2021年03月30日

●「デジタル通貨は3つの種類がある」(第5459号)

 ここまでの検討によって、「デジタル通貨」には、その発行主
体によって、次の3種類があることがわかります。
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   @「中銀デジタル通貨」
    ・中央銀行が発行するリテール向けデジタル通貨
     カンボジア「バコン」などCBDC
   A「デジタル民間通貨」
    ・民間の金融機関や企業が発行するデジタル通貨
     「リブラ」など
   B「デジタル地域通貨」
    ・自治体や商工会議所等が発行するデジタル通貨
     「白虎/Byacco」など
    ──宮沢和正著『ソラミツ/世界初の中銀デジタル通貨
      「バコン」を実現したスタートアップ』/日経BP
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 「中銀デジタル通貨」に火をつけたのは、間違いなくフェイス
ブックの「リブラ」であると思います。これに一番強く反応した
のは中国です。もともと中国は、7年前のビットコイン騒動のさ
い、ビットコインに資金が流れ続けると、通貨や金融政策を当局
が操作できなくなるという強い危機感を抱いたのです。そこで、
人民元に取って代わる仮想通貨などの台頭を抑えるため、使い勝
手のよいデジタル通貨を自ら発行する計画を立てたのです。
 情報によると、そのリブラは、各国当局に反対され、「ディエ
ム」と名称を変更し、複数通貨のバスケットから、単一通貨に1
対1の価値を持つデジタル通貨に変更する方針であるということ
です。米ドルを裏付けとする「米ドル版リブラ」として、今年中
に登場するといわれています。
 興味があるのは「デジタル地域通貨」です。会津大学の「白虎
/Byacco」があります。これなら、どこの自治体でもやろうと思
えば、実現可能です。宮沢和正氏は、日本の現行法でも可能な次
のようなアイデアを提案しています。スマートコントラクトを使
うと、こんなこともできるのです。
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 デジタル通貨の特性として、ブロックチェーンのスマートコン
トラクトを活用し、発行主体が管理可能な範囲で、減価(インフ
レ)や増価(デフレ)などの施策を打つことで、消費促進や人の
動きを変えることが可能となる。
 増価や減価の事例としては、例えば1万円で1万1000円分
のデジタル地域通貨が購入可能で、それが1ヵ月以内に使用しな
いと1万円分の価値に戻ってしまうといった施策だ。これによっ
て消費を喚起することができる。1000円分のプレミアムの増
価、有効期限到来による1000円分の減価は、現行法でも対応
可能と考えられる。デジタル地域通貨はプレミアムをつけたり、
有効期限をつけたり、特定地域に限定したりなどの機能を持たせ
て、中銀デジタル通貨にできない地方創生や地域内での経済効果
をもたらしながら発展していくだろう。
                ──宮沢和正著の前掲書より
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 3月25日に閉幕した国際決済銀行(BIS)のイノベーショ
ンサミットにおいて中国の人民銀行デジタル通貨研究所の所長は
2022年の北京冬季五輪までに「デジタル人民元」の発行を宣
言しています。
 このような中国の積極姿勢に対して、これまでの日銀は、CB
DCに関して次のように見解を述べており、その態度はきわめて
消極的です。欧米も同じような見解です。
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 日本人は現金が好きであり、ATМはそこら中にある。お札の
偽造はないし、現金でまったく不便はない。キャッシュレスやデ
ジタル通貨は必要ない。           ──日銀の見解
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 しかし、その日銀も3月26日に「デジタル通貨/CBDCに
関する官民の連絡協議会」を立ち上げ、同日の初会合で2021
年4月から、2022年3月までの1年間にわたって、CBDC
の実証実験を次の3段階にわたって実施するとしています。
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◎第1段階
  コンピューターシステム上の実験環境で電子的にお金をやり
 取りし、不具合が生じないかなどを調べる。発行や流通といっ
 た通貨に必要な基本機能を検証し、こうした取引の記録システ
 ムも実験する方針である。
◎第2段階
  保有額に上限を設けるなどより高度な条件を設定する。オフ
 ラインでの決済や匿名性の確保、セキュリティー対策について
 も検証する。
◎第3段階
  民間事業者や個人が実際の支払いに使えるかを試すパイロッ
 ト実験に進む想定である。
       ──2021年3月27日付、日本経済新聞より
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 日米欧の金融当局も、今やデジタル通貨が喫緊の課題であると
いう認識に変わりはありませんが、デジタル通貨化を急ぐことに
よる「銀行離れを招くリスク」を恐れています。
 デジタル通貨があまりにも使い勝手が良すぎると、銀行預金か
らデジタル通貨に資金が一気に流れ、既存の金融システムが揺ら
ぎかねないリスクがあると、米FRBパウエル議長も、ドイツ連
邦銀行ワイトマン総裁も述べています。欧州中央銀行(ECB)
のラガルド総裁は、デジタル通貨には基本的には賛成ですが、実
際の導入は4〜5年後になるといっています。それだけに、中国
のデジタル人民元には強い懸念を示しています。
              ──[デジタル社会論/059]

≪画像および関連情報≫
 ●日米欧を置いてけぼりにする中国の「デジタル人民元」の猛
  スピード/真壁昭夫氏
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   現在、中国人民銀行(中国の中央銀行)が急速に人民元改
  革を進めている。その取り組みは大きく2つある。1つは、
  外貨準備を構成する資産の多様化(ポートフォリオの分散)
  だ。その一環として、人民銀行は米国債に加えて、わが国の
  国債などを購入している。
   もう1つは人民元のデジタル化だ。それによって、共産党
  政権は、資金フローの厳格な管理による通貨価値の安定と、
  人民元の流通範囲の拡大を目指している。近年、世界の中央
  銀行が、法定通貨のデジタル化(CBDC)への取り組みを
  進めているが、中国人民銀行のデジタル通貨開発には、主要
  先進国の中央銀行を上回る規模感とスピード感がある。
   人民元の国際化や今後の国際通貨体制に与える影響などを
  考えると、中国による日本国債取得よりも、人民元デジタル
  化のインパクトが大きい。長期的な目線で考えると、人民元
  のデジタル化が進み、それを用いる国が増えた場合、国際通
  貨体制は変化する可能性がある。
   今すぐではないにせよ、デジタル化された人民元の流通範
  囲が拡大するにつれて、世界の基軸通貨としての米ドル(ド
  ル)の覇権が揺らぐ展開は排除できない。中国人民銀行が人
  民元改革に取り組む背景には、共産党政権が人民元の為替レ
  ートの安定を目指していることがある。中国にとって重要な
  ことは、米国の意向に影響されずに、自国の社会・経済状況
  に合うよう為替政策を運営する国際的な立場を確立すること
  である。            https://bit.ly/3dfGlrl
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デジタル人民元.jpg
デジタル人民元
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする