2021年05月07日

●「どうスケールフリー性を高めたか」(第5483号)

 グーグルの検索エンジンの世界的シェアは、次のようになって
います。2019年8月現在です。ビングはマイクロソフト、ヤ
ンデックスはロシア、バイドーは中国です。
─────────────────────────────
        グーグル ・・ 88・6%
         ビング ・・  5・1%
        ヤフー! ・・  2・7%
      ヤンデックス ・・  0・8%
        バイドー ・・  0・7%
         その他 ・・  2・1%
                  https://bit.ly/3ePXvNb
─────────────────────────────
 このように、グーグルが圧倒的ですが、グーグルは「ページラ
ンク理論」に基づいて、スケールフリーネットワークの成長を促
進する仕組みが導入されています。ページランク理論については
ネット上に解説がたくさんありますが、数学の理論なので、いさ
さか難解です。
 簡単にいうと、ページランク理論とはウェブページの重要度を
決定するためのアルゴリズムであり、「信頼性の高いページから
リンクされているページほど信頼性が高い」という考え方です。
グーグルの創業者であるラリー・ページと、セルゲイ・ブリンに
よって、1998年に発明されています。
 学術論文でも同じことがいえます。基本的には、論文の引用数
の考え方と同じです。優れた論文は、多くの論文に引用されるも
のであり、そういう引用数の多い論文は優れているという考え方
です。これに関して、日本国内の「高被引用論文数ランキング」
というものがあり、研究機関ごとに公表されています。2017
年度のインパクトの高い論文数分析による日本の研究機関ランキ
ングのベスト5は次の通りです。
─────────────────────────────
         高被引用論文数  高被引用論文の割合
  東京大学      1326       1・6%
  京都大学       764       1・2%
  理化学研究所     623       2・4%
  大阪大学       540       1・1%
  東北大学       497       1・0%
                  https://bit.ly/3eho8eS
─────────────────────────────
 考えてみると、グーグルの検索精度の向上により、どのような
ニッチでマイナーなサイト(情報)であっても、キーワードによ
る検索結果によって、現在では表示されるようになっています。
まさに、ロングテールの法則が働いているのです。
 このグーグルのページランク理論とスケールフリーネットワー
クの関係について、尾原和啓/島田太郎両氏は、次のように述べ
ています。
─────────────────────────────
 重要なべージからリンクを集めるほどページの評価が上がる、
というページランク理論そのものもスケールフリーネットワーク
化の要因となりました。重要なべージの管理人同士が連絡を取り
合い、お互いにリンクを貼り合うようになったのです。こうして
一部のハブが膨大なリンクを集めるようになり、もともとスケー
ルフリーネットワークであったウェブのスケールフリー性がさら
に強化されました。
 すべてのウェブページをリンク数によって評価し、スケールフ
リーネットワークとして構造化することで、グーグルは検索エン
ジンとして圧倒的な地位を築きます。そして検索エンジンを利用
する膨大なユーザーを基盤にして莫大な収益を上げるようになり
ました。        ──島田太郎/尾原和啓著/日経BP
              『スケールフリーネットワーク/
             ものづくり日本だからできるDX』
─────────────────────────────
 ここまでは、グーグルの話です。続いて、フェイスブックにつ
いて考えてみることにします。
 フェイスブックの創業者、ザッカーバーグ氏は、ハーバード大
学の学生が交流を図るための「ザ・フェイスブック」というサー
ビスを開始したのですが、その数日後にスタンフォード大学やコ
ロンビア大学、イエール大学などの学生からの「同じようなサイ
トが欲しい」との要望に応え、いわゆるアイビー・リーグの学生
にも開放されたのです。つまり、学生同士がつながるためのSN
Sがフェイスブックとして発足したのです。
 はじめは、プロフィールの交換のようなものだったのです。そ
れが「ウォール」というツイッターのタイムラインに当たるもの
ができたことで、人と人がつながる機能が強化されといえます。
しかも、フェイスブックは、実名での登録が入会の条件であるこ
とが、匿名が許されているツイッターとは異なります。
 それに加えて、フェイスブックは、人と人のつながりを作り、
緩やかなつながり「ウィークタイ」を含めて、可視化したことが
スケールフリーネットワーク化の拡大に貢献したのです。それに
加えて、フェイスブックの場合、ちょうどスマホが普及するタイ
ミングに間に合い、普及の加速が促進されたことです。これは、
フェイスブックにとって幸運であったといえます。
 フェイスブックは、2012年に7億1500万ドルで、写真
SNSであるインスタグラムを買収しています。その急拡大ぶり
に脅威を感じたフェイスブックのCEOであるザッカーバーク氏
がフェイスブック陣営に囲い込んだのです。
 インスタグラムは、基本的に写真によって人と人がつながれる
システムを有しています。これによって、フェイスブックは、ス
ケールフリー性を急拡大させる原因となったということがいえま
す。これについては、来週続いて考えていくことにします。
             ──[デジタル社会論U/011]

≪画像および関連情報≫
 ●フェイスブックがインスタグラム買収に大金を投じた理由
  ──両社の狙いと写真共有にもたらす影響
  ───────────────────────────
   世界最大の写真共有サイト(そしてソーシャルネットワー
  ク)であるフェイスブックは、米国時間2012年4月9日
  インスタグラムを買収すると発表した。インスタグラムは、
  非常に高い人気を誇るスマートフォン向けモバイル写真共有
  アプリを提供している企業だ。この買収を早速評価して、フ
  ェイスブックにとって、非常に強力な戦術的かつ戦略的な動
  きであるとする分析もある。
   この件でフェイスブックが勝ち取った重要なものは、モバ
  イルとのかかわりだ。インスタグラムのユーザー数は2年足
  らずの間に3000万人に達している。フェイスブックは、
  数年前からモバイルアプリを提供しているが、インスタグラ
  ムほどはユーザーの愛着を勝ち得ていない。フェイスブック
  は、モバイルアプリの中で最高の相手(少なくともユーザー
  開拓という点においては)を買収することによって、将来の
  競争相手を排除するだけでなく、モバイル分野での存在感を
  強化できる。
   インスタグラムは、小さな企業かもしれないが、買収の日
  まではフェイスブックに対する脅威となっていた。フェイス
  ブックは、1日あたり約2億5000万枚の写真が、アップ
  ロードされる世界最大の写真共有サイトになったが、そのソ
  ーシャルネットワークのユーザーベースに頼って安心してい
  たのでは、現在の地位を強化し続けることはできない。
                  https://bit.ly/2QJv0cb
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世界検索エンジンシェア/2019.jpg
世界検索エンジンシェア/2019
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(3) | デジタル社会論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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