2021年02月16日

●「IMFによるデジタル通貨の特性」(第5429号)

 2020年10月19日、国際通貨基金(IMF)は、世界各
地の中央銀行や民間企業などが検討を進めるデジタル通貨に関す
る報告書を公表しています。
 IMFは、そのなかで、デジタル化の加速で、国際金融市場の
流動性が高まり、将来的には、ドル基軸体制が崩れる可能性もあ
ると指摘し、今後官民による複数のデジタル通貨圏の出現もあり
得ると分析しています。
 そのなかでIMFは、フェイスブックが主導する仮想通貨「リ
ブラ」の影響力について、次のように言及しています。
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 IMFは、民間企業のデジタル通貨が世界市場を独占したり、
いくつかの主要通貨が地域ごとに割拠したりする四つの将来像を
提示して、利点や課題を探った。
 米フェイスブックが主導する仮想通貨(暗号資産)「リブラ」
計画のように、民間が発行する単独の通貨が世界中で使われるよ
うになった場合は、急速に影響力を拡大。法定通貨のようになり
各国は自国の金融政策を制御できなくなると強調。多極化した通
貨圏が生まれる場合も各国は制約にさらされるとした。
 一方、国際金融の構図は変わらないまま、デジタル通貨が国際
決済の手段に限定して使われる可能性もあるとした。現在は世界
の外貨準備高の約6割を占めるなどドルが圧倒的な支配力を持っ
ている。(共同)           ──毎日新聞デジタル
                  https://bit.ly/3qh6HyN
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 加えて、IMFは、デジタル通貨が今後世界で広く利用されて
いく背景として、デジタル通貨の特徴を6つ上げています。
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    @利便性     ・・ Convenience
    A同時偏在性   ・・ Ubiquity
    B補完性     ・・ Complementality
    C取引コストの低さ・・ Transaction costs
    D信用      ・・ Trust
    Eネットワーク効果・・ Network effects
              ──木内登英著/東洋経済新報社
    『決定版リブラ/世界を震撼させるデジタル通貨革命』
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 第1の特徴は「利便性」です。
 社会のデジタル化が進展するにつれて、デジタル通貨は、現金
や銀行預金以上に生活のなかで流通しつつあります。SNSのア
プリ上にデジタル通貨をストックし、その送金ができるなどユー
ザーの利便性に配慮された設計になっています。
 第2の特徴は「同時偏在性」です。
 伝統的な銀行システムよる海外送金はコストと時間がかかりま
すが、デジタル通貨はより早くて安価で送れます。しかし、その
海外送金先において、デジタル通貨を現地通貨に換えるという問
題点があります。
 第3の特徴は「補完性」です。
 仮に、株式や債券がブロックチェーンで取引されるようになれ
ば、ブロックチェーン上でデジタル通貨による決済が同時に完了
するようになる。商品の受け渡しと資金決済を同時に実施でき、
決済を自動化できますち。
 第4の特徴は「取引コストの低さ」です。
 デジタル通貨の送金は、ほとんどコストがかからず、しかも決
済は迅速に完了します。これは、ユーザーにとって、大きな魅力
になっています。
 第5の特徴は「信用」です。
 調査によると、若年層を中心に、デジタル通貨を発行・運営す
るIT企業は、銀行よりも信用できるといわれます。
 第6の特徴は「ネットワーク効果」です。
 ネットワーク効果とは、製品やサービスの利用者が増えるほど
その製品やサービスのインフラとしての価値が高まることをいい
ます。多くの人がある特定のデジタル通貨を使うようになると、
商店での買い物や個人間の送金にそのデジタル通貨を使うのが当
たり前になってインフラ化し、そのデジタル通貨の利用価値が高
まり、さらに多くのユーザーが使うようになります。
 ここで考えなければならないことがあります。それは、大手プ
ラットフォーマーによる金融業への参入です。フィンテックとい
う言葉があります。この言葉は、ファイナンスとテクノロジーを
組み合わせた造語です。
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    ◎フィンテック(FinTech)
     金融(Finance) + 技術(Technology)
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 フィンテックは、2015年頃から注目を集めるようになりま
したが、これは、スタートアップ企業による金融サービスのユー
ザーへの新たな利便性の提供を目的として、伝統的な銀行業務の
一角を切り崩し、実施したものであり、銀行にとって大変な脅威
になったのです。
 こうしたフィンテックに対して銀行は、自らフィンテックを推
進させる一方で、スタートアップ企業と連携して、新しい技術を
取り入れるなどの動きが見られ、いずれにせよ、銀行に大きな変
革をもたらしたのです。
 しかし、今度はGAFAに代表される大手のプラットフォーム
企業が本格的に金融業に参入しようとしているのです。まして、
フェイスブックのように、新しいデジタル通貨を伴って参入しよ
うとする動きに関しては、その影響が一般銀行だけでなく、中央
銀行まで巻き込む事態に発展する可能性があります。その影響は
スタートアップ企業のときとは、比べものにならないくらいの変
化が起きようとしているのです。
              ──[デジタル社会論/030]

≪画像および関連情報≫
 ●IMF、世銀、G20が中銀デジタル通貨のルール策定へ
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   G20(20カ国・地域)財務大臣・中央銀行総裁会議は
  10月13日、IMF(国際通貨基金)と世界銀行、国際決
  済銀行(BIS)と協力して、銀行システムにおける中央銀
  行デジタル通貨(CDDS)のルールを策定する、と発表し
  た。まとめた報告書によると、G20、IMF、世界銀行、
  BISは、2020年末までに、米ドルなどに連動するステ
  ーブルコインの規制枠組みと、中央銀行デジタル通貨(CD
  DS)の設計やテクノロジー、実験の調査・選定を完了。
   IMFと世界銀行は2025年末までに各国間のCDDS
  取引を促進するための技術能力を持つとしている。各国は、
  「通貨と金融の安定に対するリスクをコントロールするため
  の最低限の監督・規制基準を妥協することなく、クロスボー
  ダー決済が直面する課題に対処するために、新たな多国間プ
  ラットフォームと世界的なステーブルコイン規制、中央銀行
  デジタル通貨(CDDS)の適用範囲を検討する」と、20
  08年の金融危機後に結成されたG20金融安定理事会(F
  SB)は述べた。
   先週、7つの中央銀行、FRB(米連邦準備制度理事会)
  カナダ銀行、ECB(欧州中央銀行)、イングランド銀行、
  スイス国立銀行、スウェーデン国立銀行(リクスバンク)、
  日本銀行──はBIS(国際決済銀行)を通じて、各国の中
  央銀行が中央銀行デジタル通貨(CDDS)に求める特性の
  概要を示したレポートを発表した。https://bit.ly/2N6XFGb
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フィンテック
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする