2021年04月12日

●「中国は経済で米国に対抗できるか」(第5468号)

 最近つくづく感ずることがあります。それは、日本の国力が劣
化しつつあるということです。典型的なのは、日本の新型コロナ
ウイルス対応のワクチン接種率の異常なほどの低さです。202
1年4月9日現在のG7の人口100人当たりのワクチン接種回
数は次の通り、日本は、ワクチンそのものの考え方の違いもある
でしょうが、ダントツの最下位です。
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        英国 ・・・・ 56・1回
        米国 ・・・・ 51・7回
       ドイツ ・・・・ 19・5回
      イタリア ・・・・ 19・5回
      フランス ・・・・ 19・1回
       カナダ ・・・・ 18・6回
        日本 ・・・・  1・2回
                  https://bit.ly/3uBxQ10
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 しかし、経済という側面から見ると、日本は世界第3位とはい
え経済大国であり、それなりの地位を築いています。キャッシュ
フロー分析というものがあります。この手法で日本の生存可能年
数を算出してみます。現在の日本は、世界第2位の1・4兆ドル
の外貨準備を保有しています。それと、世界第1位の対外純資産
3・1兆ドルを抱え、2009年から2018年の年平均のドル
・キャッシュフローは740億ドルとなっています。
 外貨準備の1・4兆ドルと対外純資産の3・1兆ドルを合計し
て4・5兆ドル──1ドル=109円とすると、日本は約491
兆円のドルを保有しています。ほぼ日本の国家予算に匹敵する額
になります。これだけあれば、食糧とエネルギーの調達には、年
平均で2000億ドル必要ですが、キャッシュフローがなくなっ
たとしても、約20年は生存できる計算になります。これは、そ
れで大変なことであると思います。
 しかし、問題点もあります。日本の問題点について、、白井一
成氏は次のように指摘しています。
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 現在は、ドルストックを豊富に抱え、ドルを毎年稼いでいるか
らドル円の為替相場は安定し、いつでもドルを調達できるわけで
あるが、外貨準備の中のドルの構成比は95%と高いと推定され
る一方で、金の構成比は3%とかなり低い。仮に金が高騰した場
合、ヨーロッパ諸国(ドルの構成比は27%程度と推定されるの
に対して、金の構成比は52%と推定される)に逆転される可能
性がある。これは一例であるが、資産価値は相対的であるため、
常にポートフォリオ的な発想が必要である。
 また、対内投資は他国に比べ圧倒的に低い。過去の巨額の貿易
黒字にあぐらをかき、日本の中に魅力的な投資先を作ってこなか
ったということであるが、今後は貿易が縮小する中で、投資受入
れは死活問題である。しかし、見方によっては投資受入れ余地が
あると前向きに考えることもできる。投資環境を整備し、海外か
らの投資を喚起すれば、膨大な外貨を獲得できる可能性がある。
     ──遠藤誉・白井一成/中国問題グローバル研究所編
 『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』/実業之日本社
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 米中が徹底的に対立し、中国が台湾や尖閣諸島への軍事圧力を
強めた場合、米国は、同盟国を巻き込んで、中国に対して徹底的
な経済制裁を仕掛けるはずです。それに中国は耐えられるでしょ
うか。それだけの備えが中国にあるでしょうか。
 4月1日のEJ第5461号でも少し述べたように、基軸通貨
国である米国とそうでない他国との関係は、銀行と一般企業との
関係に近いといえます。非常に弱い存在なのです。中国はよほど
経済をしっかり守らないと大変なことになります。
 その備えとして、中国は各国と通貨スワップ協定の締結に必死
になっています。2013年以降に中国が通貨スワップ協定を締
結したのは、40の中央銀行で、総額は3・7兆元(0・5兆ド
ル)に上がります。しかし、中国は、米国のFRBと通貨スワッ
プ協定を締結していないのです。
 各国の中央銀行と互いに協定を結ぶ目的は、自国に通貨危機が
起きたさい、自国通貨の預け入れと引き換えに、協定を結んだ相
手国の通貨をあらかじめ定めたレートで融通してもらえる協定で
す。日本も2018年に中国と2000億人民元の通貨スワップ
協定を締結しています。しかし、その契約内容の詳細は、公表さ
れていないのです。
 しかし、単に「通貨スワップ協定」という場合は、次のことを
意味しています。
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 通貨を対象とするデリバティブ(金融派生商品)取引のひとつ
で、異なる通貨間の金利と元本を交換する(スワップする)取引
を、「通貨スワップ」といいます。例えば、ドルでの支払いのた
めドル建て社債を発行して、通貨スワップで円に換えれば利払い
や元本償還が円になるため、将来の支払いが円貨で確定します。
                  https://bit.ly/2Q6C0yZ
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 中国の通貨スワップ協定は、3年周期で定期的にほとんど更新
されていますが、2021年に更改が予定されているのは、現在
中国と政治的対立が激化しているオーストラリア、それにジェノ
サイド問題で対応が注目される英国が更改期に当たっています。
 なお、日本も2021年の更改組になりますが、公開すること
になるはずです。なお、協定の有効期限は2021年10月25
日です。日本銀行のリリースによると、日銀は2000億人民元
が、中国人民銀行は3・4兆円が引出限度額として明記されてい
ます。そうする必要が生じたとき、日本は2000億人民元を、
中国人民銀行は3・4兆円を引き出すことになっています。
す。            ──[デジタル社会論/068]

≪画像および関連情報≫
 ●顕在化した中国のアキレス腱、外貨ひっ迫と人民元不安
  武者リサーチ代表/武者陵司氏
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   世界経済と金融市場のアキレス腱が中国であることがはっ
  きりしてきた。国際金融市場を不安にしている資源国やアセ
  アン、アジアNIES諸国の通貨下落、経済悪化はひとえに
  中国経済の急減速を原因としている。鉄道貨物輸送量、粗鋼
  生産量、発電量、輸出・輸入額など中国の基本的なミクロデ
  ータはいずれもゼロないしはマイナス圏にあり、7%成長と
  いう公式統計は実態を反映せず、中国の経済は失速したとい
  う観測も誤りとは言えないかもしれない。また安定していた
  金融市場も上海株式は6月のピーク以降4割の大暴落となり
  8月には予想外の人民元の切り下げから元の暴落の懸念も顕
  在化した。そして、それまで中国情勢に対して超然としてい
  た世界の株式市場も、中国発の第二のリーマンショックぼっ
  発の懸念からか、8月末以降急落した。
   言うまでもなく米・日・欧先進国は経済拡大の途上にあり
  世界リセッションの可能性は低い。また中国リスクの高まり
  世界的株価下落に対しては各国では追加的政策、量的金融の
  増額、財政拡大が打ち出され、それも株価を支えるだろう。
  他方中国でも財政出動や金融緩和、資本取引規制や為替統制
  市場価格操作などが打ち出され、一定の成長復元、市場の鎮
  静化がなされる公算もある。リーマンショックのようなスパ
  イラル的悪循環の可能性は考えにくく、一方方向の株価下落
  にもならないだろう。      https://bit.ly/2PQ1JvO
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中国人民銀行.jpg
中国人民銀行
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする