2021年03月15日

●「銀行APIの整備が成否をにぎる」(第5447号)

 中央銀行によるデジタル通貨(CBDC)を発行するに当って
は、様々な準備が必要になります。何よりも必要なのは、銀行A
PIの整備の義務付けです。ところで「API」とは何を意味し
ているのでしょうか。ウィキペディアで調べると、次のように説
明されています。
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 API(Application Programming Interface)とは アプリケ
ーションプログラミングインターフェースのことで、ソフトウェ
アコンポーネント同士が互いに情報をやりとりするのに使用する
インタフェースの仕様のことである。   ──ウィキペディア
                  https://bit.ly/2OmXTK4
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 この説明では、素人にはわかりにくいので、さらにかみ砕くと
「APIとはソフトウェアの機能を共有できる仕組み」というべ
きです。これは、われわれがメインバンクを選ぶさいの基準を考
えてみると、理解できます。メインバンクを選ぶとき、ATМや
支店へのアクセスがよい銀行を選びますね。便利だからです。
 しかし、これは現金を扱うさいの利便性の判断基準であり、デ
ジタルの時代になると、銀行を選ぶ基準が違ってきます。これま
でATМで行ってきた残高照会やお金の引き落とし、振り込み、
送金などの処理をすべてアプリを通して行うことになります。
 このさいに、アプリを提供するフィンテック企業と、口座を管
理する銀行とのシステムの間を結ぶのがAPIであり、これはデ
ジタルの世界の銀行のATМです。つまり、APIとはソフトウ
ェア、すなわちアプリの機能を共有できる仕組みということにな
ります。したがって、APIを整備しない銀行は、選ばれない銀
行になってしまうことになります。
 カンボジア国立銀行は、2016年頃から各銀行に対して、A
PIの整備を義務付け、2018年頃には、ほとんどの大手銀行
が整備を完了させています。これに加えて中央銀行であるカンボ
ジア国立銀行がハブ機能を構築し、ほどんどの銀行が銀行API
を利用して、中央銀行の「FAST」というネットワークで接続
されています。バコンはこの銀行APIネットワークとFAST
経由で、銀行間で送金されています。これに関する日本の事情に
ついて、宮沢和正氏は、次のように述べています。
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 日本も銀行APIの整備を呼びかけているが、中央銀行や全銀
協にそのハブ機能がないため、決済事業者は各銀行とそれぞれ契
約し、それぞれ開発投資をして、N対М(多対多)での接続をし
なければいけない。これは決済事業者ごとの重複投資になる。
 また、決済事業者は銀行利用料を払わなければならない。カン
ボジアの場合は、中央銀行と契約して銀行APIに接続するだけ
ですべての銀行への送金が可能になり、簡単に「バコン」から各
銀行口座への入出金ができるようになる。この仕組みにより、大
幅なコスト削減、契約の手間の削減、重複投資の防止を行うこと
ができた。    ──宮沢和正著『ソラミツ/世界初の中銀デ
 ジタル通貨「バコン」を実現したスタートアップ』/日経BP
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 ちなみにカンボジア国立銀行は、「バコン」を直接利用者に発
行していません。直接発行方式ではないからです。もし、そんな
ことをすると、中央銀行が全利用者の口座管理や本人確認業務を
しなければならなくなり、そんなことは、はじめから不可能であ
るからです。
 したがって、中央銀行が現金を発行する場合と同様に、各銀行
は国立銀行からバコンを受け取り、利用者は現金に対応するバコ
ンを各銀行から受け取る間接発行方式をとっています。本人確認
や口座管理は各銀行に任せられているのです。
 つまり、カンボジア国立銀行では、現金、すなわち、リエルや
USドル金を回収しながら、同額のバコンを発行しているので、
市場の通貨流通量には変化は生じないのです。カンボジアは、こ
れを早くから着手し、既に実行に移しています。それは、中国か
らデジタル人民元が怒涛のように国境を越えて入ってくることが
察知できたからです。カンボジアとしては、その前に新たな金融
商品や利便性を武器に、バコンをできるかぎり、カンボジア国内
に根付かせておく必要があったからです。
 それでは、「バコン」システムのカバナンスについては、どう
なっているのでしょうか。これについて、宮沢和正は次のように
説明しています。
─────────────────────────────
 カンボジア国立銀行の「バコン」システムのガバナンスは、通
貨発行者、通貨送金者、実行承認者、監査人、システム管理者、
人事権保有者などの役割に分かれて、ブロックチェーンで管理さ
れている。それぞれの役割は「ハイパーレッジャーいろは」の役
割と権限を詳細に設定できるRBAC機能を利用して、限定的な
機能のみが実行できるようになっている。
 三権分立のような相互牽制の仕組みがブロックチェーンで実現
されているため、不正な操作から完全に防御されている。したが
ってシステム管理者であっても「バコン」の一切のデータの改竄
は不可能であり、内部犯行や操作ミスなどを防ぐことができる。
                ──宮沢和正著の前掲書より
─────────────────────────────
 上記文中の「RBAC機能」というのは、認められたユーザー
のシステムアクセスを制限する新しいコンピュータセキュリティ
の手法のひとつで、ポリシィを柔軟にできるアクセス制御法とい
えます。「RBAC」というのは次の言葉の省略です。
─────────────────────────────
         RBAC
         Role Based Access Control
─────────────────────────────
              ──[デジタル社会論/048]

≪画像および関連情報≫
 ●日本の技術も使われている、カンボジアの中銀デジタル通貨
  『バコン』とは/金融アナリスト久保田博幸氏
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   カンボジアで中央銀行が発行する中央銀行デジタル通貨シ
  ステム「バコン」の運用が10月28日に正式に始まったそ
  うである。「バコン」はカンボジアの通貨リエルや米ドルと
  も連動している。名称は国内の著名な寺院の名前から取った
  そうである。「バコン」は日本企業の技術を採用したそうで
  ある。この開発を進めたのは日本のブロックチェーン企業、
  「ソラミツ」だとか。
   「バコン」の利用者はスマホにアプリを入れると、自分の
  バコン口座から相手の電話番号やQRコードを使って支払い
  ができる。中央銀行デジタル通貨「バコン」は、カンボジア
  国立銀行(中央銀行)が各銀行にバコンを発行し、各銀行が
  利用者に展開する「間接発行」方式を採用している。つまり
  中央銀行に個人が口座を持つかたちの「直接発行」方式では
  ない。中央銀行が本人確認や口座管理を行う必要がないため
  負荷が減る。日銀が想定している中央銀行デジタル通貨もこ
  の方式かと思われる。
   カンボジアでは15歳以上の国民のうち8割近くが銀行口
  座を持っていないが、スマートフォンの普及率は高いことで
  スマートフォンを使った通貨システムの普及が進む可能性を
  意識したものかと思われる。
   中央銀行デジタル通貨システムについては、安全性ととも
  に、いつでもどこでも使える汎用性を有しているのかが大き
  なポイントとなる、さらにマネーローンダリングなど犯罪に
  使われないことも前提となろう。 https://bit.ly/2OPgz51
  ───────────────────────────
カンボジア.jpg
カンボジア
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする