2021年02月26日

●「ソフトバンクGの意向が強く反映」(第5436号)

 ヤフー!ジャパンとLINEの経営統合──どこにメリットが
あるでしょうか。
 表向きは「GAFA」や中国など、海外勢に対する危機感とい
うことになっています。確かに、ネット産業というのは、国をま
たいでビジネスができるので、優秀な人材やお金、データなどが
全部強いところに集約してしまうものです。つまり、強いところ
が総取りをしてしまうのです。しかも、ヤフー!ジャパンとLI
NEが一緒になっても、海外勢には規模的にぜんぜん及ばないレ
ベルです。統合の基本合意が発表された2019年11月18日
の会合でのスライドによると、時価総額、営業利益、研究開発費
従業員数のいずれをとっても、米国のA社とはとても比較になら
ない規模であることは明らかです。
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         ヤフー!+LINE     米国A社
   時価総額        3兆円   98・0兆円
   営業利益     1600億円    2・9兆円
  研究開発費      200億円    2・4兆円
   従業員数      1・9万人    9・9万人
                  https://bit.ly/2P9b2Gy
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 ヤフー!ジャパンの川邊健太郎社長にいわせると、なぜGAF
Aが最大の脅威かというと、「GAFAは日本のユーザーに支持
されており、出ていってほしいと思われていない」ことを指摘し
ています。川邊社長自身、ユーチューブをよく見ているし、キン
ドルで本を読んでいるからです。
 しかし、川邊社長は、日本のデジタル化はこれからであり、そ
こに十分可能性はあるとして、次のように述べています。
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 日本は、テクノロジーで解決できる課題がたくさんある。課題
先進国。日本は人口減の時代を迎えるが、最初に訪れるのが労働
人口問題。日本の生産性が落ち、社会の効率性が起きる。自然災
害は、今年(2019年)もいろいろなことがあった。ITは防
災に役立てる。例えば、ヤフー防災アプリと、LINEアカウン
トの地方自治体を連携させれば、もっと多くの人を救えるように
なる。      ──川邊健太郎ヤフー!ジャパン社長CEO
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 ヤフー!ジャパンは、日本最大のポータルサイトであり、LI
NEは、日本最大のアクティブユーザーを持つ企業です。その両
社が、なぜ経営統合に至ったのかというと、この両社のトップは
年に1回ほど、情報交換の機会を設けていたといいます。明らか
にヤフー!ジャパンの方が熱心であり、川邊社長は会うたびに、
「大きいことを一緒にやろう」と毎回LINEの出澤社長に話し
たものの、いつも笑って済まされていたといいます。それが20
19年になって何かが変わったのです。
 ちなみに、ソフトバンクグループの孫正義代表は、今回の経営
統合には、ほとんど関与していないということになっています。
ヤフー!ジャパン社長の川邊氏によると、LINEの出澤社長と
話をして、その後、ソフトバンクの宮内謙社長、LINEの親会
社NAVER幹部とも話をして、そのうえで孫代表にプレゼンし
100%賛成の合意を受けていたといいます。
 しかし、それは建前で、ソフトバンクグループとしては、この
経営統合には、相当乗り気であったといわれます。2019年に
何があったかについて考えてみると、それは携帯電話に深く関係
する法改正が行なわれています。2019年10月には、電気通
信事業法が改正されているのです。これによって、スマホの割引
がは大きく規制されることになり、これまでのスマホの競争政策
に大きな影響を与えることになったのです。
 携帯電話会社同士のこれまでの競争は、スマホのハードウェア
の価格を大幅に引き下げて、激しい競争をしてきています。とく
にソフトバンクは「実質0円」として、ハードウェアを実質0円
にして、月々の通信料で長期間にわたって、それを返していくと
いう仕組みであり、ユーザーにとっては新機種に乗り替えるとき
負担がラクだったのです。私は、アイフォーンを2008年の3
GSの頃から使っていますが、この制度のおかげで、新しい機種
にバージョンアップするのがラクであったことは確かです。これ
がスマホの普及拡大に寄与したのです。
 しかし、安倍政権の後期の頃から、日本の携帯電話料金は高過
ぎるという意見が総務省から強く出されたのです。これには当時
官房長官であった菅義偉氏の影響が大きかったと思われます。そ
の結果、成立したのが電気通信事業法の改正です。
 これによって、スマホのハードウェアの値引きが困難になり、
通信キャリアは、通信料とインターネットサービスを一体でサー
ビスを提供することによって、お得に利用できるようにするとい
う競争が行なわれることになったのです。そして、これが、20
20年9月に成立した菅政権によって、携帯料金の値下げが政策
として強く打ち出されることになったのです。
 実際問題として、KDDI(au)は、2018年からネット
フリックスの映像配信サービスをセットにして利用できるプラン
を出していますし、NTTドコモも、2019年12月から新料
金プランのひとつ「ギガホ」の契約者であれば、アマゾンジャパ
ンの「アマゾン・プライム」が1年間無料で利用できる「ドコモ
のプランについてくるアマゾン・プライム」の提供を開始してい
るのです。そういう時期に、ヤフー!ジャパンとLINEの経営
統合が合意されています。
 したがって、このヤフー!ジャパンとLINEとの経営統合が
今後のソフトバンクの携帯電話のサービス競争に深く関係してく
るのではないかと思われます。これによって、携帯電話会社の競
合が今までとは変質してきているといえます。経営統合の詳細に
ついては、まだ明らかになっていません。
              ──[デジタル社会論/037]

≪画像および関連情報≫
 ●最安プランのKDDIが抱える「携帯大手3社でひとり
  負け」となるリスク
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   NTTドコモが新プラン「ahamo」を発表して以降、
  競合各社の動向が注目されていたが、ソフトバンクに続き、
  KDDIも新プランを表明したことで、主要3社の料金体系
  がすべて出揃った。この新プランの導入が、通信業界にどの
  ような影響を与えるのか。
   携帯電話料金の引き下げは菅政権の目玉政策のひとつであ
  り、菅氏は通信行政を担当する総務大臣に腹心の武田良太氏
  を送り込むなど、相当な力の入れようだった。日本の通信料
  金は、かつては認可制だったが、1996年には届け出制に
  移行、2004年には完全自由化されており、法律上は政府
  が料金について直接指示することはできない。
   当初、通信各社は政府からの値引き要請に難色を示してい
  たが、現実問題として強大な権力を持つ政府からの要請を拒
  絶するのは難しい。業界最大手のドコモが大幅な割安プラン
  「ahamo」を発表したことで、各社もそれに続くことに
  なった。ahamoの料金は20Gバイトで月額2980円
  となっており、この金額には1回あたり5分以内の無料通話
  分も含まれている。新規契約事務手数料や機種変更手数料、
  さらには番号移転手数料も無料である。
                  https://bit.ly/3uupQ2G
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川邊社長と出澤社長.jpg
川邊社長と出澤社長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする