2021年03月25日

●「『いろは』は具体的には何なのか」(第5456号)

 ここまで、宮沢和正氏の本に基づいて、ソラミツ社の「ハイパ
ーレッジャーいろは」について書いてきましたが、これは、いっ
たい何なのかということが今ひとつはっきりしません。そこで、
宮沢和正氏の本を参考にして、EJ風に解説を試みることにした
いと思います。
 ソラミツ社のウェブサイトを見ると、会社について次の説明が
あります。
─────────────────────────────
 ソラミツは、ブロックチェーン技術の開発と、これを活用した
新たなアプリケーションやサービスの提供を、目的とする会社で
す。私達はデジタル時代におけるユーザー主体の新たなアイデン
ティティ管理を、ブロックチェーン上で実現することを目指して
います。            https://soramitsu.co.jp/ja
─────────────────────────────
 「ハイパーレッジャー」は、オープンソースOSの「リナック
ス」の開発を推進してきたリナックス・ファウンデーションが始
めたものです。そもそもオープンソースとは何かというと、これ
についてウィキペディアに次の解説があります。
─────────────────────────────
 オープンソース (英: open source)とは、ソースコードを商用
非商用の目的を問わず、利用、修正、頒布することを許し、それ
を利用する個人や団体の努力や利益を遮ることがないソフトウェ
ア開発の手法。             ──ウィキペディア
                  https://bit.ly/31bCgyT
─────────────────────────────
 2016年10月に、ソラミツ社の「ハイパーレッジャーいろ
は」は、ハイパーレッジャー参加企業の投票による選考で、イン
キュベーション(育成)対象フレームワークとして、IBM、イ
ンテルという巨大企業と並んで選ばれています。ブロックチェー
ン・プラットフォームの世界標準候補としてです。これは、大変
なことです。
 2017年1月の時点で、ソラミツにはたった4人しか正規社
員はいなかったそうです。現社長の宮沢和正氏は5人目の正規社
員だったのです。しかし、2020年11月現在、事業の拡大に
応じて従業員が増加し、ソラミツグループは日本を含めて5法人
6ヶ国にオフィスがあり、70人規模に達しているそうです。
 「ハイパーレッジャーいろは」は、オープンソースであるので
ソラミツ社は、「いろは」によって、一切の収益を上げることは
できないことになります。それでは、ソラミツ社は、何によって
収益を上げるのかというと、次の3つを上げています。
─────────────────────────────
1.「いろは」を活用してアプリケーションを開発し、その販売
  を行うことと、システム・インテグレーションによる売上。
2.「いろは」をビジネスに活用するための開発・実行・管理ツ
  ール群、設計・開発支援などの技術コンサルティングなど。
3.「いろは」を活用したさまざまなサービスを提供する企業を
  他社と共同で立ち上げることでその収益をシェアすること。
    ──宮沢和正著『ソラミツ/世界初の中銀デジタル通貨
      「バコン」を実現したスタートアップ』/日経BP
─────────────────────────────
 「ハイパーレッジャーいろは」のソースコードは公開されてい
るので、他の企業がそれを使って、上記の3つのことをやること
はできます。しかし、当然のことながら、ソラミツ社が一番「い
ろは」の全体のアーキテクチャーの細部にいたるまで熟知してい
るので、通常ではこれを上回ることは困難です。
 宮沢氏の本には、「ハイパーレッジャーいろは」について、次
の記述があります。
─────────────────────────────
 APIは「C++」のプログラミング言語を使用して記述され
ているので、自分でAPIを追加することは可能であるが、それ
には「ハイパーレジャーいろは」全体のアーキテクチャーを知る
必要があり、容易ではない。
 「ハイパーレジャーいろは」はあえてチューリング完全を選択
せず、信頼できるAPIのみを経由して動作させることで、バッ
クドア(管理者や利用者に気付かれないよう秘密裏に仕込まれた
遠隔操作のための接続窓口)やバグの混入を防いでいる。
                ──宮沢和正著の前掲書より
─────────────────────────────
 きわめて専門的な内容ですが、「チューリング完全」とは何を
意味するのでしょうか。
 「チューリング完全」については、ウェブ上の「ブロックチェ
ーン用語集」に、次の説明があります。
─────────────────────────────
 計算理論で、ある計算のメカニズムがチューリング機械と同じ
計算能力がある場合、その言語をチューリング完全と呼ぶ。簡単
に言えば、あらゆる処理を実行できる計算能力を備えている性質
のこと。ビットコインはチューリング完全性を備えていないが、
イーサリアムでは、チューリング完全なプログラミング言語を実
装している。しかしイーサリアムは、チューリング完全性を備え
ることによって、何らかのバグが生じた時に、処理が永遠に終わ
らない「無限ループの問題」も持っている。
                  https://bit.ly/3lID9sp
─────────────────────────────
 「チューリング」というのは、英国の数学者、暗号研究者、計
算機科学者のアラン・チューリングのことです。ある計算モデル
がチューリングマシンと同等の計算能力を持つマシンということ
を意味しています。
 ここで「チューリングマシン」とは、万能なコンピュータのイ
メージを意味しています。これについては、明日のEJで述べる
ことにします。       ──[デジタル社会論/056]

≪画像および関連情報≫
 ●トヨタ、ブロックチェーンでGAFAに対抗 自動車・都市
  データを「民主化」
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   トヨタ自動車が、ブロックチェーン技術の開発に本腰を入
  れる。2020年3月16日、同技術を活用した4種類の実
  証実験を進めていると発表した。クルマの利用履歴などをブ
  ロックチェーンに記録し、他社のデータと連携させて便利に
  する。いわゆる「データの民主化」(同社)を実現し、個人
  情報を大量に囲い込む米グーグルなど「GAFA」に対抗す
  る。トヨタは2019年4月、グループで構成するブロック
  チェーンの研究開発組織「ブロックチェーン・ラボ」を立ち
  上げた。同年内に行った実証実験で「有用性を確認した」と
  いう。2020年度内に実サービスに近い形での実験を開始
  することに加えて、自社サービスの一部をブロックチェーン
  上で実行する考えだ。加えて、提携先を多く募って新しいサ
  ービスを模索する。
   「分散型台帳」とも呼ばれるブロックチェーンには、特定
  の事業者にデータを集中させない仕組みに加えて、改ざんを
  防ぎやすい特長がある。トヨタは「インターネット誕生以来
  の革命」と位置付けており、自動車業界に多くの利点をもた
  らすとみなす。さらにトヨタは、ブロックチェーンはデータ
  を皆で共有して管理する「民主化」に役立つとみており、個
  人情報などを独占するGAFAへの対抗手段にもなると考え
  ている。「データは特定の企業が所有するものではなく、皆
  で管理していくものだ」(トヨタの担当者)と訴えた。
                  https://bit.ly/3rgIgkC
  ───────────────────────────
アラン・チューリング.jpg
アラン・チューリング/2019
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする