2021年04月28日

●「WWWはどういうネットワークか」(第5480号)

 人間は、ネットワークの威力によって、地球上での生き物の王
者として、君臨するようになっていますが、これを大きく支えた
のがさまざまなテクノロジーの発明です。
 人間にとって基本的なコミュニケーションの手段は「会話」で
す。人間は直接言葉を交わすことによって、共同体を運営してき
たのですが、やがて文字が誕生します。文字は、今から約500
0年前にメソポタミア地方で誕生しています。
 メソポタミア地方は、ゴンドワナ大陸がユーラシア大陸と衝突
したあと、両大陸の間の海に土砂がたまって生まれた土地です。
文字は、人間活動の時空間を支配しようとする王朝の意思と、認
識能力を超えた広大な平原の相乗効果で作り出されたものです。
伝搬距離が限られ、1秒もしないうちに消える音声と比べて、時
空間に遍在する安定性に文字の真骨頂があるといえます。
 そして、約6000年前にヨハネス・グーテンベルグが活版印
刷技術を考案したことで、情報の流通量が非常に増えたのです。
印刷技術の開発によって、紙に文字を印刷して残せるようになり
聖書などが印刷され、普及したのです。グーテンベルクの活版印
刷機は、羅針盤、火薬と並び、ルネッサンスの三大発明のひとつ
といわれています。
 そして約145年前のグラハム・ベルによる電話の発明です。
ちなみに、グラハム・ベルが、電話機を発明してから14年後の
1890年(明治23年)、日本初となる東京〜横浜間での電話
サービスが開始されています。電話の登場でコミュニケーション
のスビートは格段に上昇し、さらに約50年前の米国でのインタ
ーネットの原型である「アーパネット」の登場と、約30年前の
インターネットの本格的普及により、世界中が瞬時につながるよ
うになったのです。
 そして、ネットワークの進化は、それにとどまらず、ソーシャ
ルネットワークサービス、SNSによって、人と人がデジタルネ
ットワークにつながり、さらに「人と人」だけでなく、「人とモ
ノ」、すなわち、IоTがつながろうとしています。これについ
て、尾原和啓氏は次のように述べています。
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 日本でも開始された次世代の通信規格「5G」は単に通信速度
が高速化されただけではありません。遅延が起きにくく、かつ、
多数の機器を同時に接続できるようになります。そのため、Iо
Tがより一段と進むことが期待されています。人とモノをつなぐ
技術も整いつつあります。ネットワークを物理的な限界を超えて
劇的に加速し、強化する。それがデジタル化の本質と言えます。
            ──島田太郎/尾原和啓著/日経BP
              『スケールフリーネットワーク/
             ものづくり日本だからできるDX』
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 以上は、ユヴァル・ノア・ハラリ氏によるネットワークの理論
ですが、現在、われわれがいつも使っているWWW(ワールド・
ワイド・ウェブ)についての新しい発見があったのです。その研
究の中心者は、アルバート=ラズロ・バラバシ教授です。
 バラバシ教授は、WWWの形は「ランダムネットワーク」にな
ると予想していたのですが、そうならなかったのです。ネットワ
ークの構成要素を「ノード」といいますが、こういうネットワー
クでは、大多数のノードを持つ、つながり、これを「リンク」と
いいますが、そのリンクの数がほぼ同じ範囲に収まるのが特徴に
なります。これを「ランダムネットワーク」といいます。
 ランダムネットワークでには、平均的なノードはこの程度のリ
ンクという「スケール」というものがあります。これを「尺度」
といいます。
 しかし、WWWの構造は、それまで考えられてきたような均質
な性質をもっているものではなく、スケールフリー性と呼ばれる
新しい性質をもっていることを発見したのです。すなわち、ネッ
トワークにおける個々のノードと、それらをつなげているリンク
数の分布は、均質、ランダムな事象に基づく正規分布ではなく、
そこでは、わずかなリンクしかもたない大多数のノードと莫大な
リンクをもつノードが共存していることを見出したのです。19
99年のことです。
 このことを数学的な言葉でいえば、「べき乗分布」を示すこと
を明らかにしたのです。この分布には全体を表現できる平均値は
理論上存在せず、このことから同氏は、全体を表現する平均値の
ような尺度がないという意味で、その性質を「スケールフリー」
と呼んだのです。
 このスケールフリーネットワークについて、尾原和啓氏は次の
ように述べています。
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 当時の研究によると、調査したウェブページの80%以上は、
リンク数がわずか4未満でした。一方、0・01%にも満たない
ごく一部のページに、1000以上のリンクが集中していたので
す。そこにはこれまでに研究されてこなかった、まったく新しい
ネットワークの姿がありました。ランダムネットワークには平均
的なノードはこのくらいのリンク数を持つといぅ「スケール(尺
度)」があります。ところが、この新しいネットワークには特徴
的なスケールも平均的なノードも存在しません。調査対象のウェ
ブサイトが、1000個でも1万個でも1億でも、リンク数のグ
ラフは同じ形を措くのです。そこでバラバシ教授は、このネット
ワークを「スケールフリー(尺度がない)ネットワーク」と呼ぶ
ことにしました。
      ──島田太郎/尾原和啓著/日経BPの前掲書より
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 インターネットというネットワークは、ここでいうところのス
ケールフリーネットワークなのです。このネットワークについて
さらに考えていくことにします。
             ──[デジタル社会論U/008]

≪画像および関連情報≫
 ●ネットワーク科学のイノヴェイターがたどり着いた「成功の
  法則」:アルバート=ラズロ・バラバシに訊く
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   あの世ではなく、この世で幸せをつかみ取るために、人類
  は「成功」という二文字を必死に追いかけている。そのため
  の方法論として広く知れ渡っているのが、「夢を描き、必死
  で努力せよ」というものだろう。
   しかし、そこには決定的に抜け落ちている視点があると、
  アルバート=ラズロ・バラバシ教授は指摘する。気の早い読
  者のため先に結論を述べておくと、努力して「成果」をあげ
  ることと、「成功」をつかむことは、区別して考えなければ
  ならないのだ。
   たとえば、スポーツの世界を考えると、分かりやすいだろ
  う。100メートル走において、世界1位と世界2位の「成
  果(タイム差)」は極めてわずかなものの、「成功(得られ
  る名誉や報酬)」という観点ではとんでもない差が開いてい
  る。あるいは、アートの世界も同じだろう。ヒットチャート
  の1位になるのは、必ずしも「一番いい作品」ではない。
   さらにいえば、科学やビジネスなど、実は多くの分野にお
  いて「成果」と「成功」の分離が起きているとバラバシは指
  摘する。なぜだろうか?
   謎を解く鍵は、「ネットワーク思考」にある。バラバシは
  様々な分野における「成功」をネットワークという観点から
  研究することで、これまで知られていなかった新たな「成功
  の法則」を見つけ出したのだ。それらを一般向けにまとめた
  のが、『ザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普
  遍的法則」』(江口泰子 訳、光文社 刊)である。
                  https://bit.ly/3nngvGR
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アルバート=ラズロ・バラバシ教授.jpg
アルバート=ラズロ・バラバシ教授
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | デジタル社会論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする