2021年03月03日

●「リブラは儲かるビジネスになるか」(第5439号)

 ここで、フェイスブックが「リブラ」を発行した場合、発行元
であるフェイスブックには、どのような収入源が得られるのかに
ついて考えてみる必要があります。
 リブラは、次の2つの収益源をフェイスブックにもたらすこと
になります。
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       1.裏付資産から得られる金利収入
       2.金融サービスによる手数料収入
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 「1」は「裏付資産から得られる金利収入」です。
 リブラの仕組みでは、リブラの発行と引き換えに受け取る代金
を主要法定通貨で構成される銀行預金や短期国債などで保有する
ことになっています。これを「リブラ・リザーブ」といいますが
そこには巨額の運用収益が発生します。
 しかし、これらの金利収入は、リブラ・システムを仕切るリブ
ラ協会のメンバー間で分配されると、ホワイトペーバーに書いて
あります。これは、リブラのシニョレッジ(通貨発行益)という
べきです。リブラのユーザーには何の恩恵もないのです。日本銀
行の場合、シニョレッジは必要な経費を差し引き、国庫に納付さ
れ、社会に還元しています。
 これについて、西村博之日本経済新聞論説委員は、次のように
述べています。
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 世界の17億人の銀行口座をもたない人々のうち、1割に当り
1・7億人がリブラを使うようになり、1人当たり10ドル分の
リブラを購入すると仮定する。さらにフェイスブックのユーザー
の約半分に当る12億人が、それぞれ50ドルをリブラと交換す
る。これで約610億ドル(6兆5000億円)もの資金がリブ
ラ・リザーブに流れ込み、これに対して利子が付く。
 仮に金利が1%としても、年間で6位ドル(650億円)を超
えてくる。将来、金利が上昇すれば金利収入はさらに膨らむこと
になる。こうした金利収入は中央銀行の場合、最終的には国庫に
納付され、国民のものになる。銀行に預金した場合も、預金者に
は金利が支払われる。ところがリブラの場合、お金を出してリブ
ラを買った利用者には直接的な形で金利収入が還元されることは
ない。金利収入は、まずリブラ協会の経費、システムの開発・運
営コストに当でられる。そして、残りがリブラ協会メンバーに還
元される。利用者は金利を受け取る代わりに、割安な取引手数料
などを通じて間接的に恩恵を受ける、というのがリブラ協会の立
場である。 ──藤井彰夫/西村博之著/日経プレミアシリーズ
            『リブラの野望/破壊者か変革者か』
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 リブラ協会のメンバーは現在21社です。リブラ協会としては
これを100以上の組織まで増やすことが計画されています。な
お、リブラは複数の企業によって運営されるコンソーシアム型の
設計をとっています。
 「2」は「金融サービスによる手数料収入」です。
 技術的な話になりますが、リブラには「MOVE」というプロ
グラミング言語が実装されており、これによって、プログラマブ
ルにお金を制御できます。
 これを使うと、投資やローン、保険など、既存の金融において
広く親しまれているサービスの大半は、リブラ上で再現できるの
です。これらのサービスで発生した取引に対し、手数料を課して
いくことで、フェイスブックはプラットフォーマーとして、手堅
い収益源を確保できるといえます。
 リブラ研究会では、リブラは債権市場について大きな変化をも
たらすとして、次のように述べています。
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 たとえば、金融マーケットの例として、債券市場があります。
今日、債券市場は世界全体で見ると、100兆ドル規模を誇る巨
大な金額が動く産業となっています。これまでは、債券や不動産
証券の発行や二次流通など、アセットを流動化させるまでに複雑
な行程が挟まっており、巨額の手数料が中間プレイヤーの元に落
ちていきます。
 しかし、今後リブラ上に多様な金融サービスが誕生し、ブロッ
クチェーンを活用したデジタル化が一般的になっていくと、証券
の発行から販売、二次流通にかかる各種手続きが効率化されるこ
とが見込まれます。そして、今後さまざまなアセットの流動化が
リブラ上で活発に行われるようになった場合、フェイスブックは
ビジネス上、極めて大きな恩恵を受けることになります。
          ──リブラ研究会編/日本経済新聞出版社
     『リブラの正体/GAFAは通貨を支配するのか?』
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 裏付資産の管理に関しては、フェイスブックが自由にできない
仕組みが取り入れられています。裏付資産は、世界中に分散させ
た複数のカストディアンに管理を委託する仕組みを取り入れてい
ます。カストディアン(Custodian) というのは、投資家に代わ
って有価証券の管理(カストディ)を行う機関のことです。とく
に、国外の有価証券に投資するさい、現地で有価証券を管理する
金融機関のことをいいます。これによって、リブラ協会が不正を
行うリスクを低減しています。
 このカストディアンには定期的な監査が入ることで、ブロック
チェーン上で発行されているリブラの総発行量と監査法人が出す
監査結果から、リザーブの量とリブラの総発行量に矛盾がないか
監督されることになります。
 フェイスブックの狙いは、リブラの提供を通じて「リブラ経済
圏」を構築することです。リブラの使い勝手を良くし、リブラと
いうグローバル通貨を手段として、世界中の企業や個人を巻き込
み、ネット上に巨大なマーケットプレイスを作るのが狙いです。
              ──[デジタル社会論/040]

≪画像および関連情報≫
 ●国家を超える経済圏となるのか FB仮想通貨「リブラ」
  に各国が強い警戒感
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   米フェイスブックが2020年のサービス開始を予定して
  いる仮想通貨「リブラ」に対して、米国をはじめとする各国
  政府が強い警戒感を示し始めています。これは、リブラがも
  たらす影響がいかに大きいのかということの裏返しですが、
  なぜ各国政府は、民間企業1社が提供するだけの仮想通貨に
  これほどまで警戒しているのでしょうか。
   リブラはビットコインと同様、ブロックチェーンの技術を
  使って開発されますが、ビットコインとの最大の違いは、ド
  ルやユーロなど既存通貨によって価値が担保されている点で
  す。資産の裏付けが明確なので、価値が毀損しにくく、価格
  も安定的に推移する仕組みになっています。しかもフェイス
  ブックは全世界に27億人の利用者を抱えていますから、こ
  こに価格変動が少ない安定的な仮想通貨が出てくると、国家
  を超える経済圏が出現する可能性があります。マイナーな通
  貨だったビットコインとは根本的に違う存在と考えてよいで
  しょう。
   このためリブラに対しては、各国政府が過剰とも言える反
  応を示しています。米国のムニューシン財務長官は7月15
  日、リブラについて「国家安全保障上の問題だ」と強い懸念
  を表明。翌16日には米上院が公聴会を開催しましたが、議
  員からは懸念の声が相次ぎました。フランスで開催された主
  要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、リブラの
  規制について早急な対応を取る必要があるとの認識で一致し
  ています。           https://bit.ly/3q4h8Vw
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ディエム/diem.jpg
ディエム/diem
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする