2021年03月08日

●「カンボジア/バコンに日本の技術」(第5442号)

 2021年3月6日、日経の夕刊に、EJの今回のテーマに関
連のある次の記事が掲載されています。
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   ◎バイデン氏がIT規制派起用/特別補佐官にウー氏
      ──2021年3月6日付、日本経済新聞夕刊
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 ここで、ウー氏とは、コロンビア大学のティム・ウー教授のこ
とで、バイデン政権は、ウー教授を国家経済会議(NEC)のテ
クノロジー・競争政策担当の大統領特別補佐官として起用したと
いうのが記事の内容です。米司法省は、2020年10月、グー
グルのインターネット検索サービスについて、独禁法違反で、提
訴しているし、米連邦取引委員会(FTC)は、昨年12月に、
フェイスブックを独禁法違反の容疑で提訴しています。それに加
えて、ティム・ウー教授のテクノロジー・競争政策担当の大統領
特別補佐官の起用です。米国のプラットフォーマーにとっては、
厳しい情勢になりそうですし、フェイスブックのリブラ(ディエ
ム)の発行にも赤ランプが灯ることになります。日本経済新聞は
ウー氏について次のように紹介しています。
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 ウー氏はグーグルやフェイスブック、アマゾンといった巨大I
T企業の寡占が進んでいる現状に警鐘を鳴らし、巨大IT企業の
解体や反トラスト法(独占禁止法)の強化を主張。「ネット中立
性」という言葉を生み出したことでも知られる。
        ──2021年3月6日付、日本経済新聞夕刊
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 ところで、2020年10月28日のことです。タイの有力英
字紙バンコク・ポスト電子版は「カンボジア中銀デジタル通貨が
正式に稼働開始」という見出しで、ロイター電を引用して次のよ
うに報道しています。
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 カンボジアは10月28日、ブロックチェーン(分散型台帳技
術)によって日本企業が設計し、中央銀行が後押しするデジタル
通貨を結合した電子通貨「バコン」(BAKONG)が完全に稼働はじ
めたのだ。
 「バコン」では米ドルとカンボジア・リエルの取引が可能で、
カンボジア国民による個人のスマホ間での支払・送金を可能にす
ることが期待されている。(中略)日本のフィンテック・スター
トアップであるソラミツ「バコン」開発に参加した。中銀は昨年
7月から「バコン」をパイロット稼働していた。現在までに20
の金融機関がこのプロジェクトに参加しており、数十社が今後参
加する見通しだ。──宮沢和正著『ソラミツ/世界初の中銀デジ
  タル通貨「バコン」を実現したスタートアップ』/日経BP
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 このニュース、日本人の何人が知っていたでしょうか。私自身
も日本経済新聞はよく見ているつもりですが、この記事は読んで
いません。ネットで調べると、2017年4月21日付の有料会
員限定のフィンテック関係の記事として、次のタイトルの記事が
出ていました。
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◎「日本発」の仮想通貨技術、カンボジア中銀が採用
 カンボジアの中央銀行は仮想通貨技術「ブロックチェーン」を
使った新しい決済手段を開発する。日本のフィンテックベンチャ
ーのソラミツ(東京・港)が開発した技術を使う。海外の中銀が
日本企業のブロックチェーン技術を採用するのは初めてとみられ
る。決済システムの整備が遅れている国で、日本発の技術を生か
した新しい決済インフラの開発が始まる。
        ──2017年4月21日付有料会員限定記事
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 この記事は、日本のフィンテックベンチャー「ソラミツ」が、
カンボジア中央銀行からブロックチェーンを使う仮想通貨の開発
を受注したことを伝えるニュースです。知っている人は知ってい
るのでしょうが、テレビなどで大きく取り上げられていないニュ
ースであることは確かです。私が知ったのは、今年に入って、上
記のソラミツ代表取締役社長の宮沢和正氏の著書を書店で見つけ
て、はじめて知ったのです。
 著者略歴によると、著者の宮沢和正氏は、ソニーを経て、楽天
にて、電子マネー「Edy」の立ち上げに参画、楽天Edy執行
役員を経て、ソラミツに入社しています。
 楽天の電子マネー「Edy」といえば、電子マネーの進化系で
あり、唯一転々流通のできる電子マネーとして知られています。
私自身は「Edy」を使っていませんが、ビットコインをEJの
テーマに取り上げたとき、一番メインに読んだ本のひとつ、野口
悠紀雄氏の『仮想通貨革命』(ダイヤモンド社)に、次のように
出ていたのです。
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 電子マネーは(Edy to Edyなどを例外とすれば) 一回限りの
利用しかできない。しかし、ビットコインは、企業や個人の間を
転々流通する。この点で、現金通貨と同じだ。
              ──野口悠紀雄著『仮想通貨革命
   /ビットコインは始まりにすぎない』/ダイヤモンド社刊
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 Edy to Edy(エディトゥエディ)とは、サービス登録したおサ
イフケータイのエディから、他のおサイフケータイへ指定した額
のエディを送ることができるサービスのことです。数ある他の電
子マネーではできない芸当です。エディは現金通貨にきわめて近
いといえます。
 念のため、触れておくと、「Edy」とは、Eはユーロ、Dは
ドル、Yは円を表しています。この「Edy」の開発者がカンボ
ジアの「バコン」の開発の中枢を担ったのです。素晴らしいこと
だと思います。       ──[デジタル社会論/043]

≪画像および関連情報≫
 ●カンボジア「バコン」導入の目的と今後/潮田玲子氏
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   カンボジア国立銀行(中央銀行/以下中銀)は2020年
  10月28日、リテール向けの決済システム及び中銀デジタ
  ジタル通貨(CBDC)である(「バコン」の正式リリース
  を発表した。中銀によるブロックチェーン1を活用したデジ
  タル決済の実用化としては世界初の事例で、利用者の取引内
  容は中銀のレッジャー(台帳)にて記録・管理される。当該
  システムにはカンボジアの18の金融機関が参加している。
  利用者はスマートフォンに、「バコン」のアプリをダウンロ
  ードし、銀行窓口でカンボジアの通貨リエルまたは米ドルの
  現金をバコンに換金後、電話番号やQRコードを通じ、無料
  で個人間・企業間送金や店舗での支払いが可能となる。1日
  の利用額は250ドル程度に制限されているが、銀行で口座
  開設し本人確認の手続きをすればその額は拡大する。カンボ
  ジアでは、1970年から1993年までの内戦による国内
  政治・経済の混乱や、その後の国際的な復興支援で国内に外
  貨が流入した結果、いわゆる「ドル化」2が進行した。金利
  について、決済性預金に関してはリエル建てよりドルの方が
  高く、借入関連ではドルの方が低いこともあり、農村部での
  支払、税金や公共料金の支払、一部の公務員給与支払等、以
  外の国内取引の多くはドル建て決済となっている。同国中銀
  によると、2020年9月末時点の国内預金に占める外貨預
  金の比率は92%、マネーストック(M2)に占める同比率
  は84%にのぼる。       https://bit.ly/2NZhPCx
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コロンビア大学のティム・ウー教授.jpg
コロンビア大学のティム・ウー教授
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする