2021年03月29日

●「会津大学地域通貨『白虎』の開発」(第5458号)

 カンボジア国立銀行のデジタル通貨「バコン」の開発には、福
島県会津若松市が深くかかわっています。ところで、なぜ、会津
若松市なのでしょうか。
 会津若松市というと、私は、会社の仕事で、携帯端末「ライフ
プランナー」の指導に訪れたことがあります。雪の降る寒い日で
営業職員が大勢集まる市の公民館のような場所で、指導したこと
を今でも鮮明に覚えています。
 会津若松市には、会津大学という大学があります。江戸時代の
会津は教育熱心な藩として知られ、日新館という輝かしい伝統の
藩校があったのです。しかし、会津地域には、長く4年制大学が
なかったので、新たに県立の4年制大学を設置することにしたの
です。大学の設置に当たっては、国際化、高度情報化社会が進展
する中で、世界的視野を持ち、将来の情報科学を担い、発展させ
る人材の育成が最も重要であると考え、コンピュータ理工学に特
化した大学とし、1993年4月に開学しています。
 カンボジアのデジタル通貨「バコン」が正式に発足したのは、
2020年10月のことですが、ソラミツ社は2020年7月に
は「ハイパーレッジャーいろは」を使った地域通貨「Byacco/白
虎」を開発し、会津大学内で正式運用を開始しています。会津若
松市の有限会社スチューデント・ライフ・サポート(SLS)社
株式会社AiYUМUとソラミツ社が組んで開発したのです。
 つまり、「白虎」は、会津大学のために開発された日本初のデ
ジタル地域通貨ということになります。そういうこともあって、
現在のソラミツ社の会津支社(会津大学産学イノベーションセン
ター内に設置)には、会津大学卒の学生が多く入社しています。
 ICT専門の4年制大学は、日本にはあまりないはずです。こ
の大学がどのような大学かについて、宮沢和正氏は次のように紹
介しています。
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 入学すると、1年生からプログラミングを徹底的に教え込まれ
大量の課題が課せられ、徹夜で作業をする学生もいる。3年生か
らは英語だけの授業が本格的に始まり、卒業論文や修士論文は英
語で書かなければいけない。4年間で卒業できるのは75%程度
だという。
 このような厳しい環境で育った学生はIT業界で評価が高く、
ヤフーやNTT、ドコモなど大手に就職する学生もいて、ここ数
年の就職率は97〜98%である。また、大学ではIT技術だけ
でなく、起業に必要な教育も実施され、自らベンチャー企業を立
ち上げる学生も多い。2017年3月末時点の大学発のベンチャ
ー企業は18社あり、学生数あたりでは全国屈指の数だ。
 先の世界大学ランキングでは、「教育リソース」、「教育満足
度」、「教育成果」、「国際性」の4項目で評価されるが、会津
大は教育満足度が87・4点、国際性が75・8点と高く、全体
の評価を押し上げている。
    ──宮沢和正著『ソラミツ/世界初の中銀デジタル通貨
      「バコン」を実現したスタートアップ』/日経BP
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 なにしろ会津大学の学部は理工学部しかないのです。それで4
年制です。そして、世界各国からICTの専門家を集め、たまた
ま冷戦終結と重なったことから、とくにロシアからは一流の研究
者が集まり、現在はカナダやインドなど17ヶ国から42人の研
究者が在籍し、教員の40%は外国人です。そのため、学内では
英語を使う機会が多くなっています。
 上記のスチューデント・ライフ・サポート社は、会津大学の学
生の生活支援と、大学と地域が身近な存在になることを目的とし
て、会津若松商工会議所の活動のなかから生まれています。現在
は、会津大学内食堂、売店、ブックセンター、カフェ、留学生用
寮、会津大学短期大学食堂、売店などを運営しています。株式会
社AiYUМUというのは、会津若松市が進めるICT関連整備
事業の民間運営会社です。
 つまり、地域通貨「白虎」は、大学の学生や食堂などのあらゆ
る支払いに対応できる地域通貨なのです。その特徴は、次の3つ
があります。
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          @   トークン型
          A   転々流通型
          Bブロックチェーン
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 仮想通貨の世界におけるトークンは、仮想通貨との違いも明瞭
ではなく、人によって定義があいまいです。「トークン型」とい
うのは、商品との引換券や代用貨幣という意味があります。つま
り、トークンとは「何か別の価値を代替するもの」という意味に
なります。たとえば、カジノのチップは、トークンの一例ですし
ギフトカードのように商品を購入できるものもトークンです。
 「転々流通型」は、人から人へ、企業から企業へと譲渡が繰り
返されるものを意味します。スイカとかパスモとかワオンなどの
電子マネーは、転々流通できません。つまり、トークン型と転々
流通型の2つの条件が揃うと、データ自体が現金と同じ価値を持
ち、銀行口座と関係なく使うことができます。つまり、決済され
た金額をそのまま仕入れなどで使うことができるのです。
 「ブロックチェーン」によって、改ざんや二重取引は不可能で
あり、ブロックチェーン同士の接続は容易であるので、複数のデ
ジタル地域通貨をつなぐこともできます。
 「白虎」は、会津大学の食堂と売店、ブックセンターなどで運
用を開始し、段階的に大学外へ広げる計画であるといいます。そ
して、スマートシティー構想を進める会津若松市の官民が普及を
支援すれば、「白虎」が会津市内全域で使えるようになると思わ
れます。「白虎」はカンボジアの「バコン」の技術を活用し、そ
れを日本向けのデジタル地域通貨に最適化したものです。
              ──[デジタル社会論/058]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ会津大学は“日本初”の「デジタル地域通貨」を
  導入したのか
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   会津大学は、2020年7月1日から、ソラミツ、スチュ
  ーデント・ライフ・サポート、AiYUМUと共同で「デジ
  タル地域通貨」の正式運用を開始する。売店やカフェテリア
  などで、法定通貨に連動するデジタル通貨を利用できるよう
  になる予定だ。会津大学が採用したのは、デジタル地域通貨
  「Byacco/白虎」である。
   「白虎」は、リナックスファウンデーションが主催するオ
  ープンソース開発コンソーシアムであるハイパーレッジャー
  から生まれたブロックチェーン基盤「いろは」を基に開発さ
  れた。非改ざん性を持つブロックチェーンを基盤にするため
  通常のキャッシュレス決済手段では困難な「転々流通(IC
  カード同士で一方ICカードに蓄積した額を他方に移転でき
  る仕組み)」を実現しているという。
   「白虎」は、日本初となるブロックチェーンを活用したデ
  ジタル通貨だ。その基盤にはソラミツとカンボジア国立銀行
  が共同開発した中銀デジタル通貨「バコン」の技術がある。
  バコンは2019年7月にパイロット運用を開始し、101
  4の銀行や決済事業者と接続して1万人以上のユーザーの送
  金や店舗での支払いなど本番環境のテスト運用をスタートし
  ている。このように実績がある基盤を用いたため、「白虎」
  は、“日本向けの最適化”が3カ月程度で完了するなど、開
  発コストの低減にも成功したという。
                  https://bit.ly/31rHbvC
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会津大学.jpg
会津大学
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする