2021年04月27日

●「ネットワークはどう生成されるか」(第5479号)

 3回目の緊急事態宣言の発出です。「またかよ」というのが国
民の本音であると思います。新型コロナウイルスの感染を防ぐの
は、PCR検査とワクチンが重要といわれます。しかし、日本は
1年もあったのに、この2つともクリアされていないのです。検
査体制は依然として盤石ではないし、ワクチンにいたっては、そ
の接種率は世界でも最下位に甘んじています。
 加えて、4月25日の北海道の衆議院選挙、長野選挙区、広島
選挙区の重要な3選挙に与党は3連敗するという最悪の結果を招
いていますが、これは菅政権のコロナ対応の不満も入っていると
いわれます。
 与党にとって、今回勝てる可能性があったのは、唯一保守王国
の広島選挙区だけだったといえます。北海道は最初から候補を立
てず、不戦敗のかたちをとったので、広島で勝てば、1勝1敗1
不戦敗というかたちで、何とか面子が保てるからです。
 それほど大事な広島の選挙ですが、自民党として、総力を結集
して選挙を戦ったかというと、そうではないのです。河井案里氏
のときは、安倍首相をはじめ、菅官房長官など、党の幹部を何回
も広島に投入し、それに加えて、候補者に党から1億5千万円も
の資金を投入して勝ち取ったのに、今回は菅首相は選挙の応援に
入らず、地元の県連会長である岸田前政調会長に全責任をとらせ
るかたちで、責任回避を図っています。菅陣営から見れば、これ
で岸田文雄氏というライバルの力を削ぎ、総裁選での優位を得よ
うという作戦だったのではないかといわれています。
 以上が、昨日から今日にかけての状況です。ここから、デジタ
ル社会論の話に入ります。
 世界的なイスラエルの歴史学者であり、哲学者でもあるユヴァ
ル・ノア・ハラリ氏という人がいます。ヘブライ大学歴史学部の
終身雇用教授であり、世界的ベストセラー『サピエンス全史文明
の構造と人類の幸福』、『ホモ・デウステクノロジーとサピエン
スの未来』の著者でもあります。
 そのユヴァル・ノア・ハラリ氏は、英国の著名な経済誌『フィ
ナンシャル・タイムズ』に、新型コロナウイルス後の世界に関し
て、一文を寄せています。その冒頭の一節をご紹介します。興味
があれば、全文を読んでいただくことは可能です。
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 人類は今、グローバルな危機に直面している。それはことによ
ると、私たちの世代にとって最大の危機かもしれない。今後数週
間に人々や政府が下す決定は、今後何年にもわたって世の中が進
む方向を定めるだろう。医療制度だけでなく、経済や政治や文化
の行方をも決めることになる。私たちは迅速かつ決然と振る舞わ
なければならない。だが、自らの行動の長期的な結果も考慮に入
れるべきだ。さまざまな選択肢を検討するときには、眼前の脅威
をどう克服するかに加えて、嵐が過ぎた後にどのような世界に暮
らすことになるかについても、自問する必要がある。そう、この
嵐もやがて去り、人類は苦境を乗り切り、ほとんどの人が生き永
らえる――だが、私たちは今とは違う世界に身を置くことになる
だろう。              https://bit.ly/32KW795
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 なぜ、ユヴァル・ノア・ハラリという人物を取り上げたのかと
いうと、「ネットワーク」というものの根源を独自の視点でとら
えているからです。少し学問的な話になりますが、それはなかな
か興味深いものです。このハラリ氏には、『サピエンス全史』と
いう、ベストセラーズがあります。ここでは、人間と他の生物の
違いについて述べられています。
 ハラリ氏は、チンパンジーの群れの上限はおよそ50頭である
と述べています。なぜ、50頭以上のネットワークが形成されな
いのかというと、群れの個体数が増えるにしたがって、秩序が不
安定になって、群れは分散してしまうからです。
 しかし、人間は50人という壁を突破しています。そこで重要
な役割を果たしたのは「うわさ話」、すなわち「情報」であると
いっています。誰が信用できるのか、誰が何をしているのかとい
う「うわさ話」という情報を集団で共有することによって、人間
の集団は、50人を超えることができたというのです。しかし、
そういう情報共有でまとまっている集団のサイズは150人であ
るといっています。それよりも大きな集団になると、名前と顔が
一致しなくなり、「うわさ話」という情報が機能しなくなるとい
うのです。
 尾原和啓氏は、ハラリ氏の主張を取り上げ、それに基づいて、
次のように述べています。
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 歴史を振り返ると、古代ローマの争いを見ても、中国の赤壁の
戦いを見ても、何万人、何十万人という人間が集まり、同じ目的
のもとで力を合わせて戦っています。これこそ他の生物にはでき
ない、人類だけが獲得した能力です。
 巨大なネットワークを作り、目的を共有する共同体として動け
ることこそ、ほかの生き物にない人間の特徴です。ネットワーク
の力によって地球上で王者として君臨するようになりました。そ
して、そのネットワークの威力を強化してきたのがテクノロジー
です。         ──島田太郎/尾原和啓著/日経BP
              『スケールフリーネットワーク/
             ものづくり日本だからできるDX』
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 「赤壁(せきへき)の戦い」とは、中国後漢末期の208年、
長江の赤壁(現在の湖北省咸寧市赤壁市)において起こった曹操
軍と孫権・劉備連合軍の間の戦いのことです。このとき、数10
万とも言われる兵と朝廷の権威を擁する曹操の大軍が動員されて
います。つまり、何10万人という人間が集まり、それが一体と
なって、同じ目的のために力を合わせて、戦っているのです。こ
れは人類にしかなしえないことであるというのです。
             ──[デジタル社会論U/007]

≪画像および関連情報≫
 ●コロナ危機、ハラリ氏の視座 「敵は心の中の悪魔」
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   新型コロナウイルスによる感染症の脅威に世界中がすくん
  でいる。私たちはどう立ち向かうべきなのか。人類史を問い
  直し、未来を大胆に読み解く著作で知られるイスラエルの歴
  史学者、ユヴァル・ノア・ハラリさんが電話でのインタビュ
  ーに応じた。今まさに分かれ道にさしかかっていると言う。
  ――ウイルスの感染拡大で、私たちはどのような課題に直面
  していると考えますか。
   世界は政治の重大局面にあります。ウイルスの脅威に対応
  するには、さまざまな政治判断が求められるからです。三つ
  の例を挙げてみましょう。
   まず国際的な連帯で危機を乗り切るという選択肢がありま
  す。すべての国が情報や医療資源を共有し、互いを経済的に
  助け合う方法です。他方で、国家的な孤立主義の道を選ぶこ
  ともできる。他国と争い、情報共有を拒み、貴重な資源を奪
  い合う道です。どちらの選択も可能で、政治判断に委ねられ
  ています。また、ある国はすべての権力を独裁者に与えるか
  もしれない。独裁者がすでにいる場合もあれば、新たな独裁
  者が生まれる場合もあります。一方で、別の国では民主的な
  制度を維持し、権力に対するチェックとバランスを重視する
  道を選ぶでしょう。       https://bit.ly/3tRUC4F
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ユヴァル・ノア・ハラリ氏.jpg
ユヴァル・ノア・ハラリ氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする