2021年04月15日

●「中国ハイテク企業に吹く強い逆風」(第5471号)

 中国では「科創板」という新しい株式市場が2019年から設
立されています。上海証券取引所による開設です。中国において
「科創」とは科学技術と創新(イノベーション)を意味します。
─────────────────────────────
    ◎「科創板」
     Science and technology innovation board
─────────────────────────────
 科創板は、米中対立が激しさを増していた2018年11月に
習近平国家主席が、創設を命令したものです。資本面で米国に依
存しない体制を整えて、半導体や医療・バイオ、軍需産業などに
成長資金を流し込みたいからです。
 中国の最高権力者である習主席が推奨する株式市場であるので
当然上場が殺到し、開設以来260社に迫る勢いです。しかし、
ここにきて大きな問題が起きつつあります。それが、2021年
4月13日付、日本経済新聞朝刊のトップ記事です。
─────────────────────────────
 ◎中国ハイテク新興に逆風
  アリババ締め付け/米中対立/上場取りやめ88社
       ──2021年4月13日付、日本経済新聞朝刊
─────────────────────────────
 この2021年4月13日付の記事と、昨日の2021年4月
11日付の記事とを比較して見ることにします。
─────────────────────────────
◎2021年4月13日付記事
 ここにきて中国を代表するユニコーン(企業価値が10億ドル
=約1100億円以上の未上場企業)などが新規・上場を中断・
中止する事例が増えており、年初からの3ヵ月半で88社に達す
る。2019年7月から20年末までの1年半の累計中止者数は
64社を大きく上回る。
◎2021年4月11日付の記事
 中国企業の米国上場の勢いは続いている。中国のメディアによ
ると、2020年は、中国のスタートアップ34社が、米国で上
場、21年1〜3月には20社が上場した。さらに20社近くが
SEC(米証券取引委員会)と米国の上場の準備を始めている。
30社以上が米国上場を検討しているもようだ。
─────────────────────────────
 問題は、なぜ中国のハイテク企業が「科創板」を敬遠するよう
になったかです。それは、アリババ傘下の金融会社、アント・グ
ループの上場を直前に差し止めるなどの中国政府の不透明な市場
運営に強い懸念をもったからといわれています。そのため、中国
のスタートアップ企業の多くが、米中対立が深まるなか、続々と
米国市場に上場ラッシュをかけているのです。
 [上海/香港 4月12日 ロイター]は、これに関して、次
の報道を行っています。
─────────────────────────────
 中国ハイテク新興企業の間で、中国版ナスダック市場への上場
計画を中止する動きが広がり、一部は香港での上場を視野に入れ
ている。アリババグループ傘下の金融会社アント・グループが計
画していた370億ドル規模の新規株式公開(IPO)が、昨年
11月に延期されて以降、中国規制当局がIPO申請企業への審
査を強化させているためだ。
 ロイターが中国の取引所への申請書類を調べたところ、アント
のIPO中止以来、100社以上が上海の「科創板(スター・マ
ーケット)」と深センの「創業板(チャイネクスト)」への上場
申請を自主的に取り下げたことが分かった。
 バンカーや企業幹部によると、前代未聞の相次ぐ撤回の背景に
は、上場目論見書の審査が規制当局によって急激に厳格化され、
IPOの延期や却下、さらには処罰にまでつながっている状況が
ある。企業があわてて申請を取り下げる様子は、中国のIPOの
質、そして引受会社によるデューデリジェンスの頑健性に疑問を
生じさせる。
 この傾向が続けば、香港やニューヨークの取引所のような世界
的取引所に対抗したいという中国の野望は危うくなる。折しも中
国は海外上場企業を呼び込むための新取引所の設置を検討中だ。
                  https://bit.ly/2Rl57iz
─────────────────────────────
 どうやら、科創板への上場までに要する期間が長期化している
のです。その期間は、従来の平均6カ月から同12カ月に延び、
現在100社以上が科創板への上場を待っている状態だというこ
とです。なぜ、長期化しているかですが、IPO案件数件を抱え
る投資銀行関係者によると、「規制当局が細部の点検や立ち入り
検査に執ように関心を払い、企業を脅して追い払っている」と説
明しています。
 このような状況のなかで、バイデン米政権による中国ハイテク
企業への対立姿勢も厳しいものがあります。バイデン政権は、4
月8日、中国でスーパーコンピュータの開発を手掛ける企業や研
究機関など、7社・団体に事実上の禁輸措置を発動すると、発表
しています。
 トランプ米政権以来のことですが、中国を中国国民と中国共産
党に分けて発言しています。2020年8月2日、ポンペオ国務
長官(当時)は、中国製アプリに関して、次の厳しい発言を行っ
ています。
─────────────────────────────
 TiKTоKやテンセントのウィーチャットは、中国共産党に
直接情報を流している。        ──ポンペオ国務長官
─────────────────────────────
 中国の「国家情報法」を前提にした発言です。このような法律
を作れば、中国企業は、いずれは、中国親派国以外の世界中の国
から締め出されてしまうことは確実です。
              ──[デジタル社会論/071]

≪画像および関連情報≫
 ●中国は人治国家?それとも法治国家?
  ───────────────────────────
   中国に住んでいると、様々な場面で不条理というか、ルー
  ルが存在しないのではないかと思う場面に遭遇する。何か新
  しい法律が出来ると、それをただ守るのという考え方でなく
  どのように対応するかを考えるといった姿勢がその典型であ
  る。まさに「上有政策,下有対策」(上に政策あり、下に対
  策あり)という言葉そのままである。これが中国を「人治国
  家」と感じる瞬間である。
   しかし、実際にはどうなのだろうか。労働争議や民事裁判
  の際も、全て証拠物件に基づいて話をする必要があり、特に
  当事者の証言は、あまり重視されない。徹底的な証拠主義を
  取っている。
   例えば残業の未払いに関する労働争議であれば、残業をさ
  せたという証拠物件が必要になる。第三者の証言や命令書な
  ど具体的な証言が必要になる。法治国家であれば当然と言え
  ば当然だが、中国の混沌としたイメージからは意外と感じる
  人も多いのではないでしょうか。
   ではなぜ、多くの人が人治国家として中国を感じているの
  だろうか。それは労働争議や民事争議に発展しているケース
  を見ていくとわかってくる。一番の原因は中国に法律が、非
  常にラフであり裁判官の裁量権が非常に大きく(裁量できる
  範囲が広く)、過去の判例にあまり沿わない結論が出る可能
  性があるという点である。    https://bit.ly/3g0NjDQ
  ───────────────────────────
ラッキンコーヒー上場時セレモニー.jpg
ハイテク企業の上場誘致に再起動
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする