2021年05月10日

●「インスタ創業者はなぜ辞めたのか」(第5484号)

 2012年のことです。フェイスブックは、写真共有アプリの
インスタグラムを買収しました。そのとき、フェイスブックが、
インスタグラムに支払った金額は10億ドル(1130億円)と
いう巨額な金額だったのです。
 この金額は、当時月間アクティブユーザー数が、3000万人
程度であったインスタグラムに対する買収価格としてはベラボー
な金額だったのです。ちなみに、買収当時のインスタグラム社の
スタッフはたったの13人だったといわれています。インスタグ
ラムの共同経営者は、次の2人です。
─────────────────────────────
        ◎最高経営責任者(CEO)
           ケヴィン・シストロム氏
        ◎最高技術責任者(CTO)
            マイク・クリーガー氏
─────────────────────────────
 しかし、これらインスタグラムの創業者は、既にフェイスブッ
クから去っています。これは、フェイスブックに原因があります
が、それはさておき、インスタグラムの特性について述べること
にします。
 フェイスブック、ツイッター、インスタグラムにLINEを加
えて、4大SNSといわれています。このうち、フェイスブック
とツイッターは、当初は文章の入力によって、人と人をつないだ
のです。当時はスマホではなく、PCがメインだったからです。
私はツイッターを2010年1月からはじめていますが、当時は
スマホは登場したばかりであまり普及しておらず、PCでツイッ
ターをはじめたものです。
 少し歴史を振り返ってみると、2008年にスマホがはじめて
登場し、それが普及しはじめた2010年にインスタグラムが発
足しています。その頃から、少しずつスマホのカメラの性能が高
度化するにしたがって、SNSでは文章よりも写真を送る人が多
くなっていったのです。このようにして、2012年にはインス
タグラムのユーザーは3000万人に到達していたのです。そし
て、インスタグラムはフェイスブックに買収されるのです。
 インスタグラムは、写真によって人とつながれるSNSです。
ツイッターやフェイスブックのように、その人や、アカウントを
フォローするのではなく、写真に付けられた「ハッシュタグ」と
いうキーワードをフォローすることによって、多くの人とつなが
ることができます。これについて、尾原和啓/島田太郎両氏は、
次のように解説しています。
─────────────────────────────
 例えば、サーフィンが趣味なら「サーフィン」というハッシュ
タグをフォローすれば、世界中のサーフィンの写真を見られるの
です。さらに細かく、朝の静かな時間帯のサーフィンばかりを集
めた「モーニングサーフィン」や、世界中の大きな波を見られる
「ビッグウェーブ」といったハッシュタグもあります。
 自分の趣味を通して世界中の人とつながることができます。こ
のようなつながりを「インタレストベース」のネットワークと呼
びます。(中略)
 フェイスブックが、リアルな人間関係をベースとしたスケール
フリーネットワークであるのに対し、インスタグラムは、興味や
趣味、関心によって、まったく知らない人とつながるスケールフ
リーネットワークを構築しています。
  ──島田太郎/尾原和啓著『スケールフリーネットワーク/
        ものづくり日本だからできるDX』/日経BP
─────────────────────────────
 このように、インスタグラムはフェイスブックの発展・拡大に
大きく貢献したのですが、インスタグラムの共同経営者であるケ
ヴィン・シストロム氏とマイク・クリーガー氏の2人は2018
年9月24日に、フェイスブックを去っています。
 なぜ、一番よいときにフェイスブックを去ったのでしょうか。
ケヴィン・シストロム共同経営者兼CEOによるフェイスブック
辞任の挨拶は、次の通りです。
─────────────────────────────
 マイクと私は、インスタグラムで8年を過ごし、フェイスブッ
クのチームと6年を過ごした。我々は13人から世界中のオフィ
スに1000人以上が働くまでに成長した。我々が作ったプロダ
クトは10億人を超える人々に使われ、愛されている。我々は次
の人生への準備が整った。
 我々はしばらく休養し、好奇心とクリエイティビティを、もう
一度、取り戻そうと思う。新しいものを作るために立ち止まり、
我々をインスパイアしてくれるもの、そしてそれを世界が必要と
しているかどうかを突き詰める。そんなことを我々は計画してい
る。我々はリーダーから10億人の中の2人のユーザーとなるが
インスタグラムとフェイスブックの未来に依然、興奮している。
イノベーティブで非凡な会社の取り組みに期待している。
       ──共同創業者兼CEO、ケヴィン・シストロム
                  https://bit.ly/3xVAZeH
─────────────────────────────
 円満退社といわれていますが、そんなことはないと考えます。
その証拠は、挨拶にマーク・ザッカーバーグの名前がないことで
す。会社の創業者に対する感謝の言葉は、形式的なものかもしれ
ませんが、重要なものです。それがないということは、事態が円
満退社ではないことをあらわしています。
 本当の原因は外部からはわかりませんが、2人はザッカーバー
クCEOの金儲け主義や拡大路線に嫌気がさし、フェイスブック
を去ったものと考えます。何よりも決定的なのは、フェイクブッ
クがインスタグラムの個人情報まで商売に使おうとしたことが決
定的です。それは、フェイスブックとインスタグラムのアドレス
帳の統合の要請です。2人はこれに反発して、フェイスブックを
去ったのです。      ──[デジタル社会論U/012]

≪画像および関連情報≫
 ●インスタグラム共同創業者2人が電撃辞任
  ───────────────────────────
   激震走る・・・。
   フェイスブックに6年前に10億ドルで身売りしたインス
  タグラム(インスタグラム)も、今や評価額1000億ドル
  (12兆円超)。こんなに大きくなってうれしい反面、共同
  創業者2人は売らなきゃよかったと悔しくて眠れない夜もあ
  るんだろうなあと思っていたら、2人揃って辞任の電撃ニュ
  ースが入り、椅子から転げ落ちそうになりました。
   辞め方がとにかく尋常ではなく、講演スケジュールがびっ
  しりなのにもかかわらず、いきなり、ニューヨークタイムズ
  の独占スクープで報じられ、何時間もフェイスブックからは
  なんの発表もないまま時が流れてゆき、憶測が憶測を呼ぶ異
  様な雰囲気となりました。
   当の本人であるケヴィン・シストロムCEOもマイク・ク
  リーガーCTOも辞める理由は明らかにしていませんが、イ
  ンストグラム公式ブログにシストロムCEOが発表した辞任
  の挨拶にはマーク・ザッカーバーグのマの字もなく、「確執
  の噂は本当だったのか・・」との見方が強まっています。イ
  ンスタグラムは、今年6月にユーザー10億人の大台に乗り
  今後5年で20億人という成長曲線まっしぐら。ユーザー滞
  留時間ではフェイスブックとほぼ互角に迫っています。
                  https://bit.ly/3uwlJmq
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インスタグラムの共同創業者.jpg
インスタグラムの共同創業者
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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