
グーグルやフェイスブックにも同じことがいえるとして、次のよ
うに述べています。
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顧客体験の向上を起点として、商品の拡充とコスト低減という
2つのサイクルがうまく循環しています。この2重構造がアマゾ
ンの独占性を生み出しているのです。
この構造は、グーグルやフェイスブックにも同じことが言えま
す。グーグルを使えば探しているものが見つけやすいから、ユー
ザーはグーグルを使う。すると情報提供側はより見つけてもらい
やすいよう、グーグルの仕様に合わせて情報をアップするように
なり、さらにグーグルで情報が見つけやすくなる。こうして、構
造的にスケールフリーネットワークがより展開しやすくなってい
るのです。
──島田太郎/尾原和啓著『スケールフリーネットワーク/
ものづくり日本だからできるDX』/日経BP
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GAFAに代表されるインターネット企業が革新を起こした分
野は、小売業と広告業の分野だけです。これら2つの分野の合計
は、米国のGDP約19兆ドルのわずか7%に過ぎないのです。
そういう意味において、まだ、革新を起こせる分野は93%も手
つかずに残されています。
そういう意味において、日本にも十分なチャンスが残されてい
るといえます。そのためには、日本社会を徹底的にデジタル社会
に改変する必要があります。日本はコロナ禍から脱却できていま
せんが、そのデジタル化のスタート年は今年からはじまると考え
ています。 ──[デジタル社会論U/016]
≪画像および関連情報≫
●<ストーリー戦略>アマゾン、スターバックス/楠木建氏
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先ほど戦略の本質は「違いをつくって、つなげる」ことだ
と述べた。このうち、どちらが戦略の真髄かというと、それ
は違いをつなげていく「シンセシス(綜合)」にある。違い
の一つひとつは静止画にすぎない。「こうするとこうなる。
そうなれば、これが可能になっていく」という時間展開を含
んだ因果論理でつなげていくことで、はじめて動画のような
戦略ストーリーを語ることができる。
そのことはビジネスモデルと比較することでより明確にな
る。図の左側にあるのがアマゾンのビジネスモデルで、右側
が創業者であるジェフ・ベゾス氏が事業を構想しているとき
に、レストランの紙ナプキンに描いたとされる戦略のストー
リーである。ビジネスモデルは、自社、顧客、サプライヤー
などの空間的な配置形態を示しているにすぎない。
それに対して戦略ストーリーでは、「アマゾンならではの
ユニークな購買体験を提供すればトラフィックが増大する。
多くの人が訪れるサイトになれば、出版社などの売り手を引
きつけ、セレクションが充実する。すると顧客の経験をさら
に充実させ、トラフィックが上がっていく・・・」という時
間展開を含んだ好循環の因果論理が一目瞭然になっている。
https://bit.ly/3uKpx3A
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アマゾンの事業戦略