2021年04月13日

●「国際社会のルールに従わない中国」(第5469号)

 2021年4月10日付の日本経済新聞の夕刊に次の記事が掲
載されていました。
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  アリババに罰金3000億円/中国当局、独禁法違反で
     ──2021年4月10日付、日本経済新聞夕刊
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 驚くのは罰金の額の大きさです。中国で独禁法を管理する国家
市場監督管理総局が、これまでに課した罰金額では、2015年
の半導体大手の米クアルコムの60億8800万元(約1000
億円)が最高額でしたが、それが3倍の3000億円ですから驚
きです。アリババの2019年の中国国内の売上高(4557億
1200万元)の4%が罰金が対象になったのです。
 これは、アリババの創業者であるジャック・マー(馬雲)氏に
対する習近平国家主席の怒りの現れです。馬雲氏は、2020年
10月、フィンテック企業に対する政府の過剰規制に公の場で政
府を批判し、習近平主席の怒りを買ったのです。
 これがもとで、事実上、馬雲氏の支配下にあるアント・グルー
プの新規株式公開(IPO)が差し止められています。アント・
フィナンシャルは事実上、馬雲氏が経営権を握っており、そのI
POは、過去最大規模になると予想されていたのです。これにつ
いては、2月17日のEJ第5430号〜第5432号に詳しく
記述しています。
 アントグループの上場は現在も棚上げにされたままです。なお
上記の日経夕刊の記事は、次のことを指摘してしめくくられてい
ます。アリババはもうダメかもしれないのです。
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 欧米メディアは、中国政府がアリババに対し、傘下のメディア
関連の一部の資産を処分するように要求したとも報じている。香
港英字紙サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)な
どが売却対象になる可能性があるという。こうした動きは、アリ
ババの日々のEC事業にも影を落としつつある。取引先の一部か
らは、「アリババとの取引をやめることはないが、今までより同
社との距離を置くようにしている」との声も出ている。
       ──2021年4月10日付、日本経済新聞夕刊
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 習近平主席は「中国は法治国家である」とよく発言します。し
かし、中国は法治国家ではありません。それは、法の概念が西側
社会と違うからです。
 西側社会では、法とは、統治者や王などの支配者を縛るもので
あり、国民に対する権利章典の意味も存在します。権利章典とは
人権を規定した章典のことです。しかし、中国などの儒教国家に
おける法とは、支配者が立場の弱いまたは低いものを律するため
に存在するのです。米国の独立宣言の文面に、この言葉が書かれ
ています。この言葉は、7月4日の独立記念日に無数の集会で朗
読され、何世代にもわたり学童に暗唱され、あらゆる政党の政治
家によって引用され、裁判所の判決の中で頻繁に言及されます。
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 われらは次に述べる事柄は自明の真理と信じる。すなわち、人
はすべて平等に創られている。創造主によって、人は、生存、自
由そして幸福の追求という他者から侵されることがない権利を与
えられている。これらの権利を確保するため、政府は人々の間に
樹立されるのであり、その正当な権力は、被統治者の同意に基づ
く。  ──米国の独立宣言より。  https://bit.ly/323wGz3
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 これに対して中国などの儒教国家における「法」は支配のため
の「法」であり、概念そのものが異なるのです。しかし、力の弱
かった時の中国は、この国際社会の法に縛られ、大変苦労したと
考えられています。
 しかし、力をつけた現在では、公然と国際法を否定し、自らの
支配するための「法」を世界に対して押し付けるようになってき
ています。「小が大に事えること」──事大主義を中国は、東ア
ジアの国々に押し付け始めたのです。「昔の中国とは違うぞ」と
ばかり、中華の天子が世界の中心であり、その文化や思想は神聖
である「中華思想」を押し付けるようになったのです。
 2019年4月のことです。習近平国家主席は、中国共産党機
関紙「求是」において論文を発表し、次のように述べています。
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 「中国の特色ある社会主義はあくまでも社会主義であって、何
か他の主義ではない。一国がどのような主義を実行するかに関し
て鍵を握るのは、その主義がその国家が直面する歴史的課題を解
決できるかどうかである。中華民族が貧弱で、列強に搾取されて
いた頃、あらゆる主義や思想が試された。資本主義の道は切り開
けなかった。改良主義、自由主義、社会ダーウィニズム、無政府
主義、実用主義、ポピュリズム、無政府組合主義など、外から続
々と、流れ込んできたが、どれも中国の前途と運命に関わる問題
を解決できなかった」と述べている。     ──渡辺哲也著
        『2030年「シン・世界」大全』/徳間書店
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 この習近平主席の発言は、己の力を過信した傍若無人の発言で
あるといえます。これは、これまで西側諸国が長年にわたって作
り上げてきた国際社会のルールには中国は従わないぞと宣言した
に等しいからです。
 中国は、その翌年の2020年7月1日に、香港国家安全維持
法を施行しています。習近平国家主席の考え方に基づいて発令さ
れた禁断の法律の施行です。このようにして香港返還時の「英中
共同声明」で定められた「1国2制度の50年間維持」の約束は
約束の半分以上の年数を残して、あっさりと反故にされてしまっ
たのです。香港返還は1997年7月1日に行われているので、
わざわざその記念日に香港国家安全維持法(国安法)を施行して
いるのです。        ──[デジタル社会論/069]

≪画像および関連情報≫
 ●「香港激震/踏みにじられた一国二制度」(時論公論)
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   イギリスから返還23周年の記念日を1日に迎えた香港で
  は、施行されたばかりの国家安全維持法に反対する香港の人
  たち1万人が、身の危険をかえりみず抗議デモを行い、警官
  隊とぶつかりました。香港当局の発表によりますと、これま
  でに国家安全維持法に違反したとされる10人を含む、合わ
  せておよそ370人が逮捕されたということです。香港の人
  たちの激しい怒りに対して、中国政府で香港問題を担当する
  責任者は次のように述べて法律の施行を正当化しました。
   「この法律は、香港が正常な軌道に戻る転換点となるもの
  だ。香港の返還23年に合わせた『誕生日プレゼント』であ
  り、将来、その価値が表れてくるだろう」
   それでは、今回、香港議会の頭越しに北京の中央政府から
  押し付けられた形の香港国家安全維持法とは、どのような法
  律なのでしょうか。
   発表によりますとこの法律は、▽国家の分裂や▽政府の転
  覆、▽テロ活動、それに▽外国勢力との結託によって、国家
  の安全に危害が及ぶ犯罪を処罰するものです。最も重い罪に
  は「終身刑」が課せられると規定されています。また、香港
  政府からの管理を一切受けずに、中央政府が独立して取り締
  まりができる出先機関も設けられます。さらに容疑者を中国
  本土で裁判にかけることもできると規定されています。
                  https://bit.ly/3mAgJK4
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香港激震/踏みにじられた「一国二制度」.jpg
香港激震/踏みにじられた「一国二制度」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする