2021年03月16日

●「バコン導入のための準備の周到さ」(第5448号)

 ソラミツの社長、宮沢和正氏は、カンボジアにおけるデジタル
通貨導入を前提とするカンボジア国立銀行の準備の的確さと日本
における遅れについて、次のように述べています。
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 カンボジア国立銀行は、将来の金融システムを見据えて、20
15年ごろから国内約120行の銀行XМLベースの銀行API
(ISО−20022)の導入を義務化し、2017年には、参
照系・更新系を含む銀行APIの導入が完了した。さらに、最新
技術のISО−20022を活用したセンター・ハブ機能を中央
銀行内に設置し、このハブ機能と全銀行をつなぐ金融ネットワー
クを構築し、FASTネットワークと呼んでいた。
 日本の場合、銀行APIの導入の大枠方針が決まっているもの
の、すべての銀行に導入されておらず、銀行口座の入出金を行う
更新系のAPIが未整備である。さらに、センター・ハブ機能が
ないため、フィンテック事業者は、個別に各銀行と契約を結び、
個別に接続するための、多額な開発投資が必要となる。各銀行と
の接続仕様がそれぞれ微妙に異なるため、開発コストがさらに増
える。     ──宮沢和正著『ソラミツ/世界初の中銀デジ
  タル通貨「バコン」を実現したスタートアップ』/日経BP
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 ソラミツの社長、宮沢和正氏は、楽天エディー執行役員を務め
た人物です。数ある電子マネーのなかで、楽天エディーは、唯一
転々流通できる一歩進んだ電子マネーといわれています。
 しかし、銀行のAPIの整備が遅れている日本では、エディー
への銀行口座チャージを実現するには、各銀行と個別に折衝して
契約を締結しなければならず、一行接続するたびに数千万円の投
資が必要であったのです。その点、カンボジアでは、FASTと
いうセンター・ハブ機能を使えば、銀行一行ごとに交渉して契約
する必要はないのです。その点、カンボジアの方が日本よりはる
かに進んでいます。
 カンボジアの「バコン」がスタートする前には、「ウイング・
ペイ」とという決済サービスがカンボジア全土で普及していたこ
とは、3月9日のEJでご紹介した通りです。この件について、
宮沢和正氏は次のように述べています。
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 カンボジアにおけるモバイル送金事業者大手のウイング社は、
2009年にサービスを開始し、現在では、カンボジア全土に約
8000の両替所のような小規模店舗を展開している。
 これらの店舗で現金を預けて暗証番号を送信し、相手は最寄り
の店舗で現金を受け取ることが可能である。また、「ウイング・
ペイ」という決済サービスを開始し、約3万店の店舗などで支払
いが可能である。しかし、現金化する際に手数料がかかり、出金
金額に応じて0・28米ドルから1・5米ドルと比較的高い点が
難点とされている。また、万が一、ウイングが経営破綻した場合
預けている現金は保証されないのも欠点である。
 カンボジア国立銀行は、2017年4月のソラミツとの共同開
発調印の頃から、ウイングとは決して敵対しない、うまく連携し
て取り込んでいく」と明言していた。その理由は、農村部には、
銀行の支店がないが、ウイングは農村部も含めてカンボジア全土
に店舗網を展開しているからだ。ウイングと連携してこれら店舗
網を活用し、「バコン」を受け取った農村部の人々が現金に交換
するときにウイングの店舗を活用することを最初から考えていた
ためである。          ──宮沢和正著の前掲書より
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 つまり、カンボジア政府は、ウイングの店舗を銀行と同じよう
にバコンの交換所として扱ったのです。ウイングを「バコン」の
仲介業者として認定し、既に出来上がっているウイングのネット
ワークを上手に活用し、さらなる店舗拡充を続けさせたのです。
その結果、ウイングの店舗は3万店にまで拡大しています。
 その一方で、新たなQRコード決済を開始しようとする業者の
認可については禁止しています。カンボジア国立銀行は、これに
ついて次の声明を出しています。
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 今後、広域で使用可能な新たな決済手段を開始することは禁止
する。学校内や病院内などの限られた地域で使えるプリペイド決
済手段は問題ない。         ──カンボジア国立銀行
                ──宮沢和正著の前掲書より
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 宮沢和正氏の本によると、当初はカンボジア最大の銀行である
アクレダ銀行が反対の姿勢であったようです。アクレダ銀行は、
独自のインターネット・バンキング・アプリを先行的に開発し、
多くのユーザーをもっていたからです。つまり、同じようなこと
をアクレダ銀行も考えていたのです。そこに「バコン」の導入で
す。どこの銀行もバコンが使えるようになるので、先行者利益が
なくなってしまう。そのための反対姿勢です。
 しかし、現在では、アクレダ銀行も前向きにバコンを活用する
ようになり、バコンのユーザーへの発行金額も14行の約50%
を占め、他行を引き離しているようです。
 ここで問題になるのは、銀行間の競争領域をどうするかという
問題です。アクレダ銀行は、自行のインターネット・バンキング
や各種金融商品の販売、情報提供などの独自機能をバコンの標準
アプリに付加してカスタマイズしたいという要望を持っているの
です。つまり、各銀行は、独自機能を付加して差別化を図りたい
というわけです。そのためには、バコンシステムの中枢部で機能
するブロックチェーンを担うソラミツの協力が必要になります。
そこで、そういう仕事を担う現地企業とソラミツの合弁会社の設
立を望む声が多く上がってきたのです。これはソラミツ社として
も十分メリットがあり、願ってもないことであったのです。そし
て誕生したのが、合弁会社ソラミツ・クメールです。
              ──[デジタル社会論/049]

≪画像および関連情報≫
 ●駆け足で成長するカンボジア
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   豊かなものがどんどん入って、情報が飛び交うカンボジア
  は日々成長しています。エネルギッシュな熱気が街に溢れて
  いる、そんなカンボジアの今をイラストレーターの平尾香さ
  んがレポート!
   カンボジアってどんな国?私のイメージは、アンコールワ
  ット、地雷、ボランティア。ぐらいでした。それって、ひと
  昔の日本のイメージは?っていう質問に、スシ、フジヤマ、
  ゲイシャと答えられた時に、日本人なら、うーんという顔に
  なっちゃうのと同じ感覚じゃないかなぁと。
   この旅で、私のカンボジアのイメージはかなり広がりまし
  た。20代にバックパックを背負って旅したアジアの国々、
  お隣のタイとベトナムには訪れたことはあったけど、カンボ
  ジアを訪れるのは初めて。雰囲気は近いかな?湿気を含んだ
  ムンムンした熱気の中、屋台があって、カメラを不思議そう
  にみる子供達、トゥクトゥクタクシー、高床式の家、物売り
  タイダイ柄のTシャツ着たヒッピー欧米人。同じような光景
  は、今のカンボジアにもありましたが、時代は進んでおりま
  した。到着した空港からプノンペン市内中心部へ向かうタク
  シーの窓から街の景色が流れて行きます。スコールの雨の中
  車もバイクもトゥクトゥクも、すごい交通量。プノンペンの
  街は、高層マンションや商業ビルが、次々と建設されていま
  す。全部がゴールドなんていう派手なビルは中国資本なんだ
  そう。日本資本のイオンモールは、カンボジアではちょっと
  おしゃれな買い物スポットであり、デートスポット。
                  https://bit.ly/3vs4Hqb
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プノンペン市内のアクレダ銀行.jpg
プノンペン市内のアクレダ銀行
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする