2021年03月24日

●「『デジタル円』は本当にできるか」(第5455号)

 日本銀行は、2016年からソラミツのブロックチェーン「ハ
イパーレッジャーいろは」の存在を知っていたのに、使わず、同
じハイパーレッジャーのIBMのファブリックを使い、レイテン
シ(通信の遅延時間)があると結論づけています。日銀は、あま
り「デジタル円」には積極的ではないようです。
 しかし、カンボジア国立銀行は2016年末にソラミツ社にメ
ールを送り、2017年4月にカンボジア国立銀行とソラミツ社
は共同開発契約を調印。2017年末にプロトタイプイプが完成
しています。
 2019年7月に「バコン」の本番システムのテスト運用を開
始し、世界中で、誰でもアプリをダウンロード可能になっていま
す。そして、新型コロナが原因で少し計画が遅れたものの、20
20年10月に本番をスタートさせています。世界初のCBDC
の快挙です。
 しかし、ソラミツの宮沢和正氏の本によると、2020年2月
に日銀主催の会合があったのですが、日銀の幹部からソラミツに
対して、次の発言があったそうです。
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 カンボジアは金融システムが未整備だから、ブロックチェーン
が開始できた。日本は、一足飛びに新技術に移行しないし、すべ
きではない。
    ──宮沢和正著『ソラミツ/世界初の中銀デジタル通貨
      「バコン」を実現したスタートアップ』/日経BP
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 これに対し、宮沢和正氏は、「最初からやらないと決めつける
な」として、次のように猛反論しています。
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 そうではありません。カンボジアは先見の明と新しい技術に対
する理解、十分な調査と勇気があったから踏み出せたのです。日
本が古い技術にしがみ付いていると、デジタル人民元やリブラに
勝てず、世界から取り残されます。技術は日進月歩ですので、最
初からやらないと決めつけずに、小規模でブロックチェーンの実
証実験を行うべきであると思います。
                ──宮沢和正著の前掲書より
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 直近の日銀の対応として、2021年3月16日、日本経済新
聞社と金融庁主催のフィンテック・カンファレンス「フィンサム
/2021」において、黒田日銀総裁は、日銀のCBDCについ
て、次のように述べています。
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 現時点でCBDCを発行する計画はないとの考え方に変わりは
ないが、この春からいよいよ実験を開始する予定です。
                     ──黒田日銀総裁
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 日銀の実証実験に関しては、次の3段階が予定されているとい
われます。黒田日銀総裁がいう「この春からの実験」とは、「概
念実証1」を指していると思われます。
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【概念実証フェーズ1】
  システム的な実験環境を構築し、決済手段としてのCBDC
 の中核をなす、発行、流通、還収の基本機能に関する検証
【概念実証フェーズ2】
  フェーズ1で構築した実験環境にCBDCの周辺機能を付加
 してその実現可能性などを検証
 【パイロット実験】
  概念実証を経て、さらに必要と判断されれば、民間事業者や
 消費者が実地に参加する形でのパイロット実験を行うこと
                ──宮沢和正著の前掲書より
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 2016年はCBDC熱が高まった年といわれますが、それは
中国でもそういえるのです。習近平主席が「ブロックチェーン」
という言葉を使ったのは、2019年10月24日開催の政治局
学習会といわれていますが、遠藤誉氏によると、ブロックチェー
ンという言葉自体は、その前から使われているというのです。
 ブロックチェーンという言葉は、2016年3月16日の全人
代の最終日に、第13次五ヵ年計画(十三五計画と呼称)が決議
されていますが、そのなかに、ブロックチェーンという言葉が使
われているといいます。
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 モノのインターネット、クラウドコンピューティング、ビッグ
データ、人工知能(AI)ディープラーニング、ブロックチェー
ン、遺伝子工学などの新技術は、ネット空間を「人と人」から万
物のインターネット・パフォーマンス、デジタル化、スマート化
への駆動し、今や、それらが存在しない空間はないというところ
まで至っている。           ──遠藤誉・白井一成
        ・中国問題グローバル研究所(GRICI)編
 ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』/実業之日本社刊
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 2016年以来、「ブロックチェーン産業パーク」というもの
が、中国各地に雨後の筍のように林立し始めています。それ以来
ブロックチェーンに関する政策は大幅に増え、2019年におけ
る全世界のブロックチェーン関連政策は大幅に増加し、その数は
600を超えています。そのうち、267項目は中国であり、全
世界の45%を占めています。(添付ファイル参照)
 ブロックチェーン発展レベルでのトップ5大都市は、北京、深
せん、杭州、上海、広州の順です。さらに、中央人民銀行をはじ
めとした4大国有商業銀行を含む36の銀行がブロックチェーン
を応用した政策を実施しているといわれます。この分野でも中国
の技術の進展はすさまじい勢いがあります。
              ──[デジタル社会論/055]

≪画像および関連情報≫
 ●キャッシュレス大国、中国が推し進めるデジタル人民元とは
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   2019年は様々なプロジェクトが独自ネットワークをロ
  ーンチ、また大企業も続々とブロックチェーンのコンソーシ
  アムを組成(提携の発表)するなど、業界にとっても変化の
  大きな1年となりました。そんな中、15億人を超える巨大
  なユーザーベースを持つフェイスブックが6月に「リブラ」
  を発表したことは、大きな衝撃を与えましたが、その直後、
  中国から中央銀行発行の「デジタル人民元」発行に関しての
  報道が相次ぎ、その勢いはとどまることなく2020年に突
  入しました。
   中国のデジタル人民元(DCEP)は、中国の中央銀行に
  より発行が計画されている、人民元をデジタル化したものを
  指します。”Digital Currency Electronic Payment”
   デジタル人民元の発行が行われるのは、基本的に中央銀行
  から民間銀行に対してのみとなります。また、民間銀行が保
  有する人民元の紙幣の枚数以上の発行はできないため、極度
  なインフレやビットコインのような激しい価格変動は起こら
  ず、基本的には従来の人民元の紙幣同様に利用することがで
  きます。中国は国際ブランドである銀聯や、QRコード決済
  であるアリペイ、ウィーチャットペイなどすでにキャッシュ
  レスの形が浸透しており、キャッシュレス大国として知られ
  ています。デジタル人民元はそれらのように会社に依存する
  形の資金管理や決済とは違い、国が主導する形でのデジタル
  通貨発行ということになります。
                  https://bit.ly/3c9T53A
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各国ブロックチェーン政策数/2019.jpg
各国ブロックチェーン政策数/2019
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする